第182話
〜〜 8月2日 〜〜
「んで、いよいよ当日になった訳だが…何で車で移動するの?電車やバスでもよかった気がするが…」
「ま、一応身の安全のためとかって聞いたけどさ…正直イベントになっちまったから2台に分けて移動する方が管理しやすいんだと思う」
「だね、私もそう思う」モグモグ
あの日から一週間後、つまり俺達〈狩友〉が東京タワーのダンジョンに挑む日がとうとうやってきた。
この日の為に県外からくる人や海外から来日する人などが沢山いて都内の宿泊施設が軒並み埋まってしまったとニュースが流れていたが…正直ここまで注目されている事に内心ビビってはいる。
しかし、いつまでもそんな気持ちではいられないので急いで準備をしてから自宅付近に止められているギルドが用意してくれた車に乗って東京タワーを目指す事になった。
その際に車を2台に分けて東京タワーに向かう事を説明されて、俺の乗る車には一二三と叶が既に乗っていた。
その為、こういった雑談をしながら職員さんの運転に身を任せつつ移動しているわけである。
「…てか、一二三はさっきから何を食べてるの?」
「ホワイトチョコがコーティングされたクロワッサンとエナドリ」
なお、先程から一二三が食べている物を聞いたら即答でこう言われた。
俺としては一二三の力を使うにはカロリーが必要だから別に高カロリーの物を食べても問題はないのだが…食事を預かる身としてはもうちょい栄養バランスを考えて食べて欲しいと思う…せめてBLTサンドイッチとかを食べて欲しいものである。
「そう言えば、渉から受け取った『アレ』なんだけれどよ…やべぇな、一二三と一緒に練習がてら銀座駅のダンジョンで使ったらモンスターの死体の山ができちまった…俺と相性が良過ぎるな」
「うん、モンスターが逃げようとしても対処可能な上に能力も汎用性が高いし身体能力も高い…正直私の『龍人化』が霞むレベルだった…」
俺と一二三が話している途中で、叶がそう話して来た。
確かに叶に渡したアレは正直に言って俺が使いたいレベルの品物だ。マジで汎用性が高すぎるし力も強い、そして何より能力がヤバい…マジであの時の勘は当たりだとハッキリ言える程だ。
「だが制限時間は5分、再使用には15分かかる。ここぞって時にしか使うなよ?…後、回復薬βも忘れるなよ…死ぬぞ?」
「わかってる、アレはマジで必殺技だわ…お前と桜が血を吐いてまで使う意味が身を持ってわかったよ」
俺がそう警告すると叶はすぐさまそう返した。
どうやら叶も身をもってデメリットを味わったからこその言葉なのだろう、言葉に覚悟を感じる。
「…あ、それとさ…あのゴリラの黒曜石と骨から新しい刀を作ってくれてありがとな。めちゃくちゃ手に馴染むぜ」
「私も、新しく接近専用のナイフを作ってくれてありがとう。透き通った黒色の刀身が綺麗で気に入ってるよ」
「『黒曜刀・日陰』と『ブラック・ククリ』の事だな…気に入ってくれたようで職人としては嬉しい限りだよ」
そして、叶達は思い出したかの様にそう言ってきたので俺は少し嬉しくなって返事をした。
ミリアさんから『ヴィクトリアン風のメイド服に盾代わりに使う超硬いアタッシュケースと掃除道具一式』を注文され、夏美からは『軍服っぽい奴、後威力がある遠距離武器』を注文された為に、せっかくなので前回のダンジョンで手に入れた大量の硬さが異常だった黒曜石とゴリラの素材を使い、皆に新しい武器を作る事にしたのだ。
その内、叶に『狂骨刀ばかりだと壊れた際に変えがないから新しい刀が欲しい』と言われたので作ったのが『Monster Hand Live』の武器である『黒曜刀・日陰』だ。この刀はゴリラの肋骨一本と大量の黒曜石を主に使い製作したから狂骨刀より鋭く、固い。そして刀全体が黒色だが刀の芯鉄の代わりにしている骨が見えるくらいに透き通っているのが特徴だ。
一二三には『アタッチメント関係なく私の力に耐えられる刃物』というリクエストを頂いたので同じく『Monster Hand Live』の片手剣から『ブラック・ククリ』を作ってあげた。
こちらも見た目は黒色のククリナイフだが刀身全体が向こう側が透き通って見えるくらいの透明度を持っている。だが、このナイフは以前作ったボーンククリよりも硬く鋭い。そして本来ならコレに盾も一緒に渡さなければならないのだが、一二三の戦闘スタイルの関係上それは邪魔にしかならないので渡さなかったのは内緒である。
「…皆様、お話中すみません。もう直ぐ目的地に到着しますので準備をお願いします」
俺達が話していると、運転してくれていたギルドの職員がそう話しかけてきた。
「了解です。運転ありがとうございました」
「…やば、まだ食べ終わってない」モグモグ…
「喉つまらずなよ一二三」
俺達はそれぞれその言葉に反応しながら俺は窓の外を見る。そこには東京タワーと特設会場、そして大量の人達と立ち並ぶ屋台やらキッチンカーが見えた。
もう直ぐ、3回目のダンジョン攻略が始まる、そう考えた俺は更に気を引き締めたのだった
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