第179話

〜〜 7月8日 夜 自宅 拠点内 〜〜



「お待たせ、配信を始めるぜ!」


「やっほー、皆サーバーが落ちてしまうくらいの量の質問ありがとう。質問の選別作業が必要だったから私めちゃくちゃ大変だったよこのヤロー」


「やあ、ボクの配信を始めるよ!…て、一二三。初手でそれは流石にひどいと思うな」


「皆様、こんばんは…あ、今捕まえている子は気にしないで。狐吸い用の子だから」


「…タシュ…ケテッ…」


3日前のテレビ出演を無事にやり切った俺達〈狩友〉だったが、結果的に見れば作戦は大成功だったが変わりにこの3日間がまるで地獄のような事態になった。

まず、テレビ局にいたスパイの件だが犯人はディレクターと撮影スタッフ数人、後バイトで来ていた人達数人が芋蔓式に逮捕された。

犯行理由だが、まず捕まったバイトは全員ディレクターが直接闇バイトで募集をかけて集めた人達なので金に困っての犯行である事がわかった。

次に撮影スタッフ達はディレクターに弱みを握られて無理矢理従うしかない状況だった為ある意味被害者だった。

そして諸悪の根源であるディレクターはどうやら某国の犯罪組織と繋がっていたらしくお金などを対価に色々ヤバい事をしまくっていたらしいので余罪がたっぷりあって今も取り調べを受けているらしい。

そして、何よりの収穫はディレクターと繋がっていた組織の存在を把握できた事だ。やはり海外の組織でありかなりの規模の犯罪組織であったが今回の事が判明した為に日本が各国に国際的な捜査協力を依頼、各国もまたこの組織に色々と悩まされていた為に快く同意してくれた。その為現在日本を含むほぼ全ての国で一斉に強制捜査をされた組織は今壊滅寸前間近だと渡辺さんは言っていた。

まあ、その件は大成功だったのだが…正直俺達に襲いかかってきた地獄の方が苦しかった。

友狐と言う人類と共存できる新たな生命体、〈狩友〉の新たな追加メンバー発表に8月に新たなる挑戦の報告…その衝撃はぶっちゃけ日本だけには収まらず世界中に衝撃を与えてしまったと言ってもいい。

何せ友狐に対しては世界中の学会が何匹か提供してもらい研究したいと言い出したりペットや労働力として提供して欲しいなど様々なメールや手紙がギルドを通じて俺に届いた。

追加メンバーに対しては「障害者を何故メンバーにいれた?」とか「そんな使えない女よりも私をメンバーに入れて下さい!」とか夏美に対して集中的に意見する内容の質問が世界中から来て質問を募集する専門サイトのサーバーが余りの負荷に耐えられずに落ちてしまう事件が発生したほどだ。

だが、東京タワーの件は何故かタワーを仕切る人から直接電話が来て俺達がダンジョンに入る瞬間を一つのイベントとしてもいいかと言われてしまった。その点は渡辺さんに丸投げしているがおそらくいい感じになると思う。

そして今、叶達は俺の家にきてから拠点に入って拠点の建物の中庭で配信を開始し出した。因みにその場には俺と夏美はいない、何故なら…


「…あれ?そう言えば渉と夏美は?」


「建物の中、取り込み中」


「建物の中だ?」


そう叶と一二三の声が聞こえて来て直ぐに叶がドローンを引き連れて俺達がいる建物の中に入ってきた。


カタカタカタカタカタカタ…


「渉、このプログラムは何!?バグと無理矢理なコードがあり過ぎて修正すればするほど問題が出てくるんだけと!絶対にバッテリーが早く切れる原因はコレだよね!?」


ガチャガチャガチャガチャ…


「プログラム初心者が既存のヤツを少しいじった程度の品物をプログラム熟練者が見たらそうなるよな、コレでも廃品のドローンからここまでのクオリティーのある機械鳥を作ったんだ、お前みたいにプログラムに詳しい人がいない中なんとかギルドのアプリでも動く程度のヤツを手探りで作ったんだから褒められてもいいだろ普通は!?」


「分かってる、余りのハチャメチャなプログラムに愚痴りたかっただけ!アタシが速攻でプログラム組み立て直すから渉はこのプログラムに対応できるように〈狩友〉用に量産した機械鳥に追加CPUとSSD、後冷却ファンを増設して。45分で!」


「了解、そっちこそあまり無理すんなよ?」


「誰に物言ってるの?渉にパソコンを組み立てて初期設定できるレベルまで教えたのはアタシだよ?コレくらい余裕だよ!」


「えぇ…何コレ?」


多分、叶は今の俺達2人の光景に唖然としているだろう。

何故なら今俺達は床に座り込んでから背中合わせでお互い忙しく作業をしていたからだ。

実はテレビ局の時に夏美がバラしたのは俺が皆の為に量産した量産型の機械鳥なんだが、バラした時にパソコンを忘れてしまい夏美はプログラムまでは確認していなかった。故に叶達の配信が始まる5分前くらいにプログラムを見せてくれと自作ノートパソコンを持参して言って来たので別に何も気にせずに見せた…のだが、余りの出来の酷さにどうやら夏美のプログラマー精神に触れてしまったらしく現在こうなっている。


「…叶、すまんが45分くらい時間をくれ!流石に不良品を皆に渡すのは俺のポリシーに関わる!」


俺は作業する手を止めないようにしつつそう叫び、


「このバカ、機械鳥の体は完璧なのに肝心の頭脳であるプログラムを疎かにしていたんだ。だからアタシが修正&改良するからしばらく時間を頂戴!」


夏美はおでこの冷えピタを交換しつつお菓子のラムネを懐から取り出して食べてから自作ノートパソコンの画面を凝視しつつ叫んだ。


「お…おう、ごゆっくりー…」


俺達2人の言葉の圧に押されたのか少し引き気味になりながらもそう言って中庭に戻って行く叶。

俺達はその姿をみてから直ぐにまた作業を続けるのだった。


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