第175話

〜〜 6月30日 秋葉原 喫茶店『月の兎』 〜〜



「なん…だと!?私がカツにすれば最高だと思っていたラビット・ソーの肉をあえてサラダチキンみたいにしてからスライスしてから並べて、その上に塩だれに刻みネギを合わしたタレをかけただけの一品で軽く超えただと!?」


「…この手作りクッキー、甘さ控えめで紅茶によく合うわ。確かレジ横に袋詰めされたやつがあったから帰りに買わなきゃ」


「うま!?なんだこのハンバーグ、今まで食べた事のない美味さなんだが!?」


「このコーヒー…いいね、アタシ気に入った。後で使ってる豆を聞いてみよっと」


アレから大体二ヶ月が経過した。新しい学校生活もよくやく慣れてきて、現在はとある事を話し合わないといけない為にココ、『月の兎』に〈狩友〉全員が集合したのだ。

ただ、取り敢えず話し合う前に俺の行きつけの店の味を紹介をする為にそれぞれ注文したのだが、全員かなりの高評価をしてくれている。

一二三は前に田中さんに渡したラビット・ソーの肉の新作料理に衝撃と感動を同時に味わい、ミリアさんはこの店の紅茶とクッキーに感動して帰りにクッキーを買う事を決め、叶は看板メニューの兎肉100%ハンバーグの余りの美味さに衝撃を受け、夏美はあんみつを食べた後のブラックコーヒーの味に満足していた。


「そりゃ、ここの店主の田中さんは俺の筋トレのアドバイザーでもあり料理の師匠だからな。美味いのは当然…ってマジか、あのヨーグルト味のココナッツもどきのジェラートが美味すぎる…完敗だ、流石は田中さん」


「あ、パンケーキがさらに美味しくなってる…何で?」


「それは渉ちゃん達が下ろしてくれた脂たっぷりのバナナみたいな奴の油を数滴入れただけだよ♪アレを使うと角がなくて丁度い甘さになるんだ〜♪」


俺もまた頼んだあのヨーグルト味のココナッツミルクから作られたジェラートを食べて改めて田中さんの料理が美味いことを再確認し、桜はパンケーキが美味しくなった事に気が付き、その理由を空中に浮いていたアンジーさんが笑顔で答えていた。


「うむ!実際に食材を下ろしてもらい、君達の配信を見てからモンスターを狩りまくって料理の研究した甲斐があったなマイワイフ!…はい、『ラムコッコの肉団子ミートソースパスタ大盛り』と『ラン・マッド・チキンの唐揚げと皮付きポテトの山盛り』お待ち!」グッ


「そうだね健ちゃん!…はい、レモネードと飲むヨーグルトだよ!」


俺達がそう話しているとダブルバイセップスのポーズを取り、盛り上がった上腕二頭筋の上に料理を乗せながら田中さんがこちらに歩きて来て追加注文を持って来てくれた。そしてそのタイミングでアンディーさんが超能力で食べ終わった皿を浮かせてから机に田中さんが持ってきた料理と自分が持ってきたドリンクと取り皿を浮かせて俺達の前に置いてくれる。


「田中さん、また腕を上げましたね。完敗です」


「はは、私はコレが本職だからな。弟子である少年には簡単には負けられないさ!」ググッ


俺の言葉にサイドチェストをしながら答えてくれる田中さん。本当、父さん以外にコレだけ頼れて尊敬できる人もそうはいない。


「…む!?4番テーブルの男の筋肉が言っている、あの男はパパラッチだと!お客様の安息を邪魔するのだけは許さん、行くぞマイワイフ!!」ダッ


「ほーい♪」


俺との会話中にいきなり田中さんがそう言うと急いで兎跳びで4番のテーブルの方に行き、アンジーさんもまた天井に潜ってから頭だけ出して田中さんを追いかけて行った。


「…読心ができる店主に超能力が使える嫁さんがいる喫茶店とか安全性が半端なさすぎだろ…」


「料理も飲み物も完璧、私このお店気に入った。毎日通いたい」


叶がパパラッチと断定された男が宙に浮く光景を見ながらそう言い、一二三はそう返してから唐揚げとポテトを同時に口に入れた。


「はは、最高だろこのお店?」


俺は2人のそのやり取りにそう言うとアンディーさんが持って来てくれたパスタを取り皿に取り分けてから飲むヨーグルトを飲むのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「…満足、最高だった。特にラビット・ソーの奴」


「はい、お粗末さま♪」


「はは、会計は俺が持つからこのまま飲み物でも飲みながら聞いてくれ。今日集まってもらったのは8月の話が大体纏まったからで…はい、すまないがこのコピーを回してくれ」


一二三の満足そうな声を聞いてから近くにいたアンジーさんが超能力で食べ終わった皿を浮かして片付けてくれる。

そして俺はいきなりだが今日集まってもらった本題を話すべく皆に書類のコピーを渡していく。


「…お、無事に許可が降りたのか」


「まあな、『あのダンジョン』は元々人気が無いから直ぐに許可は降りたよ。

後は夏美の許可の安否だが…」


「もち、こっちも無事にクリアーしたぜ」


叶と俺の会話に自分のカードを入れた手帳を見せながらドヤ顔をする夏美、俺はそれを見ながらゆっくりと全員を見渡した。


「…なら、後は全力で情報収集だ。

何せ今回のダンジョンは『浅層以外の情報は無い』んだ、少しでも優位に進めるためには事前の情報収集は…まあ、もち丸達がいればあらかた当日でも何とかなるが…それでも事前に知っておいて損は無い。

だからネット系に詳しい夏美とギルドに太いパイプを持つ俺であらかた集めてみる。だから皆は各自当日までに悔いのない様に準備をしてくれ。勿論装備等の注文は所持している素材と相談しつつできるだけ作らさせてもらうし俺と桜で薬…特に回復薬βの購入ルートを紹介させてもらう。

乗り物もエイセンは修理済みだから後は改造して2人分乗れるようにするからその点も安心してくれ。

後、実は皆に報告する事が一件あってな…」


俺はそう言うと皆に資料の裏を見るように自分の分の資料を裏にする。

そして皆が一斉に資料の裏を見た。


「これ、大変そうだけど面白そうじゃね?」


俺の言葉に叶と桜は頭に手を置き、他全員は目を輝かせた。

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