第167話

「わっ渉、何を言ってるんだよ!?アタシの足は治らない、それは渉だって知ってんだろ!?

それに昔に言ってたじゃん、


「俺には夏美の義足を作れない、ごめん」


ってさ!」


夏美が珍しく股の間で取り乱している。

確かに昔の俺はそう言った、何故ならその時は設計図が2冊しかなかったし今みたいな制作技術もなかった。だから義足の知識はあっても売られている奴以下の物しか作れなかったのだ。


「夏美、昔と今じゃ状況が違う。今の俺なら普通の義足以上の…ダンジョンでも通用する義足を作ることも可能なんだ。

…因みにジャンプに特化した逆関節脚型とか男の憧れタンク脚型、4〜6本になる多脚型や足がホバーユニットになっている浮遊型、その為動物や昆虫の脚部なども搭載可能ですがどうしますかお客さん?」


「いや、普通の奴をつけてや…


「タンク脚型かアラクネみたいな脚部でお願い」


即答!?しかもまともじゃ無いやつを選択してるし!?」


俺と夏美の会話ににツッコミを入れる叶だが、今の俺は真面目に聞いている、だから別に変なことは言ってないつもりだから別に気にするそぶりを見せない


「そもそも渉の技術でもそれは無理なんじゃない?そこまでの技術ってかなり専門的な知識になるよね?」


オレがそう考えていると桜がそう言う。

確かに簡単に義足を作ると言ってもそれにはかなりの専門知識が必要だし、何より夏美がその義足を使いこなせるかは夏美次第だ。だから俺にはある案がある。


「いや、少し考え方を変えるんだよ。夏美が義足を『着ける』んじゃない、夏美が義足に『乗る』状態にすればいいのさ」


「「「!?」」」


俺の言葉にまた皆が驚愕する。

オレが夏美にしようとしているのは『テラフォーマー 《美しくも残酷なこの惑星で》』のDLC『I want to feel the wind』に登場する『特殊義外装』だ。

この装備はDLCで追加される『特殊車両及び特殊外骨格』を使う為の『鍵』をになり、更には日時生活は勿論戦闘や全ての悪路を走破出来る特殊な義手や義足だ。

その為いろいろ義足にも種類があるし、その義足に『オモチャ』を仕込むこともできる。

更にその義外装は専用のマシーンなどを動かせる鍵にもなるから色々と機能が守られている装備だ。

しかしコレを作るなら必要な事は二つ、それは『アルミみたいに軽い合金』と『義手や義足をつける人物に合う足などの把握』だ。

故に俺は皆にゲームの設計図の件は伏せつつ説明をする。


「…つまり、合金の件は俺が何とかするし足の模型は俺の人体総変異でどうにかなる。

その為には今週の日曜日に俺の家に来てもらう必要があるがいいか?」


「…あ、なるほど。タイプ《魂骨炎狐龍》で使えるあの白い炎で足の形を作って型取りするんだね」


「正解、その為には骨があらかた必要になるから銀座駅のダンジョンでも行って狩り慣れてる奴を狩って集めておく。

だから今必要なのは普通の義足がいいかキャタピラがいいかなんだよ…だから夏美、真面目に答えてくれ。

どう言う足が欲しい?」


俺の説明に桜が補足してくれたお陰でスムーズに話が進む、合金については今までの製作して来た経験の中で心当たりがあるから問題なし。

だから後は夏美の意見を聞いてそれ様に足を骨で形作ってシリコンをはっ付けてから型取りをして形を把握すれば全て完了だ。

そしてこの義足の最大のメリットは機械仕掛けの為に『装備している』という状態だけではなく『機械の上に乗っている』状態ににもなる事だ。

コレはゲーム内でも言及されていて、義外装はあくまで義手や義足の型をした機械仕掛けの鍵という扱いの為乗り物や武器などの扱いをされているという設定がある。だから夏美のジョブである『騎乗者ライダー』の力をフルに生かせると判断したのだ。


「…」


股の間にいる夏美は下を向いたままだ、しかし全身の体重を背中にいる俺に預け、更にオレの両腕を自分の腰まで引っ張った。桜も何かを察したのか手を離したのでそのまま俺の両腕は夏美を抱く方になる。


「…お前はいつもそうだよ…いつも…無茶ばかりするんだから…」


そう言う夏美は震え出した。


「夏美…」


恐らく今夏美は泣いている。確かに幼稚園でいじめられていた夏美をいじめていた主犯格にジャーマンスープレックスをお見舞いしてから砂場に頭をスイカみたいに出す形で全身を埋めた事件からの仲だから無茶ばかりは適切なことばだが泣くのは想定外だった。


「渉さん、夏美がこの状態なので私が彼女の言葉を代弁するわ。良いよね夏美?」


その様子を見たミリアさんはそう言う。すると夏美は無言で頷いた。


「…では、実は今私と夏美はシェアハウスをして生活しているの。だから夏美をあなたの家に行かせる為には私の同行が必要だけどいいの?一緒に住んでいるであろう家族のご迷惑とかにならない?」


ミリアさんはそう聞いてくる。

なるほど、確かにそれは必要な事だ。


「それなら問題ない、俺は今『秋葉原』で一人暮らしをしている。寧ろここに居るメンバーが全員来ても余裕で入る広さがあるし親の心配はないよ」


「ちょい待ち、お前一人暮らしを始めたの?聞いてないんだが??」


オレの言葉に叶が反応する、そして隣にいる桜や一二三からも視線を感じる。


「…すまん、ギルドとの取り決めでな…俺が一人暮らしをしている住所はなるべく伏せたり住所を文字にするのも慎重に行動する様に言われたんだわ。

俺は今色んな意味で注目されているからな…厄介事を避ける為の処置だよ。

だか、招待するなら住所は必須だから後で全員のスマホに送っておく。

勿論夏美のスマホにも送るよ」


俺がそう言うと皆が黙った。

まあ、理由が理由なだけに仲間内にも言いづらかっし仕方がなかった。だが、やはり仲間内には報告すべきだったと俺は少し後悔したのだった。



〜〜 秋葉原 自宅 〜〜



「ただいま〜」


「…!…!!」


「お、ありがとう。いつも助かるよ」


「…!」


「あ、そうだ。日曜日に結構重大な事をするから手伝ってくれって『皆』に言っておいてくれるか?」


「…」


「ありがとう、お礼に撫でてやろう。ウリウリ…」


「…♪」


「はは、相変わらずいい『毛並み』だな。『尻尾』もモフモフで気持ちいいぞ?」


「…♪」


「ヤバい、止まらん…でも早めに料理をして装備の点検をしないとダメだしな…」


「…」


「え?手伝ってくれるのか…ありがとう、『もち丸』」


「…♪」

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