第166話

「…え、ら、『騎乗者ライダー』だと!?『乗り物が限定されている』方じゃ無い方の奴!?」


「嘘でしょ?ボクが知っている限りだと『激レアジョブの『超能力者』と同じくらいに希少性が高いジョブ』だよ!?」


「しかもスキルを4つも所持、更にスキルも強い奴ばかりとかヤバすぎ」


叶達三人はかなりビックリしている。

でも、それは仕方がない事だ。何故なら夏美のジョブ『騎乗者ライダー』は地球上で現在確認されているだけで十五人前後くらいしか持っていない激レアで強力なジョブだ。

ジョブの効果は単純、『乗った乗り物を自分の手足の様に扱う』だ。

この単純な効果はマジで強い、何故なら乗れる物で有れば何でも適用される効果だからだ。

車椅子や自転車は勿論、車や飛行機などのエンジンが着いた乗り物、更には馬や象などの動物でさえ自分の手足の様に操れるのだ。

だから普通は大体『騎乗者ライダー二輪車バイク』や『騎乗者ライダーホース』などと言った乗り物が限定されている『騎乗者ライダー』の名が付くジョブなら一般的によく見られるジョブだ。

しかし、夏美はの『騎乗者ライダー』は違う。夏美の『騎乗者ライダー』は全ての乗り物が彼女のジョブの範囲内なのだ。

普段夏美はいつも車椅子に乗っているのだが、彼女は乗り換える以外の普通はできない行動を普通にできる。例えば車椅子で坂や階段を上がったり降ったりできるしジャンプや水底を走る事で息が続く限り水の中を進む事もできる。

コレだけでも夏美は強いのだがさらにヤバいのが夏美は更にスキルを4つ所持している。

前にも言ったが一般の人のスキルの数は平均2つ、最大で3つを持つのが常識だ。だが、大体100万人に1人生まれるか生まれないかのレベルで稀にスキルが無い人とスキルが4つある人が生まれてくる。

だから夏美は4つもスキルを持っているのだ。

そして持っているスキルも強力で、右脳と左脳で別々な事を100%できる様にる『マルチタスク』と地図を暗記して現在地まで把握できる様になる『地図』だけでも強いのだが、『高速演算処理』と『精密動作』が特に凄い。

『高速演算処理』は簡単に言えば頭の中に最新式のスパコンがある状態になるスキルだ。

その為本来なら時間がかかる計算もこのスキルがあればものの数分で答えが出せる、更にプログラムを作る際も時間さえあれば頭の中で勝手に完成時のプログラムの試運転までしてトライ&エラーを繰り返してより完成系のプログラムを作れるスキルなのだ。

しかしこのスキルを使うと体温が高くなったり途中で糖分を摂取しないと意識が切れて気絶してしまうデメリットもある諸刃のスキルでもあるのだ。

最後に『精密動作』、コレは任意でやりたい事ををまるでロボットの様に無駄がない動きで行えるスキルだ。

このスキルは単純だが、例えば同じプログラムを作る際にをスキル無しの人と同時に製作する事になった場合、スキルが無い人よりも素早く終わらせてミスも無く完璧に終わらせられるスキルなのだ。

だが、スキルを使っている時は過集中状態になる為食事や睡眠を疎かにしてしまい倒れてしまう事もある危険なスキルでもあるのだ。

つまり総合的にみて夏美は生まれた時点でかなりの強者であり有能な人材でもあるのだ。


「…でもね、アタシには足が無いからジョブと宝の持ち腐れなんだよね。ほらよく言うじゃん、『天が二物を与えず』ってさ?」


「…ごめんなさい、不謹慎だったね」


三人の反応を見た桜は少し下を向いて自分の両足を見ながらそう言う。そして夏美の言葉に直ぐに桜は謝り、叶と一二三は口を閉じながら少し暗い顔になった。


「…」


夏美の言葉に俺は黙る。

『天が二物を与えず』、天は一人の人間にいくつもの才能を与えることはない。 また、ひとつの才能に秀でている者は、往々にして他に欠点があるものと言う意味だが夏美にはピッタリな言葉だろう。

夏美は確かにメチャクチャ強いスキルやジョブを持って生まれた、しかし彼女は両足が無かった。

そうなるとせっかくの『騎乗者ライダー』のジョブは本来の力を発揮できない。

車などはアクセルなどを操作する為には足が必要だし馬や像だって移動中の揺れを両足を使って軽減する、そうでなくとも日常生活を送るのに足が無いとかなり不便だ。それは幼稚園からの幼馴染である俺が一番良くわかっている。


「あ、ならボクが持っている赤色のポーションをつか…え…っぁ…」


隣にいる桜が自分が持っているポーションで足を治そうと提案しかけた…のだが、途中である事に気ずいてどんどん声が小さくなる。


「桜、スマンがそれは無理だ。赤色のポーションでも夏美は治らない」


そして俺が夏美の代わりにそう言う。

赤色のポーションは確かに体の部位を欠損しても治る力がある…のだが、実はコレには大きな落とし穴がある。

それは『欠損した部位は治る』が『元から無い部位は治らない』事だ。

つまり赤色のポーションを使っても夏美の足は生えないのだ。

故に夏美は諦めている、自分には車椅子生活しか無い事を。

だからこそ、オレはあえてこう言う。


「なあ夏美、天が二物を与えないって事はさ…










俺が与えても問題ないって事だよな?」


「「「!?」」」


俺のいきなりの発言に周りの全員が一気に俺の方を見る。

実は俺には秘策があるのだ…でも、最悪足がタンク脚になりかねないんだよな…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る