第165話
〜〜 放課後 某カラオケボックス 〜〜
〜♪
「…話をまとめるぞ。
お前と夏美さんは幼稚園からの幼馴染で渉の家と夏美さんの家も隣同士だった。
そして同じ日に引っ越しをしてバラバラになったんだが今日偶然に再会した…で、いいんだよな?」
「ああ、あってるぜ叶。…てか、改めて思うとやっぱり軽率な行動だったかな?」
「当たり前だ。渉の名前はアタシが居た石川県でも轟いていた、だからこんな結果になったんだろ?」
俺は叶の問いに素直に答えてから今日の事を反省し、それを夏美にツッコまれた。
あの騒動の後に生徒指導の先生に呼び出されて食堂の件を根掘り葉掘り聞かれた、取り敢えず正直に答えた後に桜達が映像を取ってくれていたり周りの人の証言や録音された会話などが提出され俺は無罪が確定した。
その後は夏美と一緒にいたメイドさんもといミリアさんに夏美に連絡を入れてもらい、放課後である今は学園の近くにあるカラオケボックスに来て俺と夏美の関係についてキチンと説明をしていた。
因みに騒動を起こした主犯の男子生徒は帰り際に正門前で生まれたての子鹿みたいなポーズで四つ足で全身を震えさせながら何かの書類を握りしめて号泣していた。
桜曰く
「彼、退学させられたね…まあ、アレだけの騒ぎを起こせば当然か…」
と言っていた。
〜♪
「んで、仲がいいのはわかったがよ…
何でサラッと座っている渉の股の間に夏美さんは座ってるの?渉が夏美さんをお姫様抱っこしてからまるでそれが普通の様にサラッとお互いが息ぴったりに動いてそうしてるし」
叶はそう言うと俺と夏美の体勢を指摘する。
確かに俺はソファーに座る際に自分の股の間に夏美を置いたし、夏美もまた股の間に置いたら俺の体に体重をかけてリラックスし出したのは間違いない。
「…いや、別に普通だよな夏美?」
「ああ、昔からアタシは渉にこうしてもらってたし別に普通だろ?寧ろこうしないと違和感しかない」
「熟年夫婦かよお前ら…」
〜♪
俺と夏美はさも当然の様にそう言うと叶は頭に手を当てて呆れた時の声を出す。
別にこの体勢は今に始まった訳では無い、俺達が幼稚園の頃からごく自然にこうやって一緒に座って作業をしたり映画を見たりしてたから今更何を言われても俺と夏美には普通な事だから逆に指摘されても困るレベルだ。
「…」
だが、多分コレは何かしらまずい体勢なのかもしれない。先ほどから隣に座っている桜が俺の
右腕を万力の様に強く握っているし無言の圧も凄い、夏美は気にしない…というか何故かこの状況を楽しんでいる様にも見える。
〜♪
「…取り敢えず、お前達の関係はわかった。
そう言う事なら改めて自己紹介をしたい…んだがな、ちょい待って」
どうやら叶は俺達2人の事をキチンと理解してくれたらしい。
そして自己紹介をする為に立ち上がり…
「恋の〜大漁〜旗〜♪」
「ワー」シャカシャカ
「そこの2人は歌うのを止めろ!てか何でさっきから演歌オンリー!?しかも歌っているミリアさんメチャクチャ上手いし!?」
先ほどから連続で歌い続けているミリアさんと備え付けのマラカスを鳴らしながら盛り上がっている一二三にツッコミを入れた。
しかも先ほどから歌っているのは演歌オンリーで全てが恋愛についての曲ばかりだ。
「何を言っているの、カラオケに来たなら歌うのは当たり前よ?後、演歌は日本人の心よ。そうよね一二三?」
「うん、ミリアの言う通り。カラオケに来たなら歌って当然。変なのは叶だね」
「ヤベェ…1人ではツッコミきれねぇ…」
歌い終わったミリアさんは無表情で首を傾げながらそう言い、一二三も同じく無表情で首を傾げて叶にそう言う。
そんな光景を見た叶はまた頭に手を当てたのだった。
〜〜 しばらくして 〜〜
「んじゃ、落ち着いたから自己紹介をしよう、俺は…」
取り敢えずミリアさんがあらかた歌い終わって落ち着いてから俺達は自己紹介をした。
それで俺達〈狩友〉の最後のメンバーでありサイドメニューの山盛りポテトを食べている一二三が自己紹介を終えると、次にミリアさんが自己紹介をし始めた。
「私の名前はミリア・アルバート。イギリス生まれ石川育ちの純粋のイギリス人であり心と魂は石川県民よ。
好きなのは演歌と掃除、嫌いなのは友達を傷つける奴。
ジョブは『メイド』、スキルは『筋トレ』よ。よろしく」
「いや、スキルとジョブはいいとして最初の奴はツッコミを入れた方がいいのか…?」
俺はミリアさんの自己紹介に少し疑問を抱いてしまった。
ミリアさんのジョブである『メイド』は家事全般、介護全般、護衛全般に対して補正がかかるジョブだ、更に『筋トレ』のスキルがあるなら身体能力は飛躍的に高いと予想できる。
だが、心と魂が石川県民って何だ?
「因みにアタシとミリアの出会いは映画館、アタシが障害者割引で映画を見るのを不公平だと言って絡んできたオッサンをマラカスを鳴らしながら踊って、最終的には撃退したのが始まりだよ?」
「何だそのカオスな状況?」
「懐かしいわね、あの時〈マラカス三銃士物語 The Movie〉を見に行ってたから偶然マラカスを持っていたのよね」
「…わかった、お前は見た目は仕事の出来る女に見えて中身はノリは良いしハジけるときはハジけるタイプだな」
俺はまたの間にいる夏美から新たに頭を悩ませる事を言われて混乱したが、更にミリアさんの言葉によってこの人の性格は完璧にわかった。間違いなくこの人は外面と内面がかなりズレている人だ。
そして最後の自己紹介は夏美になり、夏美は真剣な顔になる。
「アタシの名前は四季 夏美、見ての通り両足が無い障害者で渉の幼馴染だよ。
好きなものはB級映画全般とアニメ全般、後ドローンとかのガジェット類とプログラム作成、嫌いな物は障害者を馬鹿にするやつ。
ジョブは『
よろしくね」
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