第163話
〜〜 side 佐藤 渉 〜〜
「…そりゃ、こうなるわな…」
「アハハ…」
「…ハッ!このチキンは私の朝食だ。だから誰にも私のチキンは渡さんぞ!」モグモグ
「いや、誰もチキンが欲しいから凝視して見てくる訳では無いと思うぞ一二三?」
現在俺達4人はクラス全員にめちゃくちゃ見られている。
そんな状況で俺は頭に手を当てつつため息を吐き、桜は苦笑いをした。
一二三は何故か今朝食として食べているフライドチキンの盗られると思ったのバケツを自分の体で隠しつつ手に持っていたチキンを骨ごと食べ、叶は一二三の行動に冷静にツッコミを入れていた。
(そりゃそうだわな…だって俺達だけ誰にも会わない様に時間をずらして登校したし、入学式の時は校長室からのリモートだったからな…)
俺はまたためため息を吐きながらそう考えた。
俺達〈狩友〉は一応有名人だ。だから一般生徒と一緒に入学式をやると混乱を招く恐れがある、だから俺達だけ時間をずらして登校して校長室で入学式をリモート参加したのだ。この行為はキチンと俺達の親も納得してくれたからその点はまだいいと思った。
しかし、こう分けて色々しても結局は割り振られた教室でバレる事になるから意味は薄いんじゃ無いのかとも思っていた。
実際に今も先生に騒がない様に念を押されていなかったら今頃クラスは大惨事になっていただろう。
そう考えると頭が痛くなってくる。
「…はい、皆さんの言いたい事は分かります。ですが今この4人は同じ学園の生徒なのですから余り迷惑をかけてはいけませんよ。
では、4人は1番後ろに空いている席があるのでそこに座って下さい。後、一二三さんはチキンを席に座る前にこの場で全部食べて下さい」
「「「「了解しました」」」」
俺達はそう返事をするとまず一二三は自分の持っていたフライドチキンを一気に骨ごと全部食べてから俺に容器のゴミを渡してくる、俺はそれを見ずに触り拠点に回収した。その光景に周りは一瞬ざわついたが俺達は気にせず事前に席の割り振りを教えてもらっていたのでその席に座った。
「…メイドさん?」
「…どうも」
そして目の前を見ると、目の前には金髪で髪が長く、頭にメイドさんがよく付けているホワイトプリムを付けて…つけ…て…
(アレ?どこかで見た覚えが…)
俺はそう思いながら頭を捻る。『努力』のスキルで記憶力は向上したが、それはスキルを得た以前の記憶…つまり子供の頃の記憶は適用範囲外なので思い出すのには自力で思い出す必要がある。
「では、今から皆さんに今後の授業に必要な…」
俺は先生の話を聞きながら考える、多分目の前にいる人は俺と昔会った事のある人物なのだと…
〜〜 お昼頃 〜〜
「…んで、朝も思ったけど一二三さんや。アンタ絶対に小刻みにリミッターを外しまくってんだろ?何だよ朝食にフライドチキンのバケツとかヤバすぎだろ…」
「私は朝と昼はしっかり食べるタイプの女、だから制限のON OFFが自由ならそりゃ小刻みに外すのは当然」
「…だからってWロースカツ定食にチキンカツ丼とシーザーサラダは食い過ぎだと思うぜ?」
「…あ、ここのみそ汁は赤だしか…」
俺達登場の後の休憩時間に爆発した様に質問攻めになったのは言うまでもない。
そして今はお昼になったので皆で学食を食べに食堂に来ていた。
だから俺は俺はシーフードカレー(イカリングトッピング)を食べながら今朝から疑問に思っていた事を一二三に聞き、一二三はチキンカツ丼を食べ終わってから次にWロースカツ定食とシーザーサラダを手に取りながらそう答えた。
叶は天ぷらそばを食べながら一二三にツッコミを入れ、桜はミックスフライ定食のみそ汁に舌鼓を打っていた。
(…てか、やっぱり周りから見られてるな…飯時位は勘弁してほしいんだが…)
俺は皆と話しながらも周りから感じる視線にそう思った。
確かに俺でも有名人がいれば見る位はするから気持ちは分かる、でも写真とかを撮るのは如何なもんかと思ってしまう。
しかし俺もそんな視線やらに徐々に慣れてきて何とかカレーを完食して食後のお茶を飲んで…いた時の事だ。
「…おい!聞いてんのか障害者!?」
「…ん?」
いきなり食堂にそんな声が響いた。
俺は声の方を見るとそこにはリーゼント頭のガタイの良い男が『車椅子に乗りヘッドホンを首にかけている両足が膝から無い女子生徒』と俺の前の席であるあのメイドさんみたいな人が一緒に座っているテーブルで揉めていた。
「…何?アンタに文句言われる筋合いは無いんだけど?」
車椅子の女の子は嫌な顔をしながら男を睨んでいる。
「ウルセェ障害者が!お前がいるだけで皆が楽しく飯が食べられないのがわからねえのか!?
とっととこの場から消えるか学園から去やがれ!」
そんな反応に男は切れたのか力強くそう叫ぶ。
「うわぁ…めちゃくちゃアホだアイツ。障害者差別とか今どきやるかね?」
「見た事ない人だね…配信者では無いね。多分受験して入って高校デビューしたからグレた感じかな?」
「ただのアホ」
その光景に三人は思い思いの反応をした…のだが、俺はそんなことよりもテーブルにいる2人を見て固まっていた。
(…あ、思い出した)
そして俺が朝の違和感の原因に気付いたと同時に…
「っこの、社会のゴミが!」
男が車椅子の方の女性に拳を振り上げた。
「やば!?」
叶はそう叫ぶと立ちあがろうとし、桜と一二三はスマホを構えて撮影を始める。恐らく先生に報告する為の証拠にするのだろう。
テーブルに座っていた方も急いで立ち上がり、女性を庇おうと動こうとした…
「…」
「…は?」
…が、その前に俺が2人の間に滑り込み、男の拳を代わりに顔面に受ける。
だが、この程度なら俺にはノーダメなので変わりに男に向かって少し殺気を放つ。
「「「…」」」
周りもまさか俺が割り込むとは予想していなかったのかその場で固まっている。
「…い、〈
男はどうやら動揺しているみたいだ…なら丁度いい、俺は更に殺気を放ちながらこう言う。
「おい、お前
どうして俺の『幼馴染』の『夏美』を殴ろうとした?」
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