第162話

彼ら〈狩友〉は突然ダンジョンで生まれたチームだ。

最初は『佐藤 渉』…のちに〈異常イレギュラー〉と呼ばれる事になる男が起こした『歌舞伎座事変』だった。

その男は2年前の大晦日の夜に突然現れた。その日の夜10時に突然闘技放送が始まった。場所は銀座の歌舞伎座で、最初はいつもの通り5分以内に死んで放送は終了する…かに思われた。

しかし彼はそこでまず我々の常識を覆した。

基本、撮影用の機材や通信用の機材以外の殺傷能力のある機械は何故か動かない…これが常識の筈だったらしかし彼はその放送でまさかのダンジョンで動くバイクを使ったのだ。

そのまさかの事態に現実でもネットでも大混乱が起きた、そして彼はそのまま5分を過ぎても生きて、禁層のモンスターの元に向かった。

そして無事にモンスターに遭遇してから起きたのは我々の常識を覆す戦いだった。

現れたモンスターは今まで見たこともない位の威圧を放つ狐型の龍、白い炎を吐き骨を使い戦う…今まで誰も見たことの無い化け物だった。

対して異常イレギュラーはバイクを捨て煙幕で撹乱、そして何と剣先スコップ一本で戦い始めたのだ。

本来ならスコップ一本でモンスターと戦うのは自殺行為…だが、彼は更に危ないインファイト戦法で戦い出し約1時間も戦闘で優位にたちながら戦ったのだ。

後の掲示板の考察だと、彼のこの行為はあの白い炎による骨の榴弾攻撃に対する対策だと考察されたが、普通でも一歩間違えれば死ぬ位に危なすぎて誰もやらない戦い方だとも考察されていた。

そして年が終わる23時50分頃に世界は驚愕した、何とモンスターが骨を操りまるでケンタウロスの様な形態になったのだ。

そのまさかの形状変化に全世界は驚愕した、何故なら今までどんなモンスターもそんな事をしなかったからだ。形状変化後の強さは圧巻の一言。一瞬で彼に死を覚悟させるレベルのダメージを与えたのだ、その時に闘技放送を見ていた人はもう彼は死んだと誰もがそう思った。

だが、彼もまた予想外の方法をとった。彼は赤い針を出すライターみたいな物を取り出すと『人体総変異』と叫び、ためらいもなく首に刺したのだ。

大抵の人は彼はモンスターに恐怖して自殺したと考えていた…しかし、彼はまだ諦めてはいなかった。

いきなり彼の体が赤い液体に包まれたかと思うと赤い稲妻を放つ赤い龍人となったのだ。そう、彼はスキルでは無い変身道具を作っていたのだ。

その後は現実でもネットでも阿鼻叫喚の中、彼は圧倒的な力を見せつけモンスターを圧倒、最後はスコップに搭載されていたパイルバンカーからの近距離爆撃でモンスターの首を吹き飛ばして勝利、人類史上初めてのダンジョン制覇をやり遂げたのだ。

その後は無事に年を越しても彼の話題は尽きる事は無かった。

しかし法律が新たに設立され彼に接触する人は減り、このまま彼は時の人となる…誰もがそう考えた。

しかし去年の8月にまた彼は現れた、何ととある2人のコラボ配信に登場したのだ。

その時のネットはまた盛り上がり、SNSもその二つの配信一色になった…までは良かった。

彼がまたやらかした。

今度は都市伝説として語られていたErrorスキルを実際に配信内で使ったのだ。

正直僕もErrorスキルの事はその時に初めて知ったから未だよく分からないが、どうやら歴史上そのスキルを持っていたのは彼を含めて三人だけの超激レアスキルだったのを後の特番で知った。

そしてそのスキルはまさかの自分の拠点を空間ごと出すスキルだった。

そんなスキルを公開し、更にケッテンクラートを改良して4人乗りに大型化したりとやりたい放題な感じに…


「はい、皆さん席について下さい」


「!」


僕がそう狩友の成り立ちを考えていたら、いつの間にか先生が入ってきていた。

僕は急いで意識を切り替え、先生の方を向く。


「はい、皆さん入学おめでとうございます。私はこのダンジョン科の1年A組の担任の『桜木 桜花』です。

ではまず皆さんの軽い自己紹介をしてもらいますので名前を読んだら返事をしながら立ち上がって下さい。それではまずは…」


桜木と言った先生は25歳位の女性だった。そして出席番号1番から順に名前を呼ばれていく。


(…て、あれ?結局まだあの席の4人は来ていない?…変だな…)


そんな中でも僕は後ろの4席が空いているの気になってしまったのだった。



〜〜 しばらくして 〜〜

 


「はい、コレで自己紹介は終了ですね。では『特待生達』を今から呼びますので皆さんくれぐれも口を閉じて黙っていて下さい」


僕達全員の自己紹介が全て終わると、先生は突然そう言いだした。

僕達クラスメイト全員はその言葉に一応黙る…が、内心どんな生徒が来るのかが楽しみだった。


「念は押しますがくれぐれも騒がない様に…では、皆さん。入って来て下さい」


「了解」


「分かりました」


「了解だな」


「…」ムシャムシャ


先生が更に僕達に騒がない様に念を押してから廊下に向かってそう大声で言う。

すると三人の返事と咀嚼音が聞こえてきて教室の扉が開く。そして中に…


「…は?」


入ってきた4人を見て変な声を出してしまった。


「…!」


「ほう!」


「あら?」


他にも桐城さんは目を見開きながら4人を凝視し、Mr.プテラもまたビックリしていた。

ミリアさんも目の前の光景が理解できないのか目を擦っており…というかクラス全体が静かにしているがめちゃくちゃ動揺していた。


「…では、叶さんからお願いします」


先生は俺達を見てから4人の内の1人にそう言う。


「おう。如月 叶だ。宜しくな!」


そこにいたのはモンスターを一太刀で切り裂く〈骨武者〉の異名を持つ男性が軽く挨拶をし、


「…城ケ崎 一二三、ヨロ」


某フライドチキンのバケツを小脇に抱えて片手で骨ごと食べている〈暴食龍姫〉と呼ばれている女性が無表情で挨拶をしながらチキンを食べ、


「月神 桜だよ。よろしくね皆!」


同年代とは思えない身長とプロポーションを持つ〈戦乙女ワルキューレ〉の異名を持つ女性が綺麗に挨拶をし、


「佐藤 渉だ…まあ、言いたい事は察した。その上で言うが、これからよろしくな」


頭をかきながら困った表情を浮かべる〈異常イレギュラー〉の異名を持つ男性が挨拶をした。


(か…〈狩友〉ー!?!?)


そんな光景をみた僕は心の中で絶叫した。

そう、今目の前にいる4人こそ現代日本が誇る最強のパーティ、〈狩友〉のメンバーなのだから。



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