第156話

「め…迷宮学園!?」


「ウソ…でしょ?」


「流石にビックリ…いや、これは夢?」


「一二三、夢じゃ無い。いや、夢の方が現実味はあるか…」


俺と桜は驚き、一二三と叶は無意味な漫才をしていた、しかし現実はわからない。

迷宮学園、それは別名『第二の東大』とも言われている学校であり、俺達ダンジョンに関わる学生の憧れだ。

この学校は〈普通科〉〈情報科〉〈ダンジョン科〉〈装備・道具科〉の四つがあり、全てがダンジョンに関わる事を学ぶ学科になっている。

普通科と情報科は他の学校で学べる事は全て学べ、そしてモンスターやダンジョンの情報や素材の扱い方などのダンジョンに関わる様々な事を学べる。

ダンジョン科は文字通りにダンジョンにおけるモンスターとの戦闘、素材の剥ぎ取りやその管理、ダンジョン内の厳しい環境などへの適応方法などダンジョンに関わる全てを学ぶ為の特別な学科だ。

装備・道具科もモンスターの素材から見慣れた物や新たな物。より強力な物を作るのを目的に装備や道具を作り方を学ぶ為の特別な学科だ。

つまり迷宮学園は学校全体がダンジョンに関わる事を学べる学校なのだ、そして卒業後の就職先も公務員であるギルドの職員や有名企業の専属の素材収集要員や装備や道具などの職人として就職できたりできるなど就職にも最高の場所に就職できるなど本当に至れり尽くせりな学校なのだ。

反面、この学校はかなり人気な為物凄く入学しにくい。

どれだけ入学しにくいのかと例えるなら毎年入学できる人数に対してその数十倍の人が受験にくるのだ、特にダンジョン科や装備・道具科は人気の為倍率がかなり高い。

その為この学校に入学するためだけの教材や塾などが多数できている、まさに『第二の東大』と言われているのはそこだ。

そんな学校の推薦枠、正に宝くじを当てるよりも遥かに難しいレベルの奇跡が起こってしまった。

そりゃ俺を含めた皆がこんな感じの反応にもなる、マジでビックリした。


「嘘だろ…俺でさえ受験を諦めて荒川のダンジョン関連の科がある学校を選択しようとしたのに…奇跡にも程があるだろ…!?」


「所がどっこい、コレが現実だよ」


俺の言葉に渡辺さんが反応する。


「さっきも言ったけど、この推薦は現総理大臣である真田邦彦総理大臣と天皇皇后両陛下からの強い要望があり実現したんだよ。


『あの素晴らしき若者達に相応しい学舎を用意するのは当たり前だ』


って天皇陛下は言ってた、皇后様も真田総理も同じ内容でそう言ってたんだ。

よって今年の推薦枠に君達を入れたんだ。無論皆はダンジョン科に入るんだけど、渉くんは特例でダンジョン科と装備・道具科の二つに在籍してもらうよ、君の技術を他の学生に見せて刺激を与えたいんだってさ」


「いや、刺激どころか劇物な様な気がする…」


渡辺さんの説明に俺がそう言うと、周りの三人は無言で頷いた。

つまり、学園で俺の戦闘スタイルと道具製作の技術を披露して在籍している学生に刺激を与えたいって事なんだが…マジで劇薬になる気がする。


「…あ、言い忘れた。飲むヨーグルトの件なんだけれどね、最初は2年分渡そうとしてたから私の一存で二箱で止めたんだ。だって一気に2年分渡そうとしてたんだよ?賞味期限と消費期限が保つわけないと思ったからね」


「「なるほど、納得した」」


「「いや、寧ろそっちをくれ」」


話の途中で渡辺さんが思い出したかの様にそう言うので、桜と叶は納得したが俺と一二三は違う反応をした。

俺はヨーグルトが好きだ、だから飲むヨーグルトが2年分とかご褒美でしかない。そして俺なら半年位で全部消費する自信はある。後一二三は一二三だし多分2年どころか2日持てばいいレベルだろう。


「…まあ、その件は二箱って事になったから今回はそれで勘弁してね。

後個人に送られた贈り物はこちらで検閲はしたけど、もしヤバい物があったらでキチンとリストを見て名前を確認してから連絡してね。もし婚姻届とかお見合い写真、国籍を変更する関連の書類やGPS、後お菓子などの食べ物系があった場合は直ぐに連絡する事、特に食べ物系は何が入ってるか分からないからね」


そう言う渡辺さんの顔が渋くなる。

おそらく検閲の際にとんでもない奴が混じってたんだと悟ってしまう位に顔に出てしまっている。


「…うん、取り敢えずこれで報酬の件は終わり。最後の方にある書類を見て?」


顔を横に振り、表情を元に戻した渡辺さんがそう言うので俺達は最後の方にある2枚の書類を見る。


「…〈狩友〉のチーム名とシンボルマークの著作権と商標権について?」


「うん、その書類は私達が意地でも通した奴だからキチンと聞いて理解してほしいな」


俺が書類に書かれた事を言うと、渡辺さんは真剣な顔になりながら話始める。

俺達が今回〈狩友〉としてダンジョンを制覇した、その為そのチーム名と俺達のシンボルマークが注目を集めた。するととある国がそのチーム名とシンボルマークの権利を手に入れようと動いたのだ。


「権利さえ手に入れば君達の名が有名になればなるほどその価値が高まるし〈狩友〉のグッズなども合法に作り放題の儲け放題。勿論君達には1円も儲けは無いし、最悪チーム名とシンボルマークを裁判で賠償金と共に奪われかねない。そうなったら君達がどれだけ心に傷を負う事になるかなんて考えたくも無いね。

だから私達ギルドとして先にありとあらゆる手を使い権利を手に入れた、勿論私達ギルドは君達に対して変な事は絶対にしないし、もしグッズとかを作る場合も相談して君達全員に売り上げの一部を渡すよ。その書類はその旨を写した書類だよ。

後は2枚目の書類にサインとかしてくれたらいいからしっかりと読んでね」


そう言う渡辺さんはそのまま流れる様な動きで俺達の前にボールペンと朱肉を置く。

…なるほど、権利までは考えてなかったが先にギルドが解決してくれたなら問題はないな。

俺達は全員その場でしばらく書類を読み、そして2枚目に名前を書いて人差し指で朱肉を触り、指紋で判を押した。


「…うん、これでこの場でのやり取りは全て終わったよ。

ウチも記入漏れと後始末をしてから後で祝勝会に行くからまた後で会おう、部屋の外に出ればまた職員が案内してくれるから安心してね」


そう言いながらまた流れる様にウェットティッシュを俺達に手渡ししてから一旦俺達全員の書類を回収、俺達の名前が書かれた書類を外して、残りは一人一人別々の大きな封筒に入れていく。


「…はい、この書類は写しだから再発行はできるけどなるべく無くさないでね?」


そして封筒に全ての書類を入れた後に俺達が朱肉の汚れを拭いたウェットティッシュとボールペンを回収しつつ手渡ししてくれた。俺達は全員無言でそれを受け取る。


「はい、それではこれで完全に終了。祝勝会を楽しんできてね♪」


そう渡辺さんが言うと部屋の扉が開き、俺達を案内してくれた職員さんが入ってきた。俺達はその職員さんの指示に従い部屋から出る。

そしてまた職員さんは会場まで案内をしてくれるのだった。

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