第155話
叶達の「猫に鈴を付けるか、付けないか?」の談義に入った段階でギルドの職員が来て叶達の会話は一旦中断した。
その後は俺達〈狩友〉の4人だけを連れて会場から移動、とある部屋の前に連れてこられた。
ギルドの職員は俺達を一旦振り向いて確認してからその扉を不規則な叩き方でノックする。
「はい、時間通りですね。皆さんに入ってもらっても大丈夫ですよ」
すると中から聞き覚えのある声が聞こえた。
そして、ギルドの職員さんは部屋の扉を開けてから俺達に中に入る様に言ってきた。
俺達は言われた通りに中に入り、全員が入ると扉が閉められる。部屋の中は会議室みたいな作りになっていて、中には女性が1人…
「皆様、キチンと生身で会うのは初めてですね。渡辺です、覚えていますか?」
俺のホットラインの担当の渡辺さんがいた。
「渡辺さん?」
「はい、渉様。私は本物の渡辺です。
今回は我々が用意した報酬と見ていただきたい資料を確認していただきたく皆様のお時間をお借りしてまでこの場に来てもらいました。どうぞどうぞ椅子に座って下さい」
渡辺さんはそう言うと席に座る様に手で促してくる。俺達は取り敢えず指示に従い、全員席に座った。
「では、改めて〈狩友〉の皆様。今回のダンジョンの制覇、おめでとうございます」
そう言うと渡辺さんは深々と頭を下げた。
「…何か硬い?無理せずに砕けた感じでヨロ」
「ちょっ一二三?」
それを見た一二三が不意にそう言う、桜もそれを聞いた瞬間ツッコミを入れた。
「…」
しかし、それを聞いた渡辺さんは頭を下げたまま固まってしまう。
「もしかして地雷を踏んだのか?」と俺が不安になったが…
「…アハッ♪そう言ってくれるなら『ウチ』の喋り方でいいね!」
「「「「!?」」」」
今まで聞いた渡辺さんの声とは違う、明るく軽い口調になって笑顔になりながら顔を上げた渡辺さんを見て、俺達はビックリした。
「わ…渡辺さん…ですか?」
「うん、そうだよ?ウチは仕事とプライベートは分けるタイプだから他の人からも結構驚かれるんだよね〜」
俺の動揺した喋り方をしてそう聞くと、渡辺さんはニシシッと八重歯を見せながら笑ってそう言う。
いや、小麦色の肌と八重歯が特徴だから陸上部とにいそうな明るい人のイメージがあったがめちゃくちゃ出来る大人の女性の喋り方と立ち回りをしていた。だから少し違和感はあったが、^_^いきなりイメージ通りの喋り方になっても先程の渡辺さんのイメージが頭に引っかかって更に違和感しかない。
「まあまあ、ウチの事は今から慣れればいいから。早く書類を確認して祝勝会に行こうよ!」
渡辺さんはそう言いながら自分の足元から書類を出して俺達に配っていく。
確かに違和感が凄いがこの人はこうであると割り切るしかないと思い、俺はまだある違和感をなるべく無視して配られた資料を見る。
「えっと…コレは前に言っていた『報酬』についての書類かな?」
「うん、それとは別件の書類が数点混じってるから今からする説明はキチンと聞いてね」
俺の呟きに渡辺さんが答え、話を始めた。
「まず、最初の書類は君達の報酬に関しての書類だね。
書かれている金額は深層のモンスターの素材+ギルドの依頼料(迷惑料込み)+αの合計金額だね、勿論税金は引いた金額だから安心してね。
後、+αは個人で売ってもらった宝箱関連の金額だから渡した書類には別々の金額が書かれているけど気にしないでね。因みに1枚目には買取金額とその内訳、2枚目はお金以外の報酬のリストになってるよ。だけど、今は1枚目の説明をさせてね♪
まずは…」
そう言いながら渡辺さんは話を続けた。
俺達の今回稼いだ額は深層のモンスターの素材が一人当たり4700万、それにギルドから渡された依頼料の65万を足して合計4765万、コレが俺達が等しくもらった金額だ。それに俺はプラスでニホンオオカミの発見と保護の報酬として5000万が足されている。つまり俺の今回の報酬金額は9765万円と言う事だ。しかも税金は支払い済みでこの金額、やはりダンジョンは儲かるなと常々思う。
「…て、感じだね。後コレには12月のオークションの金額を出して無いからそれは来年の一月にまた資料にまとめて皆で一緒に見てもらうからその時が決まり次第連絡するね。
後、渉さんのニホンオオカミと一二三さんの『金剛型戦艦の設計図集』は日本がキチンと管理させてもらうから安心してね」
「安心した、私では持て余していたから…」
「いや、あの本ってそんなにヤバいやつだったの!?」
渡辺さんの説明にほっと胸を撫で下ろす一二三と思いっきりツッコミを入れる叶。
一二三のあの本、日本が持っていた金剛型戦艦の設計図だったのだ。しかも金剛型の1番艦「金剛」、2番艦「比叡」、3番艦「榛名」、4番艦「霧島」、この全ての設計図に加え使用された弾薬の設計図も書かれたかなりの厄物だったのだ。
…実は、あの本を俺の拠点に入れてしまったから俺の拠点がその本の全ての設計図を記憶し、新たに設計図集を製作してしまったのは内緒である。バレたらヤバい、興味本位で見たけど弾薬以外で材料と設備があれば5ヶ月位で作れてしまうレベルの本だったからだ。アレは世に出たら不味い、マジで複製されたら目も当てられない。
「まあ、詳細は本人から後で聞くといいよ。今は2枚目をめくってリストを見てね」
渡辺さんはそう言いながら2枚目を見る様に言ってくる。
俺達は無言、叶も渋渋だが2枚目をめくる…が、俺達全員がそこに書かれている事に驚愕する。
「…うん、皆見たね。説明するからそのままでいてね。
リストにはVIP達からの個人的な贈り物とか書いてあるけど今は赤枠の中に書かれている4つだけを見てね。
まず1つ目は回復薬βの購入と所持の免許を配布する、コレはギルドからの報酬ね。
2つ目は全員に飲むヨーグルトの24本入りの一箱を二箱ずつ、これは君達があの時皆で飲んだ飲むヨーグルトのメーカーから途轍もない位の売り上げに貢献してくれたからって渡された報酬ね。
3つ目はスカイツリー全体で使える商品券20万円分、コレはスカイツリーに関わる全ての関連企業からの報酬だね。
最後の4つ目は…
文京区の本郷にあるダンジョンに関する全てを学ぶ為の『高大一貫校』、『国立迷宮学園』の推薦状を貴方達全員に送る。勿論学費は全額免除の特待生としてね。これは日本の総理大臣、そして天皇皇后両陛下からの報酬になるよ」
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