第154話

「「すんっませんでした!」」


「いや、よく事情の知らない人には勘違いをされるから慣れたもんさ。気にしないで」


俺と叶は全力で頭を下げた。謝った相手である『城ケ崎 颯太』さんは尻尾を揺らしながら笑顔で許してくれた。


「アハハ!やっぱり私は若く見られちゃうから仕方が無いね♪」


そんな光景を一二三に肩車されながら見て、笑いながらそう言うのは『城ケ崎 ナターシャ』さん、一二三の母であり間違いなく颯太さんよりも年上だった。

ナターシャさんのジョブは『格闘家』だが、スキルに『合法の肉体』を持っている。このスキルは10歳の容姿から肉体の成長と劣化が止まる代わりにキチンと大人の女性にできる事は全てできると言うスキルだ。まさに一部の人類が歓喜するスキルだろう。

そして颯太さんはナターシャさんと合コンで出会い、その後ナターシャさんに猛アタックされて最終的には双方が愛し合って結婚したそうだ。


「全く、ナターシャを愛しているのは間違いないが…毎回コレだもんな…」


「ごめんねー」


「いいよ、結婚した時点で覚悟をしていた事だから」


ナターシャさんの言葉にため息混じりに答えつつ一二三からナターシャさんを持ち上げ、自分が代わりに肩車をする颯太さん。


「それよりもナターシャ、皆にアレを言わないとダメだろ?」


「あ、そうだった」


2人がそう話すと、真顔になり俺達と桜を見る。


「この度は私達の愛娘が長年苦しんでいた原因を解決していただきありがとうございます」


「お陰で一二三ちゃんは普通の女の子と同じ生活が送れる様になりました。本当にありがとうございます」


そして肩車した状態で2人同時に頭を下げる城ケ崎夫婦。そのセリフを聞いた俺達は一斉に一二三をみた。


「…『リミッター』、それが新しいスキル。このスキルは自分限定だけどありとあらゆる事にリミッターを任意で細かく設定したり解除したりできるスキル。

身体能力の制限や感覚の制限、もちろんスキルの制限もできる。

これで私は『暴食』と『食いだめ』のスキルにリミッターをかけた、これで私は年相応の食事で事足りるし空腹感に悩む必要がなくなった…あ、ダンジョンに行く際はリミッターを外して沢山食べるからそこは安心してね」


「ひ…一二三!」


「✌︎(˙-˙)✌︎」


一二三が自分の新たなスキルを報告し、叶が嬉しそうに一二三にそう言いながら近づく、一二三も叶に向かって無表情でダブルピースをしていた。


「良かったね、一二三」


「ああ、コレは大団円と言っていいな」


今回のダンジョン攻略、桜の夢だけではなく一二三の夢も叶った。正しく大団円と言っていい結果だろう。


「…あ、因みに私はそのスキル以外にジョブに『写真家』が追加された。皆はどうだったの?」


俺が2人の光景を桜と見ていると、不意に一二三がそう言いだした。

確か『写真家』は文字通り写真を撮るのが上手くなるジョブの筈だ。


「お、なら俺から言うな。俺は『料理人』のジョブと『狙い撃ち』のスキルだな」


「料理人追加、私大勝利」


桜の提案に最初に言い出したのは叶だった。

『料理人』のジョブは俺が持っているから別に問題はない、寧ろこれからダンジョンで叶と交代して料理をしていけるから負担が減って有り難い。

そして『狙い撃ち』のスキルは弓などで狙った場所に当てられる様に補正されるスキルのはずだ。コレはかなりの当たりを叶は引いた事になる。


「次は私だね。私は『リーダー』のジョブと『裁縫』のスキルだった」


「あ、確実にリーダーになった」


「一二三、皆と話し合ってリーダーはオレと渉の2人にするって決めたよね?」


次に答えたのは桜だった。『裁縫』のスキルはアンディーさんと同じだから説明は省く、『リーダー』のジョブは仲間との連携や指示が上手くなるジョブだ。

これで桜はリーダーとして俺達を引っ張る事ができる様になった…のだが、実は皆と話し合ってリーダーは俺と桜の2人体制になっている。理由として俺は戦闘経験がずば抜けているからだ、だから最初は俺をリーダーにしようとしたが俺が「俺だけだと今回みたいに俺がやられた場合に統率が取れなくなって全滅する可能性があるから桜と二人体制の方がいい」とごねたのでそうなったのだ。

…てか、また俺が最後になってしまった。三人からめちゃくちゃ視線をむけられている…これは言わないとダメなやつだな。


「…俺はジョブの追加は無い。

だが代わりにスキルが2つ手に入れた、『努力』と『モテ体質(動物)』だ」


「…いや、片方は超大当たりだな…もう片方は微妙だけど…」


「何言ってるの叶?『モテ体質(動物)』があれば猫カフェで無双できる。両方とも超大当たりだよ」 


俺の発言に叶と一二三がそれぞれ反応した。

『モテ体質(動物)』、これはモンスターを除く動物限定でモテる様になる正直微妙なスキルだ。どうやらこのスキルのお陰で俺はニホンオオカミ達に好かれていたんだと思う。

そして『努力』のスキル、これはマジで大当たりのスキルだ。

筋肉の成長の限界の無くし、必ず成果が出る『筋トレ』。

訓練の限界を無くし、型や技を身につけて更に研ぎ澄ませられる様になる『修練』。

覚えられる限界を無くし、自分の任意で覚えた事を思い出せる様になる『暗記』。

この三つのスキルを内包するスキル、それが『努力』だ。

このスキルは本当にヤバい、何故なら俺の悩みであった成長限界による肉体の限界がなくなったからだ。

これで戦略の幅も増えるし俺個人の戦闘力も跳ね上がった。


(これで戦鎚や斬馬刀などの重量級の武器が使用可能に…いや、DLCで追加される『燃料型と電池型、その次世代型の系統の稼働機構武器』が使える様になった。これは本当にデカいぞ…)


燃料型と電池型、その先の次世代型の稼働機構武器。

俺が1番最初に手に入る電池型の次世代の奴を最初に作ったチョッパーよりも先に作り、お試しで一回だけ使用し、そして武器を持っていた右腕が複雑骨折してしまった程に威力と反動、そして重量があるイカれた理想の集合体の様な武器。その武器だけではなくその後の全ての武器が使用できる様になる。

それを使いまだ会った事がない未知のモンスターを狩る、想像しただけでワクワクが止まらない。


(だが、まだだ。無理はしてはいけない、一歩一歩確実に段階を踏もう。焦っても俺が死ぬだけだしな…)


俺は何故か猫の種類で談義をしだした叶達三人を見ながらそう思った。

そして、そんな俺達4人のやり取りを優しい目で全員の両親が見守っていてくれたのだった。

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