第153話
あの後、俺達4人は無事に会場に案内され、無事に入った…のだが…
「あ、渉に父さん達!遅かったね、どうしたの?」
「…」
めちゃくちゃ可愛い子…いや、桜が出迎えてくれて、体が硬直した。
「渉…どうしたの?」
今の桜は薄いピンクのパーティドレスを着ている、それだけならまだいいがデザイン的に胸を強調するデザインなのと軽い化粧をしている為、本当に中3かと思えるくらいに…その…可愛い…
「別に何も無かったぜ、やり残した仕事を片付けたに過ぎないからなぁ」
「そして、終わったタイミングで丁度渉くん達と合流したから一緒に来ただけさ…何も問題は無いよ」
「…まあ、母さん達がそう言うならそうなんだね」
桜は自分の両親との会話に一様納得したのか、それ以上は追求しなかった。
…話を聞くに桜はアイツが此処に来たのは知らないみたいだ、恐らく瀬戸際で彼ら夫婦が立ち塞がったのだろう。いい両親だと思う。
「お?渉じゃん。遅かったな?」
「叶か…いや、少しな…てかお前のスーツ姿とかめちくちゃ違和感しかないな」
「うるせーよ、俺も気にしてんだ」
俺が考え事をしていると、スーツ姿の叶が話しかけてきた。
その後ろには叶の両親であり現役の弁護士である誠さんがスーツを着ていて、隣には着物を着た金髪の元ヤンで現在は専業主婦をしている里美さんがいた。
「やあ、渉くん。いつも叶が迷惑をかけてすまんな」
「ああ、何か粗相をしたら真っ先に言って欲しい。私がスグに拳骨でもして解決するから」
「いや、親父もお袋も酷くない!?」
叶の挨拶の後に後ろから叶の両親が挨拶をして来たが、叶はその挨拶が気に食わなかったのか思いっきりツッコミをいれていた。
(いいな…やっぱり母親がいるとこうなるのかな?)
今も会話している叶達を見て俺はそう思った。
俺はこの世界では父さんがいる、そして前の世界にも父さんはいた。しかし双方の世界のどちらにも母親はいなかった。今の世界に母親がいないのは俺を守って死んだからだが、前の世界で母親がいなかったのは産んでからスグに失踪したからだ。そして失踪してから3年後に川に見知らぬ男性と手錠に繋がれて死んでいるのが発見された、その後の警察の調べでわかったのだが前世の俺は父さんとは血の繋がりが無かった。
代わりに母さんと一緒に死んでいた男性と俺は血の繋がりがあった、つまり母さんは父さんに托卵させて産んだ俺を預けて好きな男性と駆け落ちした…これが警察が出した答えだった。実際に死んだ男性の自宅には母さんの私物などの同居していた痕跡があり、警察は導き出した答えを真実として断定し父さんに報告した。
だが父さんは生まれた俺には罪は無いし例え血が繋がってなくても俺は自分の子だと言ってくれた。
そんな父さんも俺が成人して働きだした時に癌でこの世を去ったが、それまでに沢山の愛情を持って育ててくれた。
だが、俺はやはり前の世界の時や今の世界でもどこか母親という物に憧れているらしい。故に今も家族で笑いながら話している叶が羨ましく思ってしまうからだ。
「…渉、どうしたの?」
そんな風に叶達を見ていると、俺の様子が気になったのか桜が隣に来て心配をしてくれる。
「…いや、叶の家族が少し眩しくてな…」
「…渉」
俺は桜にそう言ってまた叶の方を向く。すると桜は俺の腕に自分の腕を組んできた。
「渉、大丈夫だよ。きっと渉にもいい事あるからね?」
「…おう」
桜は組んだ状態でそう言うが、実際には組んだ際に胸が腕に当たっているので現在進行形でラッキーは起こってしまっている。しかし俺はそれを顔に出さない様に我慢しながら桜に返事をした。流石に「君の胸が当たっているから今はラッキーさ」なんて絶対に言えない、そんな事言ったら確実に『筋トレ』のスキルを持つ桜のフルスイングビンタをお見舞いされて死ぬ可能性がある。
「…なんだ、私達が最後か」
そう俺が耐えていると、後ろから一二三の声が聞こえてきた。
「おう、一二三。おそか…」
「一二三、こん…」
「…嘘でしょ?」
俺と叶は一二三の方を向いて反応したが固まってしまう、そして桜は今の光景を見て唖然としていた。
「…どうしたの皆?」
「うあぁ!2人ともやっぱりかなりのイケメンだね、『お母さん』も年甲斐もなくはしゃいじゃいそうだよ!!」
一二三の隣には女性がいて、その女性は一二三と似た髪型と髪色をしていた。そして『お母さん』と言ったので多分あの女性が母親なのだろう…
「叶!警察に電話!!」
「まかせろ!」
「ストップだ男達よ!」
俺は急いで叫んで叶に警察を呼ぶ様に叫ぶ、叶もまたその叫びに答えて警察を呼ぼうとした…のだが、『角と尻尾を生やした』スーツ姿の優男に止められてしまう。
「待て!話せばわかる!!」
「「分かりたくも無いわ!」」
男は全力で俺達にそう叫ぶが俺達は同時にその言葉を否定した。何故なら…
「「幼女を嫁にした犯罪者を通報して何が悪い!」」
「愛に年齢は関係ない!俺は幼女だから好きになったんじゃ無い、惚れた相手が幼女だった。ただそれだけだ!」
母親の容姿が完全に10歳の子供だったからだ。
「…あの2人は何やってるんだろう?」
「私には分からないな…あ、一二三ちゃん。疲れたから肩車して♪」
「了解、母さん」
そう言って一二三はめちゃくちゃフリルがついたドレスを来た女の子の脇に手を入れて、持ち上げて肩車をする。うん、完全に子供だな。間違いない。
「後、嫁の『ナターシャ』は私よりも年上だ!」
「「嘘をつけ!!」」
俺達は確実な嘘にツッコミを入れる。
「あ、私これでも三児の母だよ♪」
「因みに私が1番下だよ」
「「マジで!?」」
しかし、どうやら年上の件は嘘じゃ無いかもしれない状況になってきた。
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