第145話
〜〜 ??? 〜〜〜
下を向く俺、徐々に意識がハッキリとしてくる…と思った。
ポフッ
「『ヒャア!?』」
お尻の辺り、つまり背骨が剥がれた尻尾に誰かがしがみついたのだ。
もふもふもふもふ…
「何だと…私が今まで感じたことの無い位の最高のもふもふ…癖になる!」
「『ピァアアアアア!?』」
どうやらしがみついたのは一二三のようだ、異常なレベルの高速かつ繊細な指先と頬擦りで尻尾のもふもふを全力で確かめていた。しかし、今の俺にはたまったもんじゃない、何せ尻尾にも神経が通っているからめちゃくちゃくすぐったいのだ。もはや拷問と言っても過言じゃないだろう。
そんな感覚を数十秒間耐えていると不意にその感覚がなくなった、何かと思い後ろを振り向くと…
「『一二三?』」
「冷たすぎる!」
桜が一二三の顔を両手で挟んで俺から引き剥がしていた。更に力の微調整をして冷たい状態で触っているのか一二三が冷たさを訴えている。
「『何で渉の尻尾をモフったの?理由は??』」
「そこに最高のもふもふがあったか…いや、手の冷たさを強めるのはやめて!」
桜の問いに一二三がドヤ顔で答えようとしたが、その顔を桜が力を強めて冷たくする事で更にお仕置きをしていた。一二三も冷たすぎるのか先ほどからジタバタと暴れている、そんな様子を2台のドローンが撮影していた。
「『…てか、配信用ドローンって今まで何処にいたんだ?確かに禁層へ一緒に連れて行ったが戦いの最中は何処にもいなかったよな?
』」
「コメントを見ると自動的に離れた位置で撮影してたみたいだぜ、例えばあの闘技場では観客席にいたみたいだぞ」
俺がボソッとそう言うと近くにいた叶が自分のドローンについているスマホを確認しながら答えてくれた。なるほど、確かにそれなら納得だ。
「…あ、後これ。桜から回収を頼まれた奴な、お前のだろ?」
叶は操作している画面を見ながらそう言うと画面から顔をこちらに向けて俺に回復薬βの入ったケースを渡してくる。
「『サンキュー、まじ助かった。大体後1分くらいしか余裕なかったから結構心配してたんだよね』」
「別にいいが、中身の奴は何?回復薬だと思うけど回復能力が市販されたやったよりも強いみたいだし?」
俺が叶からケースを受け取ってからお礼を言うと中身の薬について聞いて来た。
「『ああ、それはな…
「ゴフッ!」
「桜!?」
おっといけない、桜の副作用が始まった』」
俺が説明をしようとしたらその瞬間、一二三の悲鳴と共に血の匂いが漂い始めた。そちらを見ると桜は吐血しがら左手で体を抑えながら右手で口を抑えていて、膝立ちの状態になっていた。俺はそれを見るとスグにケースを開き、中の注射器を2本取り出しあたふたしている一二三をよそに桜の首に注射器を当てる。
「『全く、これがなかったらまだ使いやすいんだけれどな…』……ガブァ!?」
プシュっと音がなり全身からまた今までと同じ音が鳴り響く、そして俺もまた吐血と同時に全身に痛みが来たので急いで二本目の注射器を一本目を打っている手の手首に当てて使う。
「いや、コレが副作用とかヤバすぎでしょ!?」
「…そうだよ一二三、だから渉からは最終手段としてしか使うなと言われたんだ…」
俺の回復中に先に回復し終わった桜が驚いていた一二三に対して答えていた。
「…にしてもヒデェな、回復薬αを使って回復しないとダメなレベルの副作用とは…」
「叶、今使ったのは回復薬αじゃない、回復薬βさ。
月神製薬が渉から作り方を教わり製作した自衛隊の軍用医薬品にもなっているαの上位版さ。骨折や骨のズレまで治る品物で、今後所持と販売にギルドからの所持免許が必要になる程の薬だよ」
「…因みに購入時の価格はまだ決まってない。俺が先行量産のを買った時は確か一本100万だったな…」
「いや、一本で100万って…でも、効果がすごいから寧ろお得なのか?」
叶の言葉に、桜と途中で回復し終わった俺が答えると叶は頭に片手を置き考え始めた。
俺は取り敢えず使い終わった2本の注射器を回収してケースと一緒にしまいつつ、周りを見る。
「…やっぱり、今までの環境とは違う。攻略すると新たに階層が増えるのか…?」
今いる場所は先ほどいた場所からはかけ離れた場所になっていた。
まず空が星が綺麗に見える夜空になっていて街灯がなくても月明かりだけで周りが明るく見えてしまう位に明るい。
そして今立っている大地も一面凹凸のない芝生が広がり、少し離れた場所に広場らしき場所が見えている。
正しく先ほどみたいな活火山地域でもなく、かと言って他の階層の環境とも違う。全く新しい階層だろうと言える。
「…あ、渉のドローン発見」
俺がそう考えていると一二三が少し離れた位置で屈みながらそう言っていた。
俺はそれを聞くと一二三に近づく、近づくにつれ確かに機械鳥の一部が見えてきた。
「…てか、桜の壊れた武器と俺と桜の人体総変異装置もあるじゃん。良かった、すぐに見つかって」
俺はそう言うと機械鳥を見る、するとバッテリーの部分に黒曜石の破片が刺さっていた。多分最後に黒曜石を砕いたのは桜と一二三だからどちらか片方の壊した破片が刺さっ他のだろうと思う。
まあ、元々データ取り用の試作機でもあるから別に壊れても次の作る奴の参考にするだけだから別にいい、俺はそう考えながら機械鳥と桜の武器を回収する。
「さて、これだけはキチンと持っとかないと落ち着かないよな…」
俺はそう言うと自分の方の装置を拾ってからアイテムポーチに入れ、桜の方の装置は手に持ったままにする。
「おーい、2人とも!広場の方に行かないか!?」
「ドローンのコメントも是非あの場所をみてみたいってコメントがあるんだ、一緒に行こうよ!」
すると離れた位置にいる2人がそう言う。確かにあの広場は気になるし、周りは芝生だからモンスターが来てもすぐに分かる、ならば固まって移動するのが1番だろう。
俺は一二三と目でアイコンタクトをとり、桜達に合流すべく歩き出す。
そして合流後は桜に装置を渡した後すぐに広場に向かって歩き出した。
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