第143話

「こ…今度は一体なんだ!?」


叶は驚きの声を上げる。確かにいきなり白い火柱が上がったのには流石にオレも驚いた。

更にその火柱から白い炎がまるで導火線の様に壁際にあった全ての死体と骨の山に引火、壁際を一周する白い炎の円が出来上がった。


『Ho…』ズシン…ズシン…


モンスターも身の危険を感じたのか、オレをみながら一歩ずつ前に移動してくる。

しかし…


ガチャガチャガチャガチャ…


『Hooooaa!?!?』ジタバタジタバタ


何とモンスターの後ろの炎の中から骨しか無い大蛇が出現し、モンスターに絡みついて動きを止め始めたのだ。モンスターもまさかの事態に暴れて拘束を解こうと暴れているが、白い炎を纏った骨の大蛇はそれに対して何も感じないのかそのまま拘束するべくゆっくりと巻きつき続けている。


「…ちょっとまて、白い炎を纏っている骨ってまさか…!?」


「うん、間違いない。相変わらず常識が通用しない最高の仲間だよ」


一二三と叶がこの光景を見て、とある考えが浮かんだのかそう言う会話をしていた。

勿論俺もその可能性が頭から離れない、あれだけのダメージを受けて、更にエイセンを投げつけられて確実に死んだと思ってしまった…最高の…相棒の事を…


「『おい、このアホ猿が』」


そして、オレが1番聞きたかった声が聞こえたと同時に、


ガシャーン


壊れたエイセンがまた横に転がった。

そして今1番会いたかった人がゆっくりと立ち上がり、こちらをみて叫ぶ。


「『俺がエイセンを作るのにどれだけ苦労したと思ってんだよこの野郎!』」


「「「『渉!!』」」」


オレは目に涙を浮かべてる。そして皆で渉の名前を叫んだ。

生きていた、『狐の耳』と『背骨が付いた尻尾』を生やした『白髪で爬虫類の様な赤い目』になっているメガネが壊れた渉を見ながら。




〜〜 side 佐藤 渉 〜〜




「『それと、人体総変異 タイプ《魂骨炎狐龍》、これがなかったらマジで死んでたぞ!』」


俺はそう叫びながら壊れたメガネと大破したエイセンを触り、回収しながらまたそう叫んだ。

魂骨炎狐龍とは俺が旧歌舞伎の禁層で狩ったモンスターの名前だ、因みに名前は俺が命名した。

このモンスターの死体は発見時、物凄く状態が良かった為細胞も完璧な物が手に入った。故に初めて自分が狩った龍タイプのモンスターとして記念に作ったのだが、まさか此処でこれを使う事になったのは予想外だった。


(⦅まさか、緋雷神龍の方を使おうとしたのに間違ってコレを使うとは…やはり絵を掘るだけじゃなく点字なりで区別できる様にならないとダメだな⦆)


正直に言えば、俺はまた緋雷神龍を使おうとしていた。

理由は単純、そちらの方が身体能力と能力が強いから。だか、投げられる際のほんの一瞬の隙に中身が見えない状態のアイテムポーチの中で手の平に装置を使った為に、間違って予備として持ってきていたコッチを使ってしまったのだ。

緋雷神龍がパワー型と例えるなら魂骨炎狐龍はテクニック型だ、理由として身体能力が劣るのは勿論、能力が周りに骨があるか無いかで火力が大きく変わるからだ。実際に骨が周りに無かった場合は尻尾についている背骨しか炎で操れないので能力も弱くなる。

だが今回は運良く死体と骨の山に落ちたからフルに能力が使える、その点を含めれば偶然の産物だが正解だったと言えるだろう。

俺はそう考えながら白い炎を使って強化と操作をしている骨の大蛇を更にモンスターに纏わりつかせて身動きを取れない様にしつつ、桜の方に向かって走り出した。


「『よお、桜。傷は完全に塞がったみたいだな、それに溶岩自体を凍らして使用不可にするとは流石は我らのリーダーだ』」


「『渉!』」


俺が近くまで行き、そう話しかけると桜は俺を抱きしめて来た。


「『良かった…本当に死んだかと思ったよ…』」


「『俺は簡単には死なねぇよ、やりたい事が多すぎて死んでる暇が無いからな』」


俺が桜の言葉にそう答えると、後方から足音が聞こえて来た。


「渉、生きてるならもっと早くこいよ馬鹿野郎が!!」バンッ


「死すらも覆すほどの規格外、最高に痺れるよ馬鹿野郎」ゴンッ


「『…イッ…2人揃って馬鹿野郎はひでぇな』」


来たのは叶と一二三だ、この2人も凍った溶岩の上に来てから抱きしめられいる後ろから背中を叩いたり殴ったりしてきた。俺はそれを感じると桜を少し押し、体を剥がす。


「『叶、狂骨刀を抜いてもらえないか?』」


「別にいいが…」


俺の言葉に後ろにいた叶が刀を抜く音が聞こえた…その瞬間尻尾の骨が白い炎に包まれる。そして骨は尻尾から剥がれ、叶の刀の重ねの部分にある背骨に張り付き、刀自体が白い炎に包まれた。


「うぉ!?…って、熱くない?」


「『この白い炎そのものは無害だ。だがこの炎に包まれた骨は自由自在に操れるんだよ。くっ付けたり硬くしたりもできる。つまり叶の刀の主な材料である骨に炎を纏わせると更に強度としなやかさが増すのさ。今の狂骨刀ならアイツの鎧を切れると思う』」


「…最高だ、これでアイツを切れる!」


俺は驚いている叶にそう言うと、叶は口角を上げて喜んでいた。

更に俺はそれを見てから一二三を見る。

一二三もまたキチンと渡した物を右手に装備してくれている。だが、今はそれ以外の気になる点を聞かねばならない。

 

「『一二三、残り後何分持つ?』」

 

「…後、15分が限界。それ以上はカロリー不足で倒れちゃう」


俺がそう言うと、一二三は真顔でそう言う。

つまり後15分で…いや、俺と桜は後3分位しか持たないから次の攻撃で仕留めないとダメだな。

そう考えると俺は今この形態だから火力不足だし桜に止めを刺してもらおう。

そして、俺はまた桜の方を向いた。


「『桜、右手を上げて?』」


「『こう?』」


俺がそう言いながら右手を上げると、桜もまたスグに手を上げてくれた。


「『うし、落ちてくるからちゃんと掴めよ。『3番、4番、投下』!』」


俺がそう叫ぶと、真上に避難していた機械鳥がコンテナを二つ開けて中身を落とす。

俺はその中から3番のコンテナに入っていた『忍者刀』を掴む。


「『よっと…これこれ、最後はこれじゃ無いとダメだよな』」


「『うぁ!?…って、コレは…少し大きいけど『苦無の束』?』」


そして桜もまた落ちてきた4本の苦無の束を掴む。


「『桜、それは必ず少し離れた位置から投げて使え。大怪我したくなければな』」


「『ふふ…何か分からないけど、他ならぬ君の忠告だ。必ず守るよ』」


俺がそう忠告すると、桜は笑顔になり苦無を2本抜いてポーチに仕舞うともう2本は両手に一本ずつ持った。

俺がそれを見て、全員にやる事を全てできたのを確認するとモンスターの方を向き、忍者刀を左手側のマウントできる所に装着してから右手で刀を抜き逆手持ちで持ち、構える。


『Haaa!!』ガンッガンッ


モンスターは拘束を解こうと暴れている。現に右手の拘束が解け、力一杯骨の大蛇を殴り砕き始めている。

それを見ていると右側には叶と一二三が現れて左側には桜が現れた。そして横一線に並び、全員がそれぞれ武器を構える。


「『俺と桜は後3分で元に戻る、故に3分以内にカタをつけるぞ。トドメは桜、後は俺を含めた全員で全力攻撃だ。全部出し切ってあの鎧猿を狩るぞ』」


俺は構えながらそう言う。すると、


「はは、全力なら任せろ。スキルで俺はいつでも全力だぜ!」


「了解、残りのカロリーを全て使う勢いで行く」


右側にいた叶は燃える刀を構えながら笑い、隣の一二三は目に覚悟を宿して小刻みにジャンプしながら顔から煙を出す。


「『トドメはオレか…最高に痺れる命令だね。絶対に失敗しない、必ず倒すよ』」


そして左側の桜も小刻みにジャンプしながらモンスターを見ていた。

俺には分かる、これがこの戦いの最後の攻撃になるであろう事が。

ならば俺もしっかりしなければならない、絶対にミスは許されないのだから。


「『ハハ…最高、マジ最高の展開だ……だからよ……全力で楽しむぞお前ら!』」ダッ


「「「『了解!』」」」ダッ


『Haaa!』バキバキ…


俺がそう叫びながら突撃し、叶達もまた叫びながらそれに続いた。

それと同時にモンスターは左腕の拘束を解き放ち、俺達に向かって拘束されながらも両腕を上げて叫んで威嚇してきたのだった。

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