第140話
モンスターとの戦闘が再開して数分が経過した。
俺は色々観察しながら試したが、やはりこの状態のモンスターには関節部以外はダメージが通りそうになかった。
そして現在、モンスターは一二三に殴りかかっていた。
『Gou』ブンッ
「ッシィ」ダッ
「そこ!」ザンッ
『Gaa!?』ブシャー
しかし、体から煙を出した一二三は横っ飛びでそれを回避。更に隣にいた叶が伸び切った手首に刀の一撃を入れ、出血させる。
「…渉、今の状況…どう見る?」ダッ
「…正直持久戦は一二三が持たない、そろそろ決めないと確実に詰みそうだな」ダッ
俺は隣にいた桜の問いに答えながらモンスターに向かって走り出した。
一応、一二三はまた『暴食』のスキルを使えるまでには回復した。しかし逆を言えばこれで後30分前後位しか一二三は強化された状態を維持できないと言う事になる。
だからこそ現在の持久戦みたいな状態は非常にマズい、本当にそろそろ片を付けないと最低でも一二三が詰む。
「そろそろ頃合い…かな…」
俺は走りながら持ってきたアルトの専用武器を使用するタイミングが来たと判断しようとしていた…そんな時だった、
「「「タァ!」」」ダッ
桜がその場で三人に分身してモンスターを後ろから攻撃をしようとしたら瞬間に…
『Ho!』ドンッ
「アガァ!?」グシャッ
モンスターがいきなり後ろを見ずに後ろ蹴りを放ち、それが運悪く本体の方の桜に命中。そのまま桜は数メートル吹っ飛ばされて、滑る方で地面に擦れながら止まった。
「桜!?」ダッ
「「!?」」
『Uho?』
俺の叫び声に叶達はこちらを向き、モンスターもまさか蹴りが当たるとは予想外だったのか後ろを向いて首を傾げていた。
しかし、俺はその行為を横目に桜の名前を叫びながら駆け寄る。
「桜、無事か!?」
「ガハァ…ァ…」
桜は息はしているが頭から出血をしているし息も荒い、更には目を閉じている為意識も飛んでいるのだろう。しかし近づいてわかったが桜はどうやら蹴りが当たる瞬間に二本の短槍を交差させて盾の代わりにしたのだろう、両手には曲がった短槍が握られている。
「くそ、頼むから治る範囲であってくれよ!」
俺は急いでアイテムポーチから父さんから買った回復薬βが入ったケースを取り出して中にある注射器の中から一本を取り出し、桜の首に当てる。
プシュッ
ボキッバキッボキッボキッバキッ…
薬を打ち、1秒もかからずに桜の体からありえないほどの軽いが痛そうな音が鳴り響く。そして音が鳴り止むと桜は目を開けた。
「…渉?」
「桜…良かった…」
俺は注射器が入ったケースは桜の横に置き、使い終わった注射器をポーチに仕舞ってから桜を見る。
傷口は完全に塞がったのかもう血は流れてはいない、意識もハッキリして息も乱れてはいない。
俺はそれを見ると何故か物凄く安心してしまった。
「桜、立て…
「渉、後ろ!」
…?」
俺が桜を立たせようとすると桜が俺に向かって叫んだ…その直後だ、
『Uho』ガシッ
「アガッ!?」
いつの間にか近づいて来たあのモンスターが俺を両手で握りしめる様に掴んだのは。
『Hoo!』ギュッ
「グハっ!?」バキバキ
「渉!?」
そしてモンスターはゆっくりと万力の様に握る手に力を入れ始める。軽い、だが確実に体からなってはいけない音が体から鳴り、同時に息が強制的に吐き出される。
その光景を見た桜は悲鳴の様な声を出した。
「グ…『2番…破棄』『緊…急離…脱』!」
だが、俺は今できる最善を尽くすために機械鳥に命令する。
機械鳥はその命令を聞くとその場で2番のコンテナを切り離し、何処かに飛び立った。
「グッ…一二三、アレを使え!…使い…方は箱に…書いてある!」バキバキ…
「渉!?」ダッ
「やめろ!?」ダッ
俺は握られながらも一二三に向かってそう叫ぶ、するとどうやら一二三と叶はこちらに向かって走ってきているのか荒い声で叫んでいた。
そして最後に俺は桜を見る。
「桜…」
「渉!」
桜は涙目になりながら俺を見ていた。
しかし、俺は言わなければならない。桜のためにも、皆の勝利のためにも。
「桜…『アレを使え』!」
「!」
『Uho!』
俺が桜に向かって叫ぶとモンスターは何を思ったのか左手を離し、右手だけで俺を持ち上げた。
「!?」(チャンスだ!)
左手が離れた瞬間、俺は急いでまだ動く手をポーチに入れて『ある物』を使う。
『Ho』
するとモンスターは掴んだ俺を持ちながら構え…
『Ha!』ブンッ
闘技場の橋の壁に向かって投げた。
「ダバ!?」ドンッ
無論、今の俺には何もできない為そのまま壁に叩きつけられた俺は壁の端に積まれた死体と骨の山に落ち…そのまま…
『Ha!』ブンッ
ガシャーン
追加で投げられたエイセンに押し潰される様な形で意識が闇に落ちた。
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