第137話
〜〜 荒神中学校 体育館 14時48分 side 無 〜〜
〈渉、合わせろ!〉
〈了解!〉
ガリガリガリガリ…ズバババ…
〈『Haaa!?』〉
「す…スゲェ…これが渉先輩達の…『狩友』の戦い方か…!?」
「…渉先輩、叶先輩…カッコいい…///」
ここは荒川中学校の体育館、現在は日本全国でダンジョンの力で放送ジャックされて代わりに流れている闘技放送をギルドが準備したスクリーンとスピーカーで臨場感が万歳の中、子供からお爺ちゃんに至るまで様々な人が大勢いてスクリーンに映る映像を食い入る様に見ていた。
ある子供は映る映像が一流映画顔負けのアクション万歳に大いに喜び。
ある老人は「日本の未来は明るいぞ!」と言いながら映像を涙目で見ていた。
ある男子学生は映る映像を見て同じ学校の生徒である2人の戦闘のレベルの高さに戦慄し。
ある女子生徒は同じ学校の先輩である2人を見て顔を赤くしていた。
そんな中、スクリーンの最前列に2人の夫婦が手に写真を持って映像を見ていた。
「ああ…叶、お前って奴は…帰ってきたらお腹いっぱいになるまで焼肉を食わせてやるからな…」
「…見てるかい、望。兄ちゃん、こんなにもたくさんの人を楽しませているよ」
そう、この夫婦は叶の両親であり先ほどから叶の活躍を見て感動している茶髪でメガネの男性は叶の父である『如月 誠』であり、両手に笑顔が眩しい子供の写真が入った額縁を持って死んだ叶の弟に語りかけいる金髪ストレートの元ヤン風の女性は叶の母である『如月 里美』だ。
彼ら夫婦は最初はソラマチひろばの会場に招待されていたが、地元で応援したいとギルドに言って特別にこの会場の最前列で闘技放送を見ていたのだ。
「全く、あの子は…安全にそこそこ頑張ればいいのに、誰があそこまでやれって言ったんだか…」
「仕方ないさ母さん、叶が望の死に誰よりもショックを受けていたんだから。…だけとこの短冊を見て望の気持ちを知ったあの子は誰にも止められなかった、だからこそここまで来たんだよ。
俺達にできるのはあの子を見守ってあげる事とあの子が帰ってくる場所であり続けてあげるだけさ」
里美が今の叶の行動にため息を漏らし、誠がラミネート加工されたボロボロの短冊を懐から出してそう答えていた。
「…ありがとう父ちゃん。私を落ち着かせてくれて」
「大丈夫だよ母さん」
誠はそう言うとまたスクリーンを見始める。そして里美もまた誠に少し遅れてスクリーンをまた見始めるのであった。
〜〜 ソラマチひろば特設会場 同時刻 side 佐藤 雄二 〜〜
「《雄二博士、是非我が国の技術者達と息子さんとの仲介をお願いしたい!》」
「《いや、それは是非我が国と!》」
「《源次郎氏、貴方の娘さんと私の息子でお見合いをさせてはもらえませんか!?》」
「あぁん?…誰だ、娘の狙うフテェ野郎は?」
「会長、落ち着いてくださ…
「《雄二さん、もし宜しければ貴方の息子さんを私の三人の娘達の婚約者にしてみませんか?》」
…おい、誰だ?我が家の禁忌に触れた愚か者は??」
私が来ているソラマチひろばの特別会場、今この会場は別の意味で盛り上がっていた。
色んな人達が母国語で電話をしたり、ワインを飲みかけたグラスが床に落ちたのにも気にしないで会場に設置されている大型の液晶モニターを食い入る様に凝視していたり、私と会長夫婦に様々な人が詰め寄ったりしていた。
そして私と会長は自分達が1番気にしている事に触れて来た人物を探す為に会長と一緒に睨みを効かせながら探そうとした…のだが、
「「やめな、2人共」」ドンッ
「アダッ!?」
「…ッ!?」
会長と私は同時に真後ろからいきなりチョップを頭上に叩きこまれてしまい、しようとしていた事を止められてしまった。
「いって〜…いきなり何するんだよ『母ちゃん』?」
「「お前ら『筋トレ』のスキルを持った2人が怒りで暴れたらあの子達が帰って来る場所が無くなっちまうだろうが。冷静に考えてな筋肉バカ共が」」
私が声にならない音で苦痛に耐えていたら、会長が頭を撫でながら後ろから攻撃してきた人に文句を言っていた。
そして後ろから攻撃して来た人は貫禄のある女性で、何故か同じ顔かつ同じ服装で2人いた。
そして会長の言葉にため息混じりに答えると片方がブレて消えて1人になった。
この女性の名前は『月神 由奈』さん、会長の奥様であり女性でありながら元陸上自衛隊の特戦群に退役まで所属していた凄い人だ。
「そこのギルドの職員さん、早くこの人達の対処をしておくれ。早くしないと筋トレ馬鹿共が暴れちまう事になるよ?」
私がそう考えていると、奥様は冷静に近くにいたギルドの職員を呼んで私達を助けてもらえる様にお願いしていた。
そして数分後、周りにいた人達は一旦は離れた位置に移動してくれたが我々と大型の液晶モニターに映る闘技放送が見える位置に陣取って大型の液晶モニターを見ていた。
「全く、油断も隙も無いね…」
そんな光景を横目に奥様はまたため息をついた。
まあ、無理もないだろう。何故なら…
〈『2番、投下』!〉
渉がまたやらかしたからだ。
「流石、桜が惚れた男だな。
一体何をどう考えたら武器を入れたコンテナを4つも装備して、更に戦闘中にも関わらず武器を交換して戦うドローンなんて思いつくんだ?しかも手放した武器の自動回収機能のおまけ付き、マジでイカれすぎて最高だわ。なぁ、母ちゃん?」
「確かに、あのドローンだけでも軍人なら絶対に大喜びして数日以内に予算を組んで大量生産する品物だ。
複数の武器の輸送をしてくれる、戦闘中でも問題なく武器を変更できる、落とした武器は回収してくれる、それだけの行動が自動で行えるなら戦術の幅がどれだけ広がることか…、更に武器も今の所二種類しか見せていないが電動の丸鋸を改造した双斧に小型のランマーを内蔵した機械仕掛けのガントレット、この二つは非戦闘時にも使える素晴らしい武器だ。
そして…」
会長夫婦はそう話ながら大型の液晶モニターを見る。
〈今だ皆!〉
ドガガガガガガ…
〈おっしゃ、任せな!〉
ズバッ
〈渉も、間合いには気をつけてね!〉
ズサッズサッズサッ…
〈さっき殴り飛ばされたお返しだよ!〉
ズドンッ!
〈『Hou!?』〉
「全員の装備を1人で全て作ってしまう技術の高さと発想能力が特に素晴らしい。
それぞれの戦い方と戦闘の癖に合わせて調整されつつ強化されている防具。
武器も背骨と刀の合体した切れ味が凄まじい刀やアタッチメントを交換する事で全ての状況に対応できる指なしタイプの鉄板付きグローブ、現在の技術では再現不可能とまで言われている蛇腹の仕組みを完全再現した鞭にも使える短槍。
更に言えばダンジョンで動くバイクや四人乗りに改造されたケッテンクラート…いや、エイセン・KBだったな、その全てが素晴らしい。
正に想像したものを全て製作できる巨匠と言えるだろう」
渉がまたモンスターをガントレットで攻撃して隙を作り、そこに三人がかりでモンスターの鉱石が剥がれた場所に一斉に攻撃し出した一連の映像を見て奥様がそう言った。
そう、今映る彼らの装備は全て渉が作った物だ。そして当たり前だが渉の装備やダンジョンで動く乗り物、あの機械鳥なるドローンもまた渉の手作りだ。
そして渉が作れる武器などは渉以外は誰も制作できていない。例えば、某国が国家プロジェクトとしてダンジョンで動く殺傷能力のある機械などを開発しているのだが、そんな国でも渉が作る物には敵わない性能をしている。更に言えばダンジョンで未だキチンと動いてすらいないのだ。
故に先ほどから私を仲介して渉に技術提供を申し出たり、血縁で渉を縛ろうとしたりしてきている人が複数人いるのだ。
だからこそ私がキチンと断る姿勢を見せていないといけない、私は渉を守る義務があるのだから。
「…全く、桜は私みたいに戦場に身を置いてしまい、行き遅れ寸前で結婚する羽目にならない様に女性としてキチンと教育して育ててきたと言うのに、まさか私と同じく戦場で恋に落ちるとは…血は争えないな」
「だな、母ちゃんと出会った時を思い出すぜぇ…」
私がそう考えている最中でも、会長夫婦はそう言いながら大型の液晶モニターを見ていた。やはり会長達にも自分の娘である桜様にどこか思うところがあるのだろう。
「…あ、居ました。雄二様、頼まれた品物を買ってまいりました」
私がそう思いながら会長夫婦を見ていると、私に向かって男性のギルドの職員さんがビニール袋を持ってこちらに小走りで近づいて来た。
私は思い当たる事があったので、一言お礼を言うとビニール袋を受け取り次第中身を確認する。
「…うん、間違いない。本当にありがとうございます」
「いえ、別に良いんですが…何に使うんですか?」
私が中身を確認して更にお礼を言うと、職員さんは疑問に思ったのかそう尋ねてきた。
「ああ、別に大した事じゃ無いですよ。ただ渉が帰って来た時に渡すだけなんで」
「は…はあ…」
だから私は素直に目的を言うと職員さんは少し納得がいかなかったのか少し軽い返事をした。
しかし、私は目的の物が手に入ったので別にその態度は気にしない事にして、私は受け取ったビニール袋を片手に持ちつつ渉を見守る為に大型の液晶モニターに意識を向けるのだった。
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