第136話
1番最初に動いたのは俺と叶だった、叶が少し先にモンスターに目掛けて突撃して俺は数歩後に続いた。
『Ho!』ブンッ
モンスターはチャンスと考えてたのか走りながらも腕を振り上げる。
その後、腕の範囲に叶が入ったのを理解するとすかさずパンチを繰り出した。
「…『置楯』」
ズンッ
バコンッ
『Uho!?』
しかしその攻撃を叶は利用して絶妙なタイミングでの置楯を出現させて拳を上に持ち上げるように攻撃の軌道を強制的に変えたのだ。
「ナイス叶」
『!』
一連の行動で出来た隙を俺は見逃さない、そのままモンスターの腹部にチョッパーを両方叩きつけた。
ガキンッ
「…やっぱり、鉱石が鎧みたいになってる…邪魔だな…」
『Uo』ビュンッ
叩きつけたチョッパーは鉱石に突き刺さり、止まる。血も出てないし何よりモンスター自体も焦ったそぶりを見せずに俺を叩こうと反対の手で攻撃をしてきた。
恐らく俺の武器が鉱石のせいで抜けなくなったのだと思ったのだろうが、こっちは昔に木で同じ事を体験済みだ。
「甘いな」カチッ
ブロロロロロッ!!
ガリガリガリ…
『Haa!?』ブュシャッ
以前からチョッパーの機構はバイクみたいに取手を回す形式からボタンを押す形式に変更している。
その為突き刺さっていた双斧の刃にあたる丸鋸の刃が両方とも回転、そのまま体になぞる様走り去り体に2本の線を描いた。
モンスターも予想外だったのか雄叫びを上げたが俺はそれよりも背中側の線の端から『血』が滲み出たのだ。
「背中、血が出た!」
「了解、粉砕する!」プシュー
「「「任せて!」」」
俺が大声でそう叫ぶと全身から煙が出ている龍人化した一二三と三人に分身した桜がモンスターの左側から回り込んできた。
「オララララララ!」ズガガガガガガカッ…
「「「シャア!」」」ズシャズシャズシャズシャ…
『Aaaa!?!?』ブシャー
そして一二三はそのまま素早く動きながらジャブを連打する、すると元々モンスター自身が作っていた背中の鉱石がヒビ割れがどんどん広がり、遂には一部だが体毛の生えた肌が見えた。
そこを中心に分身した桜が三人で全力の突きを連続で放つ。
流石にコレは効いたのかモンスターも苦痛の感情がこもった叫び声をあげた。
「『2番、投下』!」
それを見た俺はそう言いながらチョッパーを後ろに投げる。
すると機械鳥の1番のコンテナが開き、アーム付きのワイヤーが射出されて投げたチョッパーを回収、同時に2番のコンテナが開き中に入っていた『二回りほど大きい機械仕掛けの棘付きガントレットの右手』だけが落ちた。
『Gaa!』ブンブンッ
「ヤバ!?」ダッ
「クッ、分身が…」ダッ
俺が急いで落ちたガントレットを拾って装備していると、モンスターが流石に耐えられなくなったのかその場で両腕を水平に伸ばしてからコマの様に回転し出した。
一二三と本体である桜は間一髪その攻撃をバックステップで避けたが分身であった2人の桜はその攻撃に巻き込まれてブレて消えた。
「ちぃ、先に電池を装填してて正解かよ…」
俺はそう言うと未だ回転しているモンスターに向かって走り出す。
普通なら回転しているモンスターに突っ込むのは自殺行為に他ならない…しかし、今はこれが最適解だ。何故なら…
「『置楯』!!」ズカンッ
『Gaa!?』ズドンッ
叶がいるからだ。
叶の置楯がモンスターが回転するために軸にしている両足の真下から出現、そのまま回転しながら持ち上げられたモンスターはバランスを崩して俺の方に顔を向ける様にしながら横に倒れ込む。
「チャンスだな…オラ!」ガンッ
『Ho?』
そして俺はモンスターの胸筋に向かって右手のガントレットで殴りかかった。しかしモンスターも想像以上に弱い攻撃だったにビックリしたのか倒れているのにも関わらず拍子抜けした声を出す。
「渉、私ならともかく何で殴ったの!?」
「まあ、見てな?」
一二三がした俺の行動に叫んだが俺は冷静になって左手でガントレットの一部に折りたたまれて収納されている『取っ手』を出して掴む。
「力が弱くてもな…物凄く早く連打すれば確実にダメージになるんだよ!」
そしてオレはガントレット内にある腕を90°回した。
ドガガガガガガガガガ…
『Hooooooo!?!?』ガガガ…
するとガントレットの2回り大きい拳がスライドしてもう一度同じ所を何度も何度も殴り続ける。そして胸部の鉱石が次々にヒビが生まれ、砕けていく。
「『電池式稼働機構武器 〈The・フィスト〉』、小型のランマーを内蔵した機械仕掛けのガントレットだ。ロマンあるだろ叶!?」ドガガガ…グシャグシャ…
「いや、正直ロマン求めすぎて若干引いてるよ!」ズバッズバッ
『Gaa!?』ゴバッ
チョッパーと同じく『people's redemption』の三つの初期武器の中の一つであるThe・フィストで俺が殴って砕き、胸部の皮膚を攻撃しながら叶に向かって叫ぶと、叶は背中の鉱石の無い部分を刀で切りながら叫んで答えてくれた。
そしてモンスターもこの攻撃には耐えられなかったのか血を吐き、
『Gaa!』バタバタッ
「ヤバ!?」
そしてモンスターはまるで子供みたいにその場で暴れ始めた。
俺も流石に一旦引こうとした…その瞬間、
シュルルル…
「おぁ?」
俺の腰辺りに何か巻きつき、そのまま勢いよく引っ張られていく、そして…
ポフッ
「全く、攻撃に集中しすぎだよ渉」シュルルル…
そのまま桜に受け止められた。どうやら桜の短槍の蛇腹の鞭を使って俺を引き寄せてくれた様だ。
「サンキュー、桜」
「どういたしまして」
俺が受け止められた状態で桜にお礼を言うと俺の右側に機械鳥が、左側には叶を米俵のように担いだ状態で煙を出し続けている龍人化中の一二三が現れた。
「渉、私それ欲しい。私向きのロマン武器だから是非使いたい」キラキラ
「目を輝かせるのはいいが下ろしてくれよ一二三!?」ジタバタ
目を輝かせる一二三と肩で暴れている叶に少し笑いそうにはなったが疑問に思った事を聞く事にした。
「後でなら作るけどさ、一二三は何で体から煙出してるの?」
「これ?…私の『暴食』のスキルの『食べた物のカロリーを消費すれば一時的に強くなる』の力を使うと何故か出るの。因みに貯めてある残りのカロリーは97%、3分で3%も使っちゃった」ヒョイ
「うぉ!?」ドサッ
俺の質問に一二三は叶を軽く投げてからそう答えた。
なるほど、一二三の『暴食』のスキルは確かにその力もあったのはしってはいたがこうなるのは知らなかった。
後、投げられた叶は驚きはしていたけど床に落ちてからすぐに立ち上がった。
『Haa!』
俺達がそうしているとモンスターはひとしきり暴れたのか勢いよく立ち上がる。
今のモンスターは腕と足、後頭以外の鉱石はヒビが入っていて、背中と胸部の一部は血塗れの肌が露出している。
「…どうやらあのモンスター、『鉱石を新たに生み出す力は無い』らしいな…『1番、投下』」
「…だね、その力があったらとっくの昔に壊れた部分を再生させる筈だし間違いないね」
俺がそう言いながら桜から離れてガントレットを外してからその場に落とすと、桜も俺の言った言葉に賛同した。
そして俺はまた投下されたチョッパーを拾い上げ、構える。
「それじゃ、一二三はヒビの入った鉱石を砕いて地肌を引きずり出して、叶はなるべく置楯を使いつつ絡め手で攻めて翻弄して、オレと渉で攻撃と2人の補助に回る。これでいいね皆?」
「「「了解、リーダー」」」
「ちょっと待って、オレいつの間にリーダーになったの!?」
『Uhooo!!』ドドドド
桜の素晴らしい提案に皆で答えた。
そして桜の必死のツッコミは血まみれで突っ込んできたモンスターによって遮られたのだった。
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