第135話

〜〜 2日前 〜〜



〈…はい、渉様から頂いたドローンの情報を確認しました。確かに生産が終了している旧型の奴ですが特定言声による操作と自動追尾だけなら問題なく我々のアプリ経由で本機の起動とその後の操作の補助まで全て操作可能です〉


「すみません渡辺さん。そちらも忙しいのにこの様なお願いに付き合ってもらって」


〈いえ大丈夫ですよ…ですが、何故配信機能とスマホの充電機能内蔵の固定型スタンド、後スピーカーが取り外されているんですか?これでは配信とかには使えませんが…〉


「いえ、これで良いんです。渡り鳥にするつもりなんで」


〈…はい?〉




〜〜 現在 〜〜




『Ho…』


モンスターが俺…いや、俺の後ろにある機械鳥をジッと見ながら警戒している。

そして後ろの三人の「何故事前に教えなかった?」と言わんばかりの圧がこもった視線も感じる。

 

「…やっぱり事前に説明をしておいた方が良かったかな?」


「「「当たり前だ!」」」


俺の呟きに3人がまたハモってツッコミを入れてきた。


「まあ、これがあの時に言ってた『今の俺の全力』だよ。キチンと驚かした分は働いて謝罪するよ」


俺はそう言いながら苦笑いを浮かべる。

長期任務用特殊支援機『機械鳥〈オオソリハシシギ〉』は『people's redemption 〜罪を狩る者達〜』のDLC『渡り鳥の目指す場所』の目玉となる追加のシステムだ。

このシステムは連続でミュータントを狩る任務がこのDLCで追加されるのだが、その為の特殊兵器として4つまでの武器などを輸送したり戦闘中に換装、使っていた武器の回収など様々な目的に作られた装置と言う名目で追加されたシステムだ。

最初は今の状態みたいに軽い武器しか運べないが機械鳥を強化していけば最終的には重い武器を2つ軽い武器を2つの合計4つまで運べて、更に指定ポイントに煙玉や閃光玉を使わせたりできるようになる超優れ物なのだ。

材料的には子供の頃に魚眼レンズを手に入れる為に回収したドローンをベースに恒例の虫型モンスターであるGを使い制作した一品だが、実は結構重大な事を見落としていたのだ。

そもそもベースとなったドローンが旧式すぎて操作する専用アプリ自体がダウンロードできない状態だったのだ、それに気づいたのは機械鳥が完成した禁層に挑む4日前の時でマジでその前に完成した『アルトの専用武器』だけを装備して禁層に挑もうとしていたくらいだった。


(その辺はマジで偶然と言うかギルドのアプリのおかげなんだよな…)


だが、その問題は偶然にもギルドが解決してくれた。

ギルドのあのアプリはインストールされていれば市販されていれる配信機能が搭載されたドローンをアプリを経由してギルドが操作できる機能があった。

だから禁層に挑む2日前にダメ元で相談したら何と欲しかった機能が動く様になったのだ。しかもアプリをインストールされているスマホを機械鳥に装置しなくてもアプリがスマホの電波を経由して動かせるなど色々とありがたい事が起きた…のだが、その分機械鳥とスマホが別々の内蔵バッテリーで動く為先にスマホのバッテリーが切れてしまう事がわかった。

そうなるとスマホにインストールされているギルドのアプリも使えないので機械鳥は制御不能になり不時着する事になる。そしてこの場合スマホのバッテリーが切れるまでの時間は、約2時間。やはり急造品の為まだまだ改良が必要だが、今はこれでいい。


(スマホは予備バッテリーを繋いだ状態にしているから低く見積もっても大体3時間弱は持つ、それだけあれば十分だ)


俺はそう思うとまたモンスターを見る。


『…Uhohoho』ドンッ…ドンッ…


俺が自分を見たのに気づいたのかモンスターがゆっくりとだがまたドラミングをしだした。


「…言いたい事は山ほどあるが、今は寧ろ手数が増えるから黙っててやるよ。後で問い詰めるから覚悟しとけよ渉?」


「そうだね、根掘り葉掘り…本当に追求するからね?秘密にしていた君が悪いんだよ?」


「そうだね、手数が増えるのはいい事。でも黙っていたのは重罪、後で私に山盛りの五目チャーハンを作る刑ね」


ドラミングをまた始めたのを見た三人はそれぞれそう言いながら俺の横に立ってまた武器を構えた。 

モンスターも俺達に戦闘の意思があるのがわかったのか更にドラミングを早く鳴らす。


『Hohoho…』ドンッドンッドンッ…


まるで戦場にいる兵を鼓舞する音楽の様にも聞こえてしまう音に俺達全員は口角を上げる。


「…三人共、俺の言いたい言葉…分かるよな?」


「ああ…あれね?分かるぜ」


「うん、確かにこの状況だと言いたくなるね」


「ふふ…ああ、自分より強い奴に皆で挑む…最高…!寧ろ私からあの言葉を言いたい」


俺がそう言うとそれぞれそう言いながら俺が喋り出すのを待つかの様に俺を見た。

俺は一息吸うと更に口角を上げる、その顔は正に戦闘狂の様になっているだろう。

だが、それでいい。

この場にいる皆で、全力で、格上のモンスターを狩る。

こんな楽しい事が他にあるか?いや無い。だからこそ楽しもう、俺はそう考えたからだ。


「「「「さあ、」」」」


俺が言いたかった言葉を口にしだすと皆もそれに続いて同じ言葉を言う。そして遂に…


「「「「狩りの時間だ!」」」」


『Haaa!!!』ダッ


俺達が言いたかった言葉を言い切るとモンスターはドラミングを止めて、そのまま勢いよく俺達に向かって走り出した。

遂に、俺達『狩友』の最初の禁層攻略が…始まったのだ。

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