第134話
俺達は一二三の機転を効かせたファインプレーで何とか方向転換に成功し、目的地にした建物が見えて来た。
「あれだ、現状で考えたらあの場所ならなら全力で戦えると思う」
「…なるほど、確かにあそこなら皆で戦えそうだ!」
その建物は確かに壊れているが、何かの輸送用なのか像すら余裕をもって入れる大きさの建物の中に入る為の門があり片方だけ壊れた扉が開いた状態で存在している円形の建物だった。
俺は走りながらそう言うと後ろにいた桜が建物を見てそう言う。
あそこなら門の中に入ってしまえばあのゴリラの動きを一方向に制限できる、故に門の出口で全員でモンスターと戦闘すれば奴は戦いにくい上に建物が崩壊して下敷きになるリスクをモンスターに与える事ができる。
「うし、もう直ぐ入るから全員気を抜くなよ!」
「「「了解!」」」
俺がそう叫ぶと全員の声が聞こえてきた。俺はその声を聞くや否や更にスピードをあげて門に入る。そして俺達は建物の中に入っていく、薄暗い空間を走る事数十秒、俺達は無事門の出口にきた…のだが…
「!?」
俺は目に入ってきた光景に急いでブレーキをかけた、エイセンは横滑りをしながら内部の中心で止まる。
「しまった、ココってまさか…!?」
「おいおい、ここどう見ても『闘技場』にしか見えないぞ!」
「つまり、この建物は差し詰め禁層のコロッセオって事なんだね。ワォ、戦うのに最適すぎて逆に怖くなってきた」
俺が周りを見てそう叫ぶと同じく周りを見た叶と一二三がそう言う。
俺達が入った場所は言葉にするなら天井がない闘技場、周りには入ってきた場所以外は荒野の大地には見られないキチンと真っ平に整備された大地に入り口として入った場所からまるでドーム球場の観客席みたいに高い壁の上に座席らしき物があり、内壁の淵には大量の生き物の死体と骨が山の様に積み上げられている。俺達が立っている戦いが行われていたであろう場所は直径2キロ、本当に広いがそフィールドの中心部には約10メートルの穴があり、そこから溶岩が見えている。
そんな状況を見ていた…次の瞬間、
『Uoooo!』
俺達を追っていたモンスターが門の出口から出てきたのだ。
「しまっ!?」
俺は建物の内装を見ていた為反応に遅れてしまったが、
「私の仲間をビックリさせないで!」
一二三はモンスターを見た瞬間に一気に走り出した。ツノや尻尾が見えるので『龍人化』をしたのだろう。
一二三はある程度近づくとそのままジャンプしてモンスターに殴りかかる。
「シッ!」ブンッ
『Ho!』ブンッ
しかし、モンスターもそれは予測していたのか一二三の拳に合わせる様に自分もパンチを繰り出した。
そしてお互いの拳が触れ合い…
『Ha!』ブンッ
「え?」
一二三が力負けしたのかそのまま一二三が吹き飛ばされた。一二三もまさか自分が力負けしたのが余程びっくりしたのか真顔になって吹き飛ばされていく。
「一二三!」
そんな姿を見た叶は急いで一二三の落下地点まで移動した。
「『置楯』!…グブッ」ドンッ
「ガハッ!?」ドンッ
そして置楯を出現させて自分が緩衝材になる事で一二三を受け止めた。しかし一二三もタダではすまなかった様で受け止められてからスグにその場で殴りかかった腕を抑えている。
「…一二三、大丈夫か?飲めるか?」
「…」ゴクゴク
そんな姿を見た叶は一二三に自分の回復薬を取り出して蓋を開けてから飲む様に進める。
一二三は黙ってそのまま回復薬を叶に飲ませてもらう、バキバキと音がなり一二三は抑えていた手を離して、そのまま立ち上がる。
「叶、助かった…まさか龍人化した私が力負けするなんて…これが禁層のモンスター…!?」
「ありがとう…ヤベェな…禁層を舐めてたかもしれねぇ…」
一二三は薬を飲ませてくれた叶に手を伸ばし、叶はその手を取って立ち上がった。
そして一二三は自分が力負けした事に戦慄し、叶は苦虫を噛み潰した表情になる。
だが、一二三を殴り飛ばしたモンスターは冷静なのかその場で体を反転させる。
『…』バキバキバキバキッ
そして何と自分の背中にあった鉱石に大量のヒビが入ったかと思うとそのままヒビから鉱石の一部を掴んで外し…
『HO』ドンッ
入ってきた出口に次々と置いていく、どんどん積み上がっていくその鉱石の山の大きさは大体エイセンと同じくらいだ。つまりあのモンスターは俺達をもう逃さない為にワザと自分の一部を剥がして置いた、一二三の言う通りかなり頭がいいのだろう。
『Uho!』ドンドンドンッ
そして出口を塞いだのを確認したしたモンスターはまた俺達の方を向き、今度はドラミングをしだした。
俺は急いでエイセンから降りる、桜も俺に続く形で一緒に降りて俺達2人は一二三達の所まで走って近づいて行った。
「一二三、無事か?」
「大丈夫、骨には異常はない。殴り返された時の衝撃で筋肉を痛めた、でも叶に回復してもらったからもう平気」
俺が一二三に近づき状態を確認する。
一二三は無事だと言うが正直治るまで感じた痛みは相当なものだったのだろう、一二三が大丈夫と言う言葉に対して顔が引き攣っている。
「皆、武器を構えて。コイツのパワーは龍人化した一二三以上ならオレ達全員一発でも食らったらアウトだ、できるだけ数を生かしたヒット&アウェイで戦うしか無い!」
桜がそう言うと2本の短槍を両手で掴み、構える。
それに答える様に叶も刀を抜き中段で構え、一二三もボクサーの様に構えながら小刻みにジャンプをし出した。
そして俺も桜の言葉に答える様に皆の少し前に出る。
「了解。なら新武器…いや、『新しい戦闘スタイル』のお披露目だ」
俺はそう言うとエイセンに向かってこう叫んだ。
「スゥ…『機械鳥〈オオソリハシシギ〉』起動!」
俺がそう言うとエイセンの荷台にあった布がかかった箱から煙が上がる。そして何かの機械音と共に何かが飛び出して『俺の背後』で止まる。
そこには配信用ドローンをよりも大きな4対の鳥の羽をもつ『鳥をモチーフにしたドローン』、そしてそのドローンには、4つの『1〜4の数字が書かれたコンテナらしき物』が羽の下にくっついていた。
「さてと…『1番、投下』!」
俺がそう言うとドローンは俺の前まで来て1と書かれたコンテナを開き、中身をそのままコンテナの下に落とした。
落とした物は俺が最初にダンジョンに挑む為に作った双斧のチョッパー、それが地面に落ちる。
「よっと」
俺はまたドローンが俺の背中に戻るのを見てからチョッパーを拾い上げ、構える。
「さて…やりますか」
「「「ちょっと待て、何だそれ!?」」」
俺がそう言いながら気合いを入れた…のだが、後ろにいた三人に止められてしまった。
「いや、何って…長期任務用特殊支援機の『機械鳥〈オオソリハシシギ〉』だよ。こいつがあると軽い武器限定だが4つまで戦闘で入れ替えながら戦える様になるから色々できるんだよね」
俺が当たり前の様にそう言うと三人は目を見開いてドローンを見ていた…いや、今一応戦闘中だよ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます