第133話 修正版
寒い深層を降り、俺達は禁層に到着した…のだが…
「な…何だ…これ?」
「…『モンスターの死体だらけの荒野?』」
「いや、人工的に作られた建物の残骸がある。明らかに『何かの災害が起きた後みたいな感じ』だね」
まず、禁層に到着してから目に入ったのは雲が厚く薄暗い空に大量にある様々な動物の死体、そして建物が何かに押しつぶされたかの様な感じで粉々になっている。
何より感じるのは…
「『熱い』…な」
熱い、つまり気温が高いのだ。
俺がそんな感じで周りを見ていた…その時だった。
ゾクッ
「!?、全員振り落とされるなよ!」
「「「!?」」」
俺達の『頭上』から濃厚な殺気を感じたのだ。
俺は本能にしたがい叶達にそう叫ぶとエイセンを急発進させた。
そしてその後スグに…
ヒュ〜
ズガンッ!
俺達のいた場所に何かが落ちて来た。そして落ちて来た衝撃で砂煙が舞い上がる。
「なっ何なんだ一体!?」
「…これ…まさか!?」
その光景を荷台で見ていた叶は叫び声をあげたが、一二三はどうやら違う意味で驚いていた。
「くそ、『そっちのパターン』かよ!?」
「そ…そっちのパターンって一体何?」
俺が運転しながらそう口にすると後ろにいた桜がその言葉に反応する。
俺はしっかりと前を向きながら桜の問いに答える。
「禁層のモンスターは人が禁層に入ると今までなら二種類の行動が確認されているんだよ。
一つ目は『俺の時みたいに遠距離攻撃してくるパターン』、もう一つは…」
俺がそこまで言うと、砂煙の中から『何かが出て来た』。
『Hoho!?』
「もう一つは『最初に闘技放送が観測されたアメリカのダンジョンみたいにモンスターが直々に攻撃しにくるパターン』だ!」
出てきなたのは目測で身長6m弱の『全身に光沢のある鉱石みたいな物をくっつけた化け物』、そのモンスターは砂煙出て来た瞬間、逃げる俺達を方を向いて吠えるみたいに叫ぶとその巨体で俺達を後を追い始めた。
「くそ、ゲームではよく見たがゴーレムって本当にいるのかよ!?」ビュッ
バックミラー越しに確認すると、叶がそう叫ぶと構えた短弓を追ってくるモンスターに向けてそう言いながら攻撃を開始した。
確かに見た目は完全に鉱石の塊が『四足歩行』で歩いてくる、見た目こそ歪だが叶の言った通りファンタジーによく出るゴーレムにも見えなくもない。実際に放たれた矢は右腕の光沢のある鉱石に刺さったがまるで気にもせずにコチラを追いかけている。
しかし、そんな中でも一二三はスリングショットを構えながらモンスターを睨んでいた。
「…叶、あれゴーレムとかじゃない。明らかに『自我のある行動をしているし獣臭がする』」バシッ
「はぁ?アレ生き物なのか!?」ビュッ
一二三がそう言いながらスリングショットを打ち、叶がそれに反応しながらまた矢を放つ。
二人の攻撃はまた追ってくるモンスターに当たり、鉱石にダメージを与えていた。
「うん。私は今まで沢山のモンスターを倒して食べて来たから大体あのモンスターが何なのかわかる。
この獣臭に1番近いのは猿型のモンスター、そして両腕を地面に叩きつけている様な走り方とモンスターの体格からして…恐らくあのモンスター、『ゴリラ』だね。中層でもゴリラっぽい奴と戦ったから間違いない」
「「「!?」」」
一二三の言葉に俺達全員が反応した、まさか一二三が自分が積み上げた経験でモンスターの正体をここまで絞り込んでしまった事に驚愕したからだ。
そんな事をしている間にもモンスターは近づいてくる、だから叶と一二三は意識を切り替えたのか次々と攻撃して牽制をしはじめた。
しかし、しばらく追われながら走っていたのだが、更に現状は悪化する事態が起こってしまった。
「…何だろう?追って来ているモンスターも気になるけど、さっきから進むにつれて気温が上がっている気がする…」
俺は後ろの席で周囲を警戒していた桜のその言葉に違和感を覚え、ある仮説を立てた。
(雲が厚い空…大量の死体にまるで災害が起きた様な壊れた建物…そして進むにつれて熱くなり続ける気温……まさか!?)
俺はそう思うと急いで鷹の目のスキルを使い、走りながら遠くの風景をスキルの限界まで見て確認した。
そして…
「くそ、最悪じゃねぇか!?」
想像してしまった1番の最悪の状況が現実である事に思わず愚痴を溢した。
「渉、どうしたの?」
俺の叫びに桜が反応する。
そして俺はこの階層がどういう環境なのかを叫んだ。
「この禁層…
『活火山地帯』じゃねえか!?しかも前方は溶岩が川の様に流れているとかそりゃ進むにつれて熱くなるよ畜生!」
「う…嘘でしょ!?」
俺の言葉に桜が叫ぶ。
俺が『鷹の目』で見たのは今も煙を出している山…つまり活火山とその活火山から溶岩が漏れて川の様に流れている光景だった。
つまりこの禁層の環境は『活火山地帯』、マグマにて足場が限定される、更に溶岩に近づき過ぎたら溶岩から発生する高熱や有毒ガスで体がやられてしまう。
そうでなくとも活火山なら噴火や落石、火山灰などの被害があるかもしれない。
ゲームなら寧ろこうゆう地形は鉱石採取の場所が多いからバッチこいなのだが、ここはゲームの世界じゃなく現実だ。
こんな超危険地帯なんて今まで潜ってきたどののダンジョンでも体験した事がない、本当に1番最悪な環境だ。
そして更に最悪なのがこのまま進めば溶岩が川の様に流れている場所に追い込まれるという事だ。
「くそ、ならこのモンスターはその場所をしっているからこうやって追い込むために追いかけてきてるって言うのかよ!?」ビュッ
「流石は森の賢者と言われているゴリラ、頭がいい」
「褒めている場合か一二三!?」
後ろから叶達のやり取りが聞こえる。
そう、このまま進めば溶岩の川に追い込まれる。
そうなれば俺達は溶岩とモンスターで板挟みの状態だ、即ち全員死ぬ確率が高くなってしまう。
俺は更に鷹の目を使い、周囲を見渡す。
「何か…何かないのか…」
俺がそう言いながら周囲を見渡していた…そして、
「…!……これしか無い…叶!一二三!右に曲がった先に『壊れてはいるが大きな建物』があった、そこに行くからモンスターをこれ以上近づけないように頼む!」
右斜前に壊れてはいるが人口の建物を見つけた。
「了解だ、まかせろ渉!」
「OK、なら渉からもらったこれの出番だね」
叶と一二三はキチンと返事をしてくれたが、一二三は何かをやるみたいだ。
一二三何をやるのかバックミラー越しに見ようとした、次の瞬間…
「ほい、頭的に目はこの辺だよね?」パンッ
カン…プシュー
『Hoaaa!?』ズザザザザザッ
モンスターの頭から白煙が吹き出した。そして何が起きたのか分からないモンスターはそのまま四つ足で滑る様に急ブレーキをかけたのだ。
「一二三さん、何をしたのアンタ?」
「渉から苦無と一緒にもらったスモークグレネードをスリングショットを使ってあいつの顔面にぶつけた。流石は森の賢者、頭がいいからいきなり現れた煙に危険を察知して急ブレーキをかけてくれた。ゴリラマジグッジョブ」
なるほど、叶と一二三の会話から察するにどうやら一二三のファインプレーみたいだ。
俺はそう理解すると共に絶好の右に曲がるチャンスだと考えたので、そのまま右に曲がり始める。
目指すは見えた建物、そこでこのモンスターを皆で狩るのだ。
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