第130話 修正版

「良かった、ギリギリ間に合った!」


「危な!?マジで焦った!!」


「ギリギリすぎて本当にごめんね」


俺が配信の事を言ってからスグに三人は走って自分達のドローンを準備して配信を開始した。

どうやらかなりギリギリだったらしく、その事について三人ともドローンに向かって謝っている。


「まあ、三人にとっては初めての禁層だから緊張とかして忘れていたとしても許される…のかな?

俺は配信の事はさっぱり分からないからな…」


そんな言葉を呟きながら三人を横目で見つつ、俺はエイセンの燃料の残量チェックとか履帯の最終確認などをしていた。

正直、エイセンに乗って禁層には行くがもしかしたら禁層ではエイセンが使えない環境の場合もある。

だが逆の場合もある…つまり、何もわからないからこそ俺達の足であるエイセンを乗る前に軽く最終チェックをして何があっても対応できる様にしなければならない。


「…よし、最終チェック完了」


オレがそう思いながら自分で作ったチェックリストの全てに印をつける。

そんなときだった…


「おーい、渉!ちょっと配信に出てもらってもいいか?」


配信中の叶に呼ばれたのは。

俺は丁度最終チェックも終わったのでチェック表を置いて叶達に向かって歩いて近づいていく。


「どうした叶?何かあったか?」


「おう、実はやってもらいたい事があってな…」


俺が近づくと3台のドローンのコメントの流れが加速したり赤色や黄色などのコメントもちらほら出ていた。

しかし、叶はそんな中でも俺に振り向き話を続ける。


「実は禁層に入るまでに俺達『狩友』のメンバーに対しての質問に答える企画をやっていてさ、渉にも是非答えて欲しいんだけどいいか?」


「え、何それ?」


俺がそう言うと叶は笑いながらどう言う事が話を続けてくれる。

企業から出しているドローンのアプリには配信者を補助する機能がいくつかあるのだが、その中に自社の専用サーバーに数日だけ視聴者からの質問を募集できる機能があるらしく、今回禁層に入る前に『狩友』の各メンバーの質問を募集し、その集まった質問の中からランダムで2〜3問を答える企画を三人でやっていたらしい。それでここにいる三人はそれぞれ質問を答え終わったので最後に俺を呼んだそうだ。


「…いや、普通にやる前から説明なり相談なりしてくれよ…俺、配信者じゃない一般人だぞ…」


「三人で考えたサプライズってやつだよ。後、お前は間違いなく一般人では無いからな」


俺が少し呆れ気味にそう言うと叶がそう言いながら笑顔になり、他2人も笑顔になる。

…いや、これ質問に答えないといけない奴じゃん……


「…わかった。でも俺にも答えられない奴もあるからそこは察してもらえれば助かるよ」


「へへ…そうこなくっちゃ!」


俺が諦めてそう言うと、叶は笑顔を崩さずに自分のドローンをに向かって特定の手の動きをしてドローンを操作、俺の前まで移動させた。


「んじゃ、早速行きますか!『ランダムスロット起動!スタート!』」


叶がそう言うと叶えのスマホの画面が上下に2分割されて下の画面が何やらスロットの様な感じで様々な事が書かれた何かが回っている。

そして上の画面には先ほどまで前面に映し出されていた叶の配信時のコメントが小さくなってはいるがキチンと映し出されていた。

俺はこれが企業のアプリの機能の一つなのだと理解すると下の画面が止まり、あるコメントが映し出された。そして俺はそれを読み上げる。


「えっと…













『ああ、私のアダム。どうして私というイブがいるのに他の女性といるのですが?私は貴方のことを思うと毎晩体が…』


「強制中断パンチ」ドンッ


ゴフッ!?」


俺がコメントを読み上げている途中でいきなり一二三が俺の鳩尾にパンチをしてきた。不意打ちだった為俺はそのままお腹を抑えてうずくまる。


「…ひっ一二三さんや…一体何を…」


「渉の尊厳と叶のチャンネルを守っただけ、私はむしろ褒められるべき」


俺がそう言うと近くから一二三の声が聞こえてくる。


「ちょっと!?何でAIフィルターを設定してないの!?」


「してるよ!このコメントを見る限りフィルターに引っかからないギリギリで書いてるから選ばれちまったんだと思う!」


更に叶と桜のそんな叫びと共にバタバタと慌ててるのもわかった。どうやら今のコメントはかなりヤバい奴だったらしい。


「取り敢えず次のコメントに行かないとチャンネルが危ない!『ネクスト』!」


叶がそう言うとうずくまっている俺に肩を貸してくれた。何とか俺は息を整えて叶の肩を借りて立ち上がり、また下画面が回転しているドローンの前に立つ。


「一二三、流石にもうやめてくれよ。質問に答えるのがトラウマになっちまう」


「それはコメント次第」


そう俺と一二三が話しているとまた画面が止まり、次のコメントが読める様になる。俺はまた殴られない事を祈りながらコメントを読み始めた。


「…『旧歌舞伎座の闘技放送の時に「さあ、狩りの時間だ」と言ってましたが何故そう言ったのですか?』…良かった、まともだった」


俺はコメントを読んでまともな内容だったのに安心する。


「あ、そう言えば確かにあの時そう言ってたな…」


「うん、オレは事情があって最近になってからアーカイブで見たけど確かにそう言ってたね」


「言われてみれば気になる。何で?」


俺が安心していると叶達がそう言いながら俺を見て来た。

確かにアレには意味があるが、別に深い意味ではないので俺は答える事にした。


「あ〜…あれだ、全力で戦う時のルーティンみたいな物だ。アレを言うと凄くやる気が出るんだよ」


「「「渉の割には以外とまともすぎる理由だった」」」


「お前らは俺を何だと思ってんだよ…」


キチンと答えたのに俺は叶達の反応を見て俺は頭を片手で抑えた。

因みに何故俺がそう言い出したのかと言うと『Monster Hand Live』の携帯機版のテレビCMで必ず冒頭で「さあ、狩りの時間だ」と言うのでそれが耳に残り、前世から狩りゲーで本気を出す時にはそう言っていたのが始まりなのは内緒である。


「よし、答えたなら次の質問いくぜ!『ネクスト』!」


叶がそう言うとまたスマホの画面が周り始める。

そしてまた止まり…


「えっと、『 俺「突然だが俺のキノコを見てくれ、こいつをどう思う?」 渉「すご…』



「強制中断チョップ」



ガブァ!?」


俺はそれを途中まで読んで、また一二三に今度は腹にチョップを喰らいまたうずくまる。


「渉、何で読むの?見ただけでアウトの奴だよね?」


うずくまっている俺に一二三がそう言う。


「…すまん、俺は確かにダンジョン配信や掲示板とかは見るが雑談配信とは全然見ないんだ。だからアウトラインが分からない、最初の奴と今の奴は笑いを取りに来ている奴だと思ってた」


「なるほど、渉はこの手の配信に関しては完全に無知だったのか」


俺がそう言うと一二三は呆れた声でそう言った。正直非常に否定しずらいのが悔しい。

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