第123話
「「「「…」」」」
俺たち4人はテレビを見て固まってしまった。
無理もない。叶達は配信で自分のジョブとスキルを公開しているし、桜に至っては次兄の話は8月3日に浅層の中層に行く為のポータルで俺がエイセンの燃料とかの補充をしている最中に配信で話していたらしいからそれも問題は無かった。
しかし、俺の母親が亡くなっている事と叶の弟が亡くなっている事は俺達は自分からはあまり話していない。特に俺の母さんの件は父さんの傷をえぐる行為だから俺は勿論口外しないし父さんも滅多にはこの件を話さない。
そして1番分からないのが一体どうやってこの件をテレビの関係者達が知ったのか…だ。
俺がそう考えていると、この番組のサプライズゲストとして参加する為に一二三から借りた俺ドローンにセットされている俺のスマホが起動、次にドローンも動き出して俺達4人の見える位置まで移動してからセットされたスマホの画面が切り替わった。
《…ハァ…ハァ……み、皆様!ご無事でしたか!?》
画面が切り替わると渡辺さんが映る、しかし映し出された渡辺さんは息を切らしていていつもの余裕が無い様に見えた。しかも微かにだが『どうなっている!?』とか『急げ!』とかさまざまな声と大量に誰かが走り回っている音、更には台車を押している時の音まで入っている。
その光景を見て俺は間違いなく緊急事態なのだと理解した。
「渡辺さん、一体どうされたのですか?」
そして俺がそう聞くと渡辺さんはその場で落ち着こうと深呼吸をする。
《…よし… 皆様、先程の映像は見ましたか?》
渡辺さんがそう聞いてきたので俺達は全員無言で頷く。
《…やはり…大変申し訳ありませんでした。あの映像は我々と皆様のご両親が検閲する前の映像なんです》
渡辺さんはそう言うと更に話しを続ける。
あの映像は2日前にテレビ局側が制作していた物で、内容は放送された内容そのまんまだったそうだ。
しかし、その映像に出ている俺達は今ダンジョンにいてNGの情報が無いか確認してもらう事ができなかった為に代わりに俺達の両親とギルドで映像の確認をしてもらったらしい。
その際は俺と叶の家族の情報、一二三の間違っている情報、全員のジョブやスキルの情報などが修正対象に上がりその後はキチンと修正したバージョンを制作したそうだ。
そしてこの放送1時間前にもギルドの職員が検閲を行い、キチンとした修正版の奴である事を確認していたらしい。
だが…
《ギルドの人間でもない、テレビ局の人間でもない第三者の人物がテレビ局のサーバーに侵入、消した筈の修正前の映像を修復して差し替えたみいです》
ここにきてまさかの第三者からの介入があったらしい。
何とその第三者はどうやったかは分からないのがテレビ局のサーバーに侵入して消去した筈の修正前の映像を復元、修正後の映像と差し替えたのだ。
更に渡辺さんの話だと現段階で分かっているだけでも俺達の取材情報がまとめられたデータから俺のデータだけをコピーした形跡もあったらしい。
そしてもっとも最悪だったのは…
《犯人はサプライズゲストとして出演する為に一時的に皆さんとテレビ局を繋いでいた我々ギルドのアプリを悪用して皆さんと直接コンタクトを取ろうとしていました。しかし我々ギルドが作ったアプリなのでそれをギリギリで感知する事ができ、こうして私が通話して回線を独占する形で防ぐと言う荒技で何とか渉様達とのコンタクトだけは防ぎました》
「…だから、さっき大丈夫ですかって聞いていたんですね…」
まさかの事態に言葉が出なかった。しかし渡辺さんはそのまま話を続ける。
《現在ギルドと警察が中心になって犯人の特定を開始しておりますが、皆さんの安全面を考慮して今回の依頼であるサプライズゲストとして番組に出てもらう件は中止にさせてください。もちろん依頼に対する報酬は払います、そしてこちらからのキャンセルですので迷惑料も上乗せさせてもらいます。
しかし番組自体はそのまま途中で止める事はできないのでそのまま放送を続けますが、ギルドが番組終了まで目を光らせますのでこれ以上変な事は起こさないと断言させてもらいます。
…そして、今から話す事を良く聞いてください》
そう言うと渡辺さんが真剣な顔になる。
《今回のハッキングの目的は不明です。ですがギルドとしてはこれは間違いなく複数人による計画的な犯行であると考えています。
現在禁層を攻略してダンジョンを制覇したのは日本だけです。
そして今回禁層を攻略しようとしているのもまた日本です。
大抵の場合は好意的に見てもらえるのが普通なんですが、中には否定的…つまり面白くないと考える人もいます。
渉様達には我々ギルド…いや日本が後ろ盾になって危害を加えようとする者は対処させてもらいますが、皆さんもできればその様な事が無い様に行動してもらうよう心がけてください。
禁層を攻略する、つまりダンジョンを制覇すると言う事はそういう事に巻き込まれやすくなるという事なんです。
だから…
「渡辺さん、アプリの緊急アップデートの準備ができました。いつでもいけます!」
…分かりました。
渉様、今から約2時間はアプリの緊急アップデートを行いますので連絡が取れません。
その為先程私が言った事をよく考えて行動してもらえたら幸いです。
それでは勝手ながら通信を切らさしてもらいます》
そう言うとドローンにセットされているスマホの画面がくらくなる。
それと同時にドローンが先ほどいた場所まで戻って羽の回転を止めた。
「「「「………マジか…」」」」
そして俺達は同時に同じ言葉を言ってまた固まった。そんな中でもテレビに映る特番は続いたのだった。
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