第118話

「…正気ですか?俺達にも食料事情とか色々な事情があるんですが??」


《それについては百も承知です。ですがこちらににもこの様な無理難題を提案させていただいている理由が二つございます。今から我々が何故その様な事を提案するに至ったのかを説明させて下さい》


そう俺と渡辺さんが会話すると渡辺さんはどうしてそう言い出したのかを話し始めた。


《今回、我々ダンジョンギルドの支部にて渉様が東京スカイツリー展望デッキ内ダンジョンに入る為の申請をしていただいた段階で我々は『渉様がいつもとは違うダンジョンを申請した?もしかして攻略するのではないのか?』と言う声が出ておりました。

その為我々ギルドの一部上層部が水面下で様々な準備をしておりました。しかし、いざダンジョンを攻略すると分かりました配信にて我々にも一つ目の問題が起きまました、それは…》


「…俺の、『Errorスキル』の公開…ですか?」


《はい、その通りです》


俺がそう言うと、渡辺さんが肯定してくれた。

話を詳しく聞くと、ギルドは俺がダンジョン配信に映った時点で水面下で動いていたのを本格的に動く事に切り替えて行動を開始した。

俺を含むパーティメンバーの家族と友好的にしていた親族に対して護衛を各ギルド支部などに通達、もし無事にダンジョンを攻略した際の身の安全の保証の為に病院や警察などに連絡して連携を強化するなど様々な事を想定して準備をした…までは良かった。

しかし、俺がもはや都市伝説レベルの『Errorスキル』を所持していた事に加えそのスキルの力を配信で公開した事で事態は急変した。


《現在は何とか鎮静化に成功していますが、当時はもはや全通常業務を一時停止してまで対応しないと処理できないくらいに大変でした。

それにより我々も予定していた対策が遅れて、しまい、本来ならこの場では一日だけ攻略を待っていただけるようお願いするつもりでした。

…ですが、更に我々にも想定できなかった事態が起こってしまったんです》


「…その事態って一体何なんですか?」


俺がそう聞くと、渡辺さんの顔がけわしくなる。


《簡単に言えば、現在日本は少しでも問題を起こしてしまった場合、即国際問題に発展しかねない状態なんです》


「「「「…ハァ!?」」」」


渡辺さんの言葉にこの場の全員が目を見開いて反応する。


「いやいやおかしいでしょ!?何で俺達が禁層を攻略する事になっただけで国際問題になっているんだよ!?!?」


そう叶が叫びながら言う、その言葉に俺を含めた全員が頷いた。流石に話が飛躍しすぎだ、何がどうなったら俺達の行動で国際問題が出てくるのか理解できなかった。


《叶様の反応は間違いなく正しいです。しかし現状は私がお話しした通り、本当に一歩間違えれば即国際問題になりかねない状態なんです。

ですので、今から私が話す事を聞き逃さないでください》


そう渡辺さんが言うと、彼女は俺達に説明を始めた。


《事の発端は我々ギルドが主導で進めていた東京スカイツリーにあるソラマチひろばのを含む闘技配信の特別会場計画が始まりでした》


そして、渡辺さんは話を続ける。

ギルドは前回俺が旧歌舞伎座ダンジョンを攻略した際に銀座が大変な事になったのを受けて、事前に俺達の母校である荒神中学校を含む幾つかの会場を決めてそこに観客を分断して闘技放送を見てもらう計画を立てていた。

それにより渋滞などによる交通網の麻痺を避けたり沢山の人が一箇所に集まって怪我などの事故が起こるのを避ける目的で最初は動いていたらしい。

しかし、俺達が深層に入った最初の日に無事会場となる場所を全て抑えおわり、いざ会場に入る人を募集しようとした段階で事件は起きた。

それは…


《最初はイギリスの女王陛下が是非日本のソラマチひろばの会場で渉様達の闘技配信を見たいと国際電話で打診がありました。

次に同じ内容でアメリカ大統領、次に中国の大統領、オランダやデンマークの国王など、その為数多くVIPや著名人が女王陛下と同じ内容で日本に打診してきたんですよ。

そして全ての電話を対応し終わり、参加希望の人の全てリストアップをしました。

するとこれまでに無いほどのそうそうたる人々がこの日本に…東京に来る事になっている事が判明しました。

その為我々が予定していたソラマチひろばの会場は急遽各国のVIPの専用会場に設定し、国と連携して各国の人々をおもてなしするべくソラマチひろばの会場の計画を全て見直しをする事になりました。

その他にも会食などのする為の机や椅子の手配や食材の調達、警察などによる会場の警備、各国の方々がお泊りになる為に帝国ホテルの準備など様々な事を国や自治体と連携して準備をしてきました。

そして何よりこれだけの各国から様々な方が来られますので勿論天皇陛下もソラマチひろばの会場に来られる事になりました。

そして…》


渡辺さんは一息いれて、更に真剣な顔になった。


《何とか会場は突貫工事ではありますが用意できました。しかし警備の話が纏まっていません。

更に皆さんが禁層の一歩手前まで来られたのを確認されたらしく次々とプライベートジェットなどで日本に向かってこられていると数時間前に連絡がありました。

その為現在も皆さんと会話させてもらっている私以外のギルド職員や東京都知事、国会議員に至るまで動ける人は全てそれぞれの作業で手が離せない状態なのです。そして我々が全ての現場の声などを聴いて考えた結果…全ての作業が完全に終了するのが大体3日後の深夜3時辺りだという事が分かったんです。

その為今回渉様に我々の方からご連絡させてこの場を設けさせてもらった次第なんです》


そう話すと渡辺さんは深々と頭を下げた。


《ですので皆さん、どうかお願いします。皆さんにも様々な事情があるのは重々承知しています、ですが東京…いや日本として今回の件は何事も無く全て無事に終わらせないと国際問題になってしまう可能性が高いんです。そうなってしまうと日本は今後の外交に対して大きな溝ができるだけでは無く最悪の場合は…想像したくありません。

ですのでどうか3日、3日だけでいいんです。どうか攻略を遅らせてはもらえないでしょうか!?》


そう言いながら今だ頭を下げ続ける渡辺さん。そして俺達全員はその話に言葉を失い、全員真顔で固まっていたのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る