第114話
「一二三!?…チィ!…2人とも、急ブレーキで止まるから衝撃に備えてくれ!」
「わかった…もう、一二三ったら」
「了か…
ガリガリガリ…キュ…
…あぶな!?舌を噛む所だったぜ…」
俺はエイセンからジャンプしてモンスターに突撃していった一二三の予想外の行動を横目で確認するとエイセンを急ブレーキで止めた。
その際に桜や叶に警告したが、桜はともかく叶は少し備えるのが遅れてしまったみたいで舌を噛みそうになっていた。
そして俺は急ブレーキをしてエイセンを止めると叶は急いでエイセンに短弓を置いてから降りて、いつのまにか腰にマウントしていた刀を抜いてコチラもラムコッコに向かって突撃していった。
「渉、オレは叶の援護に行く。キミは後方でエイセンを守っていてくれるか?」
「…了解、死ぬなよ」
「「大丈夫、まだオレは死ねないから」」
桜はそう言うと『分身』のスキルで2人に分裂してそれぞれ叶の後を追う形でエイセンから飛び出す、俺はそれを見届けてながらエイセンの荷台にいき叶が置いていっだ短弓を拾って矢を装填、いつでも放てる様にして周囲を警戒しながらまずは一二三の方を見た。
ガリガリガリガリ…
『ギャー!』
見ると一二三はいつの間にか回転しながら向かってくるラビット・ソーの前まで移動していた。
「…」
ガリガリガリガリ…
回転するモンスターが近くまで来るのを確認した一二三は無言で中腰になって構えた。そして…
「よっ」ピョン
『ギャ!?』
そのままモンスターを超える高さまでジャンプをした。
その行動は予想外だったのか、モンスターも回転しながら驚きの声を出している。しかしモンスターはその場ですぐに止まれなかったのか、そのまま一二三の着地点と思われる場所まで回転しながら進んでいく。
「ほい」ズドンッ
『ギャァアァア!』ズカンッ
そしてそのまま一二三は回転しているモンスターの円の中心、つまり軸になる所めがけて勢いよく両足で着地、モンスターの軸にしていた胴体部分にめり込むように足が入りモンスターは悲鳴をあげながら回転を止めV字みたいに地面にめり込む。
「ご飯確保」ゴキッゴキッ
『…ッ!?ッ…』
一二三は更にV字に曲がった際に上に突き出したモンスターの頭を掴むとそのまま190度回転させた後に無理やりモンスターの顔面を背中にくっつけるみたいに折りたたんだ。
流石のモンスターもコレには耐えられなったのかそのまま赤い泡を吹いて絶命する。
「…えげつねぇ…」
俺はそれを見て若干引いた。
一二三がやったのはタイミングよくジャンプして、落ちる重量と着ぐるみの防御力と重さに物をいわして回転するラビット・ソーのノコギリのような毛を無理やりへし折りながら胴体を地面にめり込ませる形で横回転を止める荒技だ。
しかもその後に頭部を通常ではあり得ないくらいの角度で回してから背中に顔面をくっつけるかの如く折り曲げる徹底ぶり、流石の俺でもやろうとは思えない行動に俺は引いてしまった。
確かにあの着ぐるみはラビット・ソーの毛皮を中心に使ったのでかなりの防御力があるし、実際にモンスターに触れたであろう足裏の生地は更に硬くしているからあの回転でもそうそう削れないだろう
その分あの着ぐるみは俺達4人の防寒着の中で1番重いし動きづらいのだが、一二三のジョブは『武闘家』だから俺達の中で1番身体能力が高いし、『龍人化』のスキルで更に自分を強化して動いているから着ぐるみを着ていてもまるで普段通りみたいに動けてしまう。実際に今の一二三はウサギの尻尾の部分から龍人化した際に出る尻尾が出ているから降りた瞬間に龍人化したのだろう。そこまであのモンスターで作るカツを食べたかったのかと思うと本気で頭が痛くなってくる。
しかし、俺がそんな事を考えていた時だ。
ズザザザザザ!
「うお!?…うぁ…顎から股関節まで綺麗に一閃して切ってるよ。マジですごいな」
エイセンの前方にラムコッコが滑ってきてそのまま止まった。
俺が急いで滑ってきたモンスターを見ると、俺の方に腹を見せる形で死んでいた。
死因は顎から股関節まで綺麗に一閃して切っている、切り口から血と内臓が出てきており断面から心臓のような臓器が切られているのが見えた。
そして俺は間違いなくモンスターを倒したのは短槍を持つ桜ではなく刀を持つ叶だろうと断定できた。
俺はそう考えながら叶達の方を見る。
『コッ…』ズバッ
「…ッ…」ジャキ
そこには叶がたった今『空中にいた』ラムコッコを上段で腹部を切り裂いて絶命させている瞬間が目に入った。
叶の周りには意図的に配置しているのか4羽のモンスターの死体が横一列に置かれていて、さっきまで空中にいたモンスターはそのまま意図的に置かれた死体と叶の上を通り過ぎて、そのまま地面に落ちて少し滑りながら止まった。
よく見ると叶の周りは意図的に置かれた死体の4羽に加え先ほど倒したモンスターを加えて三羽。つまり叶達はすでに7羽も倒している事になる。
そう理解した瞬間、
ズザザザザザッ
叶の真正面から8羽目が突っ込んできた。しかし…
ズザザザザザ…ドカッ
『コ!?』
そのモンスターは叶の正面に置かれた死体に突っ込むと、そしてまるでスキーのジャンプ台の様に死体の上を滑り、そのままの速度で空中にその身を投げ出す。
「…チェスト!!」ザンッ
『ココ!?』ズバッ
そして叶はこの状況を待ってましたと言わんばかりにまた上段でモンスターに切り掛かり、腹を掻っ捌いてその命を刈り取った。
「…なるほど、一太刀でモンスターを仕留める、流石は叶だ。そして、そんな状況を補助しているのは桜だな」
そう言いながら俺は『鷹の目』を使い叶の真正面の光景の更に奥を見る。
ズザザザザザ…
『コ…ココ』
ズバッズバッズバッズバッ…
「「ほらほら、君が滑る道はこっちだよ!」」
そこには桜が2人に分身して、短槍の蛇腹機構を使い、鞭の様にモンスターに攻撃している光景が目に入った。しかしどれだけ桜が攻撃してもその攻撃はモンスターには攻撃は一撃も当たっていない、攻撃は全てモンスターの周りの地面に当たっていた。
だが、それでいいのだろう。
「桜がモンスターを誘導して叶が止めを刺す、いい狩りの方法だ」
桜の目的は自分の攻撃でモンスターを叶がいる一方向に誘導する事だ、そうすれば後は叶の罠に引っかかって絶命する。
いい狩りの方法だ、やはり蛇腹機構を内蔵したあの武器を桜に渡した甲斐がある。
ならば俺がやる事は二つだ。
「他のモンスターが乱入しないか見張る事と全てのモンスターを狩り終わったら直ぐに回収して移動する事…だな」
俺はそう呟くと弓を構えながら周りを見張る、今回の狩りは俺は参加出来なかったが、そのおかげで叶の狩りをしっかりとこの目で見て、今まで考えていた複数の叶のための新しい装備の案がだいぶ絞れたので俺的には儲け物だった。
そして俺が周囲を警戒している中、叶は空中にいる最後の1羽の腹を一太刀で切り裂いたのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜
どうも作者です。ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。
そしてこの場で謝罪させて下さい。今朝寝ぼけて応援コメントを間違えて一つ消してしまいました。
もしそのコメントをしてくださった方がいましたら本当にすみません。
今後はこうゆう事がない様に気をつけてコメントを返信させてもらいますのでこれからも応援よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます