第112話

〜〜 8月10日 東京スカイツリー展望デッキ内ダンジョン 深層 拠点内 早朝 〜〜


「ん〜…おはよう皆」


(寝室)の扉から桜が出てきた。


「おう、おはよう。朝食はもうちょいでできるから少し待っていてくれ」


「おはよう桜、今日も胸が大きくて羨ましい。少しだけでも分けて欲しい」


「ひっ一二三!?朝から何言ってるんだい!?!?」


俺はキチンと挨拶したが、一二三が朝から爆弾発言をした為に桜は顔を赤くして胸を隠しつつ一二三にツッコミを入れていた。

あの魚類の変態モンスターがいた中層から次の深層に移動してから6日が経過した。

中層の一連は俺が叶の配信をスマホで検索して開き、映像を見せつつ説明をしたので何とか説明ができた。

そして俺達は宝箱をその場で好きなやつを二つずつ選び、残りの魚型モンスターとガレオン船、錨などの鉄製品以外はギルドに買取をしてもらって金額を山分けする事で話がついた。

なお錨などの鉄製品はみんなの装備の修理の材料にする為に残し、魚型モンスターは食料、ガレオン船に関しては後日皆で探索する事になった。その為ガレオン船は今俺の拠点の隣にある湖に座礁するみたいな形でそこにある…と言うか拠点に送った時にはもうそうなっていた。実に謎である。

因みに話は変わるが2日前の夜にドローンで配信しつつそれぞれ選んだ宝箱を開けてみた。そしてそれぞれの中身は



俺=『飛膜までしっかり分かる片腕の化石』『黒色の海パン(ブーメランタイプ)』


叶=『黄色のポーション』『無駄に金糸で登り鯉が描かれている赤い褌』


桜=『縛ってまとめられていた家紋?みたいなのが書かれた国旗サイズの旗』『桜がみた瞬間に顔を赤くして隠した為一瞬しか見えなかったがら、多分ホタテみたいな二枚貝が紐でくっついていた服みたいな何か』


一二三=『謎の文字と魚顔の人の絵が書かれたの石板』『白色の旧スク水(白色の水泳帽付き)』



となっていた。

そして見ても分かるように二箱目が全員カオスな内容だった。

桜が俺の二箱目に入っていた水着を見て顔を赤くしたかと思ったら自分の二箱目を少し開けで中身を見て奇声を上げて思いっきり蓋を上から閉めたり、叶が満更でもない顔で赤い褌を持って眺めていたりしていて、特に一二三は旧スク水を取り出した瞬間思いっきり地面に叩きつけていきなり龍人化して周りを威嚇し始める始末だった。

ハッキリ言うと配信コードギリギリの配信だったとだけ言っておこう。


「ふぃ〜…渉、乗り物の燃料補充と矢とパチンコ玉の補充が終わったぜ」


俺がそんな事を考えていたら中庭へ行く為の扉が開き、中庭から叶が軍手を外しながら建物の中に入ってきた。


「おう、ありがとうな叶」


「問題ない、今日も『この階層のあの環境の中』を進む為の手伝いならコレくらいは喜んで手伝うよ…あ、おはよう桜」


「…うん、コレが普通の挨拶だよね…おはよう叶」


俺がそう言って叶にお礼を言うと、叶は笑顔でそう返してから起きてきた桜に挨拶をした。

そんな叶に何故か少し関心した様子の桜がいた。

実は叶には俺が朝食を作っている間に中庭に置いてあるエイセンに燃料の補充と遠距離武器の補充をお願いしていたのだ。理由は簡単、『深層の環境は厳しすぎるから少しでも時短をして装備の準備をしたいから』である。

深層の環境は前にも言った通り俺が作った改造バイクでは走れない位に厳しい環境だ、だから自分自身にもキチンとした準備が必要だ。その為に叶に燃料補充とかをしてもらっていたのだ。


「…3人とも、朝食ができたから中庭に机を出してくれ」


「朝ごはん!メニューは!?」


「今日はしっかり食べたいからポトフとパン、後食べ足りないならソーセージとかを追加で焼くからその時は言ってくれ」


「速攻で準備をする」ダッ


そして俺が朝食を作り終わると一二三が異次元の反応を見せて素早く外に机の準備をする為に目の前から残像を残して消えた。


「…彼女の配信を見た感じだと一二三は無口無表情キャラで通っていたのにアレが素の性格なんだね…」


「…可愛いな…」


そんな光景を見ていた桜はそんな事を言いながら若干笑顔になっていて、叶は顔を赤くしながらボソッと可愛いと呟いていたのだった。




〜〜 しばらくして 〜〜



ギュラギュラギュラギュラ…キッ…


「…そろそろ拠点から出るが、全員準備はいいか?」


俺達はあの後全員しっかりと朝食を食べて、それぞれキチンと装備を着てから3人の配信用ドローンを起動して配信を開始してからエイセンに乗り込んだ。

そしてドローンを引き連れて少し走り出してから拠点を出るギリギリになってから止まり、3人に向かって俺はこう言った。


「うん、オレはいつでも良いよ」


「おう、何が来ても最低でも弓で牽制くらいはするぜ」


「…パチンコ当てまくる…またあのモンスターに出会えたらいいな…」


俺の言葉にそれぞれ反応を返してくれる。俺はそんな声を聞いて直ぐにエイセンを走らせて拠点から出るのだった。





〜〜 スカイツリー展望デッキ内ダンジョン 深層 〜〜







拠点から出ると、あたり一面は『真っ白』だった。


「『寒』!」


「流石に6日目だけど、まだ慣れないな…」


「『…着込んで正解だった』」


そして拠点から出て直ぐにそれぞれの反応を見せてくれる3人。

叶はまるでイヌイットの冬服みたいな毛皮が目立つ服装を鎧の上に着ていて本人は寒いと反応し、桜は自分の防具の他に毛皮製のロシア帽に毛皮のコートを着て周りを見渡しながら慣れない環境に愚痴を呟き、一二三は何故か全身をツキバキだらけの超リアルな兎顔の着ぐるみで全身を寒さから守っていた。

そんな俺も防具の上から毛皮のコートと毛糸のニット帽を被り目にはゴーグルを付けている。


「まあ、寒いのは仕方がないよ…










だってこのダンジョンの深層、『全体の8割が雪原で残りの1割が雪山、もう1割が完全に凍った湖』で構成された階層なんだから」


そして俺は叶にそう話しかけた。

そう、この東京スカイツリー展望デッキ内ダンジョンの深層は主に雪原が広がっていて、平均気温が−3℃の極寒地帯で夜に必ず大雪が降り、朝には見事に雪が積もるのがこの階層の特徴なのだ。


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