第111話
「That's impossible, why?(あり得ない、何で?)」
「(´⊙ω⊙`)マタカヨー」
「Oh my God!」ザッ
「いや、なんで桜と叶は英語?しかも一二三はまた固まったし!?」
桜はモンスターを見て英語でリアクションしているし叶もアメリカのコメディアンみたいにオーバーリアクションをしながらこちらも英語で反応している。
一二三にいたってはまた変な顔でフリーズしているし3人のドローンのコメントも阿鼻叫喚なコメントが滝のように流れている。
しかし、俺はそんな中以外にも冷静になっていて唯一このモンスターに対して対処できそうだ。
しかし、俺はそんな状況でもふとこんな事を考えていた。
(いや、褌がないって事はさっきまで襲ってきたモンスターの中の1匹で間違いないが、何でさっきまで襲ってきたモンスターがポータルの範囲内に入ってこれる?友好的なモンスター以外は入ってこれないはずだろ!?)
ここはポータルの範囲内、つまり友好的なモンスター以外は入ってこれないはずだ。
だがこのモンスターは褌がないので先程襲ってきたモンスターの内の1匹で間違いない、だが何故先ほどまで敵意丸出しで襲ってきていたモンスターが入れないはずの場所に入ってきた。
つまり…どう言う事なのかわからなくなってしまう。
するとモンスターは俺達の近くまで歩いてきて小脇に抱えていた箱を俺達の前に置いた。
『ギョ』
そしてまず抱えていた箱を右手で指を刺した。次に…
『ギョッギョギョ!』ビシッ
次に褌の山を右手で指を刺して、次に俺達の前に左手の人差し指を以外を折りたたんでから見せてくる。
…そして俺はこの動作を見て理解した。つまりこのモンスターは…
「…もしかしてだけど、俺達が奪った褌一枚とその箱を交換してくれって事か?」
『ギョギョ』
俺がそう言うと、モンスターは肯定するように頭を上下させる。
しかし、この行動に俺は更に困惑してしまった。
まさかモンスターが自分の装備を奪った相手に対して物々交換で平和的に取り返そうとしてくることなど前代未聞だったからだ。
「…少し待っていてくれるか?仲間と相談したい」
『ギョ』
俺がそう言うと、モンスターはその場でめちゃくちゃ姿勢の良い正座をした。
俺はその正座に何故がイラッとしたがそんな事を言っている暇ば無いと強引に片付けて未だ同じポーズを取りながら何か叫んでいる叶の所にいく。
「Oh m…
「いや,いい加減正気に戻れこの野郎」ドスッ
…グフっ!?」
そしてまた何かを言いかけた叶の頭にチョップを一発入れて正気に戻そうとした。
すると叶はその場でうずくまり唸り始める。
「…ッ、痛てぇじゃねえか渉。もうちょい優しい方法があっただろうが…!」
「いや、正気を失ってる方が悪い。取り敢えず現状を簡単に説明するからそのまま聞いてくれ」
叶は頭にチョップをした事に対して何か文句を言っていたがハッキリ言って正気を失っている方が悪いと思ったので叶をそのままにしつつ現状を説明した。
叶は少しの間うずくまったが俺が話終わるとゆっくり立ち上がり、そのまま自分のドローンを後ろに追尾させつつ未だ正座しているモンスターの方に向かって歩き出す。
そしてモンスターが持ってきた箱の前で止まり箱を穴が開くほどいろんな角度で見始めた。
「…渉、多分コレ宝箱だわ。
今まで見てきた他の人の配信でこんな感じの宝箱を何回か見たことあるから間違いないと思う」
叶はそう言うと自分のドローンに向かって何か話し始めた、おそらく視聴者達に箱の事について詳しく聞いているのだろう。
つまりあのモンスターは宝箱(仮)と褌一枚を交換しにきたと言う事だ…いや、宝箱の方が価値が高くない?このモンスターの価値観はどうなってるんだ??
(いや、むしろこちらの方が利がある取引だ。交換した方がいいかもしれない…それに、あの褌はマジで普通の魚皮製の褌だしな…)
そして俺はこう思い始める。
取引的には中身が分からないが間違いなく宝箱の方が価値があるのは間違いない。
それにあの褌は以前旧歌舞伎ダンジョンで手に入ったヤツを調べたら、魚の皮で作られている事以外は完全に普通の褌なのがわかっている。故にこのモンスターとの取引は普通に考えて俺達の方に利がある取引になる。
そう考えているとドローンと話し終わったのか叶がこちらを向いた。
「渉、俺はこの取引はしていいと思うんだがいいか?」
「…ああ、俺もそう考えていた。なら、決定だな」
叶の言葉に俺も肯定した、そして俺は直ぐに正座で待機しているモンスターに話しかけた。
「仲間と相談した結果、お前との取引を受ける事にしたよ。持っていきな」
『ギョ!』ビシッ
俺がそう言うと、モンスターはその場で立ち上がり何故か海軍式の敬礼をした。
その敬礼の後、すぐに褌の山に近づいてその中から一枚を取り出す。
そしてその場で腰の海藻を外して褌を装備した。
『ギョギョ』フリフリッ
モンスターは褌を装備して満足したのか俺達の方に振り向いて手を振る。
俺と叶も苦笑いしながら手を振りかえすとその場で走り出して海の中に消えていった。
そしてその後しばらく放心していると、急に叶が話しかけきた。
「…なあ、渉。褌って後何枚だったっけ?」
「…73枚…」
叶が残りの褌の枚数を聞いてきたので俺は素直に答える。
そして俺が枚数を答えて直ぐに…
『『『ギョ』』』ビシッ
海面を埋め尽くさんばかりの海藻を巻いたモンスターがそれぞれ様々な物を持って浜辺に歩いて上がってくる。そして共通してモンスター達は俺達を見つけると片腕を上げて挨拶をしてきた。
「…つまり、最大であと73回は物々交換をするの事になるのかよ…」
「…褌はアイテムの交換チケットだった?」
叶は最大であと73回もこのモンスター達と物々交換をする事に呆れていて、俺は頭がおかしくなり始めていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…二人とも、何これ?」
「大量の生魚…しばらくのご飯はお刺身づくし?」
その後しばらくして桜と一二三が復活した時には褌の山はなく、そこには巨大な魚みたいなモンスターが数種類ありそれが山積みになっていて、宝箱のような物が8個、碇などの鉄製の残骸が複数個あり金品や宝石や真珠なども複数個、極めつけは側面に穴が一つ空いただけの『ガレオン船』が一隻、浜辺にズラリと置かれていた。
…いや、マジでアイツらの価値観どうなってるんだよ…
「「いや、モンスターから奪った褌で物々交換したらこうなった」」
「…詳しく聞こうか…全部ね…」
そして俺と叶が同時に同じ事を言うと桜は頭を抱えながらこちらに事を話すように促してきた。
因みに一二三はいつの間に魚のモンスターの中から本マグロサイズの目が無いブリみたいなモンスターを持ってきて叶の近くまで行き生で齧り付きながら俺達の話を聞いていた。
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