第110話
「このモンスターは俺が旧歌舞伎座の特殊ダンジョンを攻略した際に中層で出てきたモンスターだ、その時も俺はコイツらに追いかけられた」
俺はそう言いながら荷台の席から立ち上がる。
「しかし、偶然だが1匹だけこのモンスターを撃退したんだ。もしかしたらその方法が通用するかもしれない」
「マジか!」
そして体をなるべく動かさない様に構えながらそう言うと叶が俺の言葉に反応する。
「ああ、その方法なんだが…」
俺がそう言った次の瞬間、
『ギョラ!』
「渉、あぶねぇ!?」
俺の横に泳いで追いついてきた1体のモンスターが俺に目掛けて飛びついてくる、その光景に思わず叶は叫ぶが俺は冷静になって飛びついてくるモンスターの『褌』を掴む。
そして…
「その方法とは…これじゃぁ!!」
『ギュ!?』
そのまま力任せに走って追いかけくる群れに向かって褌を掴みながらモンスターを投げる。
『ギュララ!?』
そうすると投げたモンスターはそのまま追ってきたモンスター達にぶつかり、そのまま絡み合って追ってきていたモンスターの大群の速度を少し遅らさせた。
「…マジかよ、体は謎の液体で触れそうにないが、あの褌は掴めるのか…そしてアイツら同士をぶつけて倒すのが撃退ほ…
「違う」
…え?」
そんな光景を見た叶はモンスター同士をぶつけて倒すのが撃退方法だと言おうとしたが、俺はそれを否定する。そして俺は叶の目の前に『握りしめていた布』を突き出した。
「…おい…嘘だろ…まさかコイツらの撃退方法って!?」
叶がそう言った次の瞬間、
『ギョララ!』
後から追ってきていたモンスターの大群の中から『内股になりながら腕で股間周辺を隠しつつ海にダイブする』1体のモンスターが目に入った。
そしてその光景を見てから直ぐに叶の方に顔を向ける。
「ああ、そうだ。あのモンスターの撃退法方は
『モンスターが履いている褌を脱がす事』
だ」
「…まさかの配信BANギリギリの方法だった!?
あのモンスター、見た目よりも撃退方法の方が精神的にも配信的にもダメージがデカいとかマジで最悪なんだが!?!?」
俺の爆弾発言に叶が本気でビックリしている。まあ無理もない、いきなりあんな変態モンスターの褌が弱点だから外せなんて言われたら俺でもこんなリアクションをする。現に3台分のドローンのコメントも荒れに荒れているし中には配信がBANされないか心配しているコメントもある。
だが、今はそんな事を言っている暇はない。
「…だがな叶よ、現状あのモンスターを撃退する方法がコレしかない。
覚悟を決めろ、配信を気にする余りに死ぬつもりか?」
俺がそう言うと、叶は苦虫を噛み潰したような顔をしながら弓を構えてモンスターを狙い始める。
「…わかったよ俺はなるべく矢で褌の布を切る方向で撃ってみる。
渉はそのまま近づいてきた個体の対処をしてくれるか?」
「…了解、しくじるなよ」
俺達はそう話すとお互い戦闘態勢を整える。
そして俺達はマジで地獄の様な裏ルートを刀狩りならぬ褌狩りをしながら爆走するのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…よかった…上手く運転できた…」
「…数日は魚介系の料理はひかえよう…」
「(´⊙ω⊙`)チーン」
「いや、一二三がまだ固まってるよ。どれだけショックだったんだ?」
あれから2時間、俺達は無事石橋を渡りきりポータルがある島の浜辺に到着した。
桜は余程緊張しながら運転していたのか大量の汗をかいていて色気が半端ない格好になっていた、叶も未だフリーズしている一二三の事を心配して安否を確認しているし、俺も今回の件で数日は魚介系の料理はひかえようと考えていた。そんな光景を3台のドローンが映していて様々なコメントが流れている。
なお目的のポータルは俺達の目の前にあり、今俺達はポータルの力が及ぶ範囲内にいる為何とかあのモンスターを振り切れたのだ。
「…ハッ…叶あの変態は?」
「あ、起きた。あのモンスターは俺と渉で何とかしたよ。因みにアレが戦利品になる…かな?」
俺がそう考えていると、どうやら一二三が目を覚ましたようだ。そして叶と会話しながら叶は砂浜に無造作に積み上げられた布の山を指を刺す。
「…何あれ?」
しかし、一二三にはなんなのか理解できないようだった。
「あ〜…アレだ。必要だったから狩りに狩りまくった奴らの褌の山だ。ざっと50匹位かな」
「いや、よりにもよって何故にそれを狩ったの?」
「叶、話を端折り過ぎだ。一二三、あのモンスターの褌を狩ったのはそれが撃退方法だったからだ。後50匹じゃない、二人合わせて74匹分の褌であの山はできている」
「いや、もっと混乱してきたんだけど!?」
叶が一二三に説明をしていたので、俺も補足の為に話に割って入ったら更に一二三を混乱させてしまった。
「…3人とも、取り敢えず今日はもうか渉の拠点に帰ろう?
流石につかれっ……」
そんな事を話しているとエイセンに乗っていた桜がこちらを振り向いてそう言う。
しかし、話の途中でこちらを向いていた顔がどんどん驚愕した時の顔になっていく。
「…?何をみているの?さく…」
更に一二三は桜の見ている光景が気になったのが桜の見ている方向をみて、桜と同じく固まった。
「うぉ、どうしたんだ!?一ふ…」
「何だ?何が起きて…」
俺と叶も急いでその場で振り返って桜の見ていた方を振り向く。
そしてそのまま体が硬直した。何故なら…
『ギョ』ビシッ
あのモンスターが、小脇に珊瑚やフジツボがついた箱を小脇に片手で抱えながらまるで久しぶりに会う友人への挨拶みたいな感じで手をあげながら海から出てきている光景だった。
但し褌を巻いていた場所には海藻みたいな物で隠したスタイルの個体だった。
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