第109話
ギュラギュラギュラギュラ…
「「「「………」」」」
移動する速度は変わらないが、俺達は全員水柱から出てきたモンスターを見て絶句していた。
空中にいて月明かりで照らされながら見えたそのモンスターは人型で全てを壊しそうな頑丈で筋肉質なのがハッキリとわかる体格。
武器などは一切持たず、また海の中を移動する為か最低限の服装しかしていない。
そして最大の特徴として…
『ギョ』
頭が『オジサン』と呼ばれる魚だった。
「…て、お前かい!?」
空中にいたそのモンスターが俺達が通った後の石橋に綺麗に着地したのを俺は確認しながらそう叫んだ。
そう、この海から出てきたモンスターはまさかの旧歌舞伎座ダンジョンで出てきたあのムキムキの成人男性の体を生やして、しかも何故か白色の褌のみの姿をしたあの変態モンスターだったのだ。
そして…
「「き…キャー!?!?」」
「へ…変態だ!?」
このモンスターを初めて見る人にはかなり刺激が強すぎる。
一二三と桜はまるでサスペンスドラマが如く悲鳴をあげて、叶は本気でびっくりしていた。
『ギョ!』
そして石橋に着地したモンスターはそのまま石橋を上を走り出し、俺達を追いかけ始めた。
「何あれ?モンスターなのかな?食べられる?煮魚?焼き魚??」
「いかん、あまりの衝撃に一二三が真顔になってバグってる。アレが食べられるとか流石に考えちゃいけないラインの事を考えちゃってるよ」
更に荷台にいる叶達の会話に加え、さっきから俺の背中に痛いくらいの力で抱きついてきてめちゃくちゃ震えている桜。
正直に言おう、大惨事だ。
そして俺はそんな状況の中、とある重要な事を思い出した。
「…叶、俺はこのモンスターを知っている。そしてとても重要な事を思い出した」
「…すまん、聞きたくない」
俺の言葉に叶がそんな言葉を返した。
だが、このモンスターが出てきたと言う事はもしかしなくてもかなりやばい状況だった。
何故なら…
「こいつら、1匹に見つかったらその後に何故が同じモンスターが大量に襲ってくるんだよ」
ズドドドドドドドッ…
バチャバチャバチャバチャバチャ…
『『『『ギョギョギョ!!』』』』
「(´⊙ω⊙`)ウソーン」
「ヤバい、余りの酷い状況に一二三が変な顔をしてフリーズした!?」
このモンスター、1匹でてきたら間違いなくその後に同じモンスターの大群が押し寄せてくるからだ。 。
その証拠に俺がそう言ってから直ぐに周りから水柱を上げて出てくるオジサン頭のモンスター達、そして後方の石橋に着地して更に追いかけてくる。しかも走って追いかけくるだけではなく周りからクロールやら犬掻きやらバタフライやらで泳ぎながらすごい速度で俺達に迫ってくる大群もいる。
対してこちらは運転している俺と荷台にいる叶は何とかまともに動けそうだが、叶と一緒にいた一二三はどうやら完全に動けなくなってしまったらしい。
桜も先ほどと同じく震えながらしがみついたままだ、このままだと大群で向かってきているあのモンスター達を叶一人で対処する事になる。
(…なら、やる事は一つだ)
俺はそう思いながらしがみついている桜を見る、幸い桜は一二三みたいに完全には動けないわけではない。
「…桜、お前原付とか運転できるか?」
「…遊園地のアトラクションで似た様なヤツは運転した事あるけど…」
俺は桜にそう言うと、桜はそう答えた。
そして桜は俺が何を言いたいのかを理解したのか勢いよく体から離れる。
「…いやいやいや、もしかしてオレに運転を変われって言うつもりなの!?」
桜は離れてから直ぐにそう叫んだ。
「そのまさかだ、幸い道は直線だから速度だけ維持していてくれればいい」
そして俺は桜の叫びに肯定して返事をする。
「いや、流石に…
「一二三が動けない今、周りのモンスターと戦えるのは叶と俺だけだ。流石にこの量のモンスターは叶一人は無理がある、だからこのモンスターの事をある程度知っている俺が一二三の代わりをするのが最適解なんだ。頼む!」
……ああ、もう!どうなっても知らないよ!!」
桜がそう言うと少し立ち上がり俺の席と変わろうと動いてくれた。
俺も桜の動きに合わせて器用に運転席を離れ、その席に桜が座る。
そして桜は緊張した顔になりながらもエイセンを運転し始めた。
そして俺はそれを見届けると急いで叶に声をかける。
「叶、一二三を前の席におくぞ」
「渉!?…了解!」ビュッ
叶は運転をしているであろう俺がいきなり声をかけてきたのに一瞬ビックリしていたが、俺がしたい事を理解すると構えていた弓を放ってから一二三を一緒に桜が座っていた席に移動させる。
そして俺は空いた叶の隣に急いで移動した。
「叶、現状はどう?」
俺がそう言うと、叶は更に弓を構え直す。
「最悪の一言、これを見てみろよ」ビュッ
叶はそう言うと追ってくるモンスターに矢を放つ、その矢は綺麗にモンスターの右肩目掛けて飛んでいき、そして…
『ギョ!』
ツルンッ
放たれた矢は何故が体を滑る様に右肩を外して明後日の方向に向かって飛んでいった。
「この通り、全身が謎の滑る液体でコーティングされているみたいでな、さっきから何十本も撃ってるのに刺さりもしないんだよ。
お陰で1匹も仕留められないどころか足止めにすらなっていないんだよ畜生が!」
叶はそう叫ぶ、確かにこのモンスターはヤバい。矢が効かないのであれば一二三のスリングショットも効かない可能性がある。
遠距離武器無効とはとんだ変態で最悪のモンスターだ。
だが、幸い俺は知っている。
「叶、俺はコイツらを知っている。だから今から話す事を聞き逃すなよ」
このモンスターの撃退法を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます