第86話

「…お前、アホか?」


「…流石に擁護できないね」


俺の言葉に真顔でそう言われてしまった。

まあ、突拍子もない質問だから仕方がない。だが、これは必要な事だ。何故ならこれから起こる事に対して少しでも衝撃を緩和しないといけないからだ。


「叶、残念なから俺はバカじゃない。むしろ俺はまともだ」


「いや、お前は色んな意味で狂人だよ」


「ブッ」


俺が叶に答えると、叶に何故か罵倒されてしまった。後、桜は吹き出すのをやめなさい。地味に傷つくから。


「…まあ、狂人うんぬんは置いておくとして、さっきの質問は本当に聞かないとダメな質問だったんだ」


「…ッ…ッ…、どっどうゆう事だい?」


震えながら声を殺して笑っていた桜がなんとか気持ちをなだめて俺に聞いてくる。

俺は結構傷ついたが仕方がないと割り切り、地面を数回足踏みする。


「…は?」


「な…んだ…?」


すると俺の後ろの壁が深い霧の様に包まれる。その光景に2人は驚きながら凝視し、ドローンに付いているスマホに映し出されたコメントは突然の状況にざわめいている。


「…この世には、『戦闘系スキル』『補助スキル』『その他のスキル』の3つのスキルの枠組みがある。…だか、実は4つ目のスキルの枠組みがあるんだよ」


俺はその光景を見ながら言葉を続ける。


「そのスキルの枠組みに分類されるスキルの保持者は歴史上の人物や俺を含めても片手で数えれる程度しかいない。

そしてそのスキルの枠組みのスキルは総じて3つのスキルよりも強力で扱いが難しい」


俺がそう言うと霧が晴れ始めた。


「…ハァ?…ハァアアアアァアアア!?!?」


「…何…これ…?」


2人の目の前に広がるのは洞窟の壁では無く綺麗な青空に眩い太陽と美しい湖、そして教会の様な建物だった。

叶はその光景に口を限界まで開け驚きの声をあげ、桜はむしろフリーズしている。それは彼女のドローンと叶のドローンに映し出されているコメントも同じみたいで完全にコメントの流れは止まっていた。

俺はその光景を見て、口角を上げる。


「そのスキルの枠組みの名前は『Errorスキル』、もはや都市伝説扱いの代物だ。そして…」


俺はそう言うと2人の前に歩き、両手を広げる。


「これが俺の最大の秘密であり俺の技術の全てと言えるのスキル。

Errorスキル『湖岸の古びた狩人の拠点』、俺の夢を体現する為の移動できる拠点を展開するスキルだ。

先ほどの疑問の答えは全てココにある。故に全ての疑問を解決する為に今からこの拠点に一緒に入ってきてもらうぞ。

…あ、言い忘れていた」


俺はそう言うと、唖然としている2人に右腕を突き出す。


「『歓迎しよう、夢を見る愚か者どもよ。ようこそこの残酷で美しい世界で数少ない我々の居場所マイホームへ』」


俺はそう言うと、その場で振り返り拠点に入るため歩き出した、


(いやー、このセリフ一度は言ってみたかったんだよね♪)


『テラフォーマー』に出てくる名言の一つが言えて内心テンションが高くなっている状態で。



〜〜 拠点内 〜〜



「マジか…キチンと風が吹いてるし太陽の熱も感じる…」


「こっちも、湖の水は本物だね。実際に触ってみたけどキチンと水の波紋も水の冷たさも感じるよ」


あの後フリーズから覚めた二人は俺の後を追い、周囲を探索しながら付いてくる。二人のドローンもまるでせき止めていた水が流れるかの如くコメントが流れ、何か金額が書かれた色付きコメントも大量に写し出されていた。

更にポーチに入れていたスマホの通知の時の振動が途切れない。誰かは何となく分かるが今はそんな事は考えないようにしよう、下手したらマジであの子の『オハナシ』で今日が潰れてしまうかもしれないから。


「てか、二人ともはしゃぎすぎだろ。確かに写真映えする光景だけどさ…」


そう言いながら首を動かして後ろを確認しながら歩く、後ろはやはり二人によるこの空間の実況をしながらこちらに向かって歩いてくる。

予想していた事だがやはり配信者を拠点に入れたらこうなるだろうなとは思っていたが、まさか此処まで盛り上がるとは思わなかった。


「まあ、いいか。それで彼らの配信を見ている人が喜んでいるのだから」


俺はそう言いながら建物の中庭に入り、そのまま建物のドアに手を…あ、


「おい、二人とも。それには触らないでくれよ、後でのお楽しみなんだから」


「…!、す…スマン、はしゃぎ過ぎた…」


「ご…ごめん」


俺が振り向きながら中庭に置いてある『大き目の布が被さっている物』の布を剥ごうとして叶とそれを見ていた桜に俺は釘を刺した。

流石にいきなりメインディッシュには早い、ソレは最後に見せる奴だからな。


「まあ、気を付けろよ」


俺はそう言いながら建物の扉を開け、中に入る。


「…おい、なんだこの謎空間?」


「複数の扉にソファーに机に…後ろには壊れた石像?…あ、一つの扉の前に『アイランドキッチン』があるよ」


「しかも、よく見たら扉に(寝室)とか(銭湯 サウナ)とか(装備管理 車庫 整備場)とか書いてあるぞ…マジかよ…」


俺の拠点の建物の中を見て二人は唖然としている。

実は拠点がパワーアップしてもはや住めるレベルまで強化されたのだ。

追加された扉にはそれぞれ(寝室)(銭湯)(装備管理 車庫 整備場)(食料管理)の部屋が追加された。

特に(食料管理)の扉ができた時は扉の前にアイランドキッチンが出現して、まさかの料理まで拠点でできるようになってしまったのだ。

これはかなり嬉しい。栄養価が偏ると健康に悪影響しか与えない、美味しくバランスが取れた食事は狩りをする上で欠かせない要素だ。


「二人とも、こっちだ」


俺はそう言いながら二人を奥の(解体場 分解 資材管理)のシャッターの前まで誘導する。

2人は驚きながらも俺についてきて、俺の後ろに立った。


「…てか、何でシャッター?」


「気にするな」


叶の素朴な疑問を適当に流し、俺はシャッターを上に上げる。

ガラガラガラっとシャッターが巻き取られ、部屋の中の光景が見えてきた。


「…あ、俺の倒したヴェロルだ!」


「もしかして、ここに回収していたの!?」


そこにはモザイク必須な状態のヴェロルの死体が9体あり、無論穴だらけの死体や叶の折れた薙刀が刺さった死体もこの場にある。


「俺の拠点はモンスターの死体や素材になる物に触れば任意で拠点に送れるんだよ、重量や質量、数や形状全て関係なくな。そしてここで解体して素材にする、だから別に二人の死体は盗んだりとかはしてないよ。きちんと全部返すし、そちらが望むのなら解体も無料でするぞ?」


「いや、チートだろコレ」


俺が叶達の疑問に答えていたら何故か傷つく事を言われてしまった。そして二人のドローンのコメントも同じ内容のコメントで埋め尽くされている。チートは『暴食龍姫』みたいな戦闘能力やスキルが異常な存在の事だというのに、俺のどこがチートなのか分からない。


「まあ、別にそれはいいとして…」


俺はそう言いながら真顔で二人に向き直る。そして緊張が張り詰める空気になり、そして…


「二つ目の疑問の解決したいから、昼飯作っていい?」


そう言うと、二人共は何故かその場でこけた。何故だ?

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