第85話 修正版
〜〜 東京スカイツリー展望デッキ内ダンジョン 浅層 約14㎞地点の帰還用ポータル 〜〜
「うし、無事についたな」
「あの後、特に何もなく来れて良かったね」
「ああ、俺の武器も壊れかけだし助かったわ」
俺は全部の死体を拠点に回収すると、叶や桜に死体はどこにいったと言われてしまった。
双方のドローンについているスマホに流れているコメントも『ファ!?消えた!?』とか『死体が消失した!?』とか俺の拠点の素材回収能力に困惑しているようだった。
確かに俺は何も説明も無くいきなり死体を拠点に消える様に全部触って回収したのでこの反応は当然だと思う。
取り敢えずその場はこの場所に着いたら説明する事で話を納めて、今目的地に到着したのである。
そして俺は目的地の洞窟に入って直ぐに腰のポーチから自分のスマホを取り出し、時間を確認する。
「…今の時刻は11時42分、予定していた時間よりも早いな」
「へえ、そうなんだ」
俺がそう言うと、桜は不思議そうな顔をした。
俺の考えだと戦闘をしつつ移動してこの場所に13時に到着すると予測していた。
しかし、それをこんなにも時間を短縮できたのであれば昼休憩をしつつさっきの事を説明できる。
「んで、到着したから改めて聞くけどよ。さっきのは何なんだ?」
「確かに、オレもそれは気になっているよ」
俺がそう思っていると後ろから入ってきた叶と桜がそう言ってくる。
「…そうだな、約束だ。説明するよ」
俺はそう言うと、洞窟の壁に背中を当て、叶達に向き直った。
「説明をしていなくてスマン。あれは俺のスキルなんだ」
「…ああ、そういうこと…」
「なるほど、法律の適用内だから言えなかったのか」
俺がそう言うと桜と叶、そしてドローンから流れているコメントが俺の言いたかった事を察したようで、皆納得していた。前にも言ったが俺には特殊な法律が適用されている、その中には俺のスキルやジョブの情報を安易に開示しない事が厳命されているのだ、故にあの場では何も話せなかった。
しかし…
「だが、素材の売却問題がある。それに…」
俺はそう言いながら二人のドローンを見る。
「配信にモンスターを回収する光景が映った以上このスキルについて話さないとダメだ。
後々追求された場合、更に色々な事の説明がややこしくなるし俺自身キチンと説明しないとこの狩りにしこりが残ったまま戦う事になってしまう。それが原因で一瞬でもミスをしたら死にかけるのは1番身をもって体験している。
故に俺が使ったスキルに関しては言わさせてもらうよ。俺から言うのは法律的に大丈夫だから」
俺がそう言うと、二人とも真顔になる。このまま2人に黙っているのは申し訳ないし、この件がきっかけで何か拗れでもしたら大変な事になる。
故に俺は話すことにした。俺の最大の秘密を。
「叶と桜、二人とも今の俺のジョブやスキルは知ってるな?」
「ああ、個人情報だから詳しく言えないが確実に把握しているよ」
「おう、俺も知ってるぜ」
俺がそう言うと、二人とも真顔になりながらも答えてくれる。そして二人のドローンのコメントはまた早い速度でコメントが流れ始めた。
無理もない、俺のジョブやスキルはかなり重要な情報だ。知っているのは国かギルド、俺の家族である父さんに大神さん達とこの2人だけだ、結構この情報を知りたい人は多いだろう。
「2人とも知っているのなら話は早い。
確かに俺のスキルやジョブは2人の知っているので間違いはないよ、表向きは…だけどね」
「…表向きは?」
「…」
俺の言葉に叶は黙り込み、桜は俺の言った言葉を口にしながら首を傾げる。
「すまないが、スキルの説明の前に3つ確認しなければならない事がある。質問してもいいか?」
俺がそう言うと、2人は頷いて俺をみてくる。
「なら一つ目、俺はこのダンジョンに来る一週間前に2人に何て言ったか覚えているか?」
「確か…『ダンジョンには装備と回復薬以外は必要最低限で良いよ』だっけか?」
「うん、それはオレも言われた」
俺がそう言うと、2人は直ぐに俺の言った言葉を思い出してくれた。
そう、この2人にはあらかじめ一週間前に装備等の話をしておいたのだ。
俺はそれを聞くと、直ぐに二つ目の質問をする。
「二つ目、桜に質問だ。俺はこのダンジョンには何が必要だと言った?」
俺がそう言うと、桜は何かを考えて始めた。
「…確か、新型車両だっけ?道が荒れすぎているから新しい物を作る必要があるって言っていたよね?」
「おいおい、ちょっとまてよ。渉は俺達と合流した時も今も車両なんて持ってきてないぞ?」
桜が言った言葉に叶が反応する。確かに俺は今も合流した時も車両どころか装備と回復薬以外は持ってきていない。
「確かに、彼が必要だと言っていたのに、合流時に新型車両を持ってこないのはおかしいよね」
「そうだな。そもそも、東京スカイツリーのエレベーターに車両なんて乗るか?エレベーターが壊れるどころか持ち込みすら無理だろ?」
そう言いながら話し合いを続けるする2人。確かに作った『アレ』は軽く2トン近くある。正直に正面からスカイツリーに持ち込もうとすれば確実に止められるか通報される。
普通に考えて無理だ…普通なら…だ。
「…2人とも、話し合い中にすまないが最後の質問はいいか?」
2人の話し合いが加熱しかけていたが、俺の一言でそれが中断される。
そして2人は疑いの目で俺を見始めた。
「ま、最後まで話を聞けって。全部解決するからよ」
しかし、俺はその視線を気にしない。それよりも気になる事がある。それは…
「んじゃ、最後の質問だ。
2人とも、『自分にしか見えないスキル』があるって言ったら信じるか?」
俺がかつて優香さんに聞かれた質問を2人に投げた。
そう、俺は最大の秘密であるこのスキルを世の中に公開する事の方が気になって仕方がないのだ。
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