第84話
〜〜 しばらくして 〜〜
『ギャオ!』
「よっと」
ジャンプして飛びかかってきたヴェロルの攻撃を軽く横に飛んで回避する。
あの後周囲を警戒しながら進み、目的地の約1km位の地点まできた俺達。
ある大岩を迂回しようとしていたら、急に聞き覚えのある声が真上から複数聞こえ始めた。
そしてその声が止むと同時に岩の上から9匹のヴェロルが俺達の頭上付近に落ちてきたのだ。
無論俺達は各自別々の方向に回避をして避けたが、そうしたらアイツらは着地後直ぐにの3匹ずつに分かれて俺達を個別に襲いだしたのだ。
「フッ」
ズシャッ
『クォ…ッ…』
しかし、俺達は伊達に何度もダンジョンで戦ってはいない。
故に俺は回避して直ぐにまた足に力を入れてそのまま武器で頭へ槍のように突きを放つ、頭に深く刺さったそれが致命的な一撃となり1匹目を倒した。
『クオッ!』
『クッ!』
そして俺がまだ一匹目から武器を抜いていない隙を見計らって残りの2匹が時間差で同じ位置からジャンプしてが俺に襲い掛かる。
「…フン!」
ブンッ
『ギャ…』
ブシャ…
『ガ!?』
しかし、俺は焦らずそのまま両手で武器を持ち振り回そうと力を入れる。するとまるで豆腐を切るようにスパッと頭を横から切れるみたいな感じで横から武器が抜け、武器は勢いそのまま空中の2匹の内の1匹の腹に斧のように深く食い込み、そのまま後ろで空中にいた2匹目を巻き込むように吹き飛ぶ。
『…ォ…ォ…』
『ガッ!?』
そして腹から血やら内臓が出ている2匹目が上に乗っかっているため動きにくくなっている三匹目が完成、俺はそれを確認すると改めて武器を構えて走りながら勢いよく3匹目に突きを放つ。
『ガッ…』
ズィシャッ
そして1匹目と同じく3匹目の頭にも致命的な一撃をお見舞いする。こうして3匹目を倒した俺は急いで武器を頭から引き抜き、もはや虫の息の2匹目の首に狙いをつける。
「…」
『ォ…』
グチャ…グチャ…
俺は狙いを付けて首に何度も武器を斧のように振り下ろす。何度も何度も叩きつけていると3匹目も耐えられなくなり絶命した。
「うし、これでOK。…二人は大丈夫かな?」
俺がそう思い周りを見ると、丁度叶が刀で2匹目を一刀両断で薪のように縦に割るように倒している場面を視界に収める。
叶の近くにはすでに死んでいる1匹目の首に『折れた薙刀』が刺さっていて、その近くで3匹目が叶の様子を見ている。
そして叶は3匹目に振り向き、そして刀を上段で構えた。その行動に3匹目のヴェロルも覚悟を決めたのか、叶に突撃をしていく…が、
「…、『置楯』!」
ズガンッ
『グャ!?』
ガンッ!
叶はタイミングを見計らい、置楯と叫ぶ。すると叶の目の前に地面から生えるようにぶ厚い木製の壁が生えてくる。
これは叶の2つのスキルの内の1つ、『置楯』だ。
『置楯』は叶がスキルの名前を叫ぶと約0.5秒で叶の正面の地面から木製の全身を隠せるサイズのぶ厚い壁が出てくる戦闘系に分類されるスキルだ。壁も木製なのに防御力は現在叶が着ている防具の防御力が反映される為、しっかりと防具を固めればかなりの防御力になる。しかし一度に1枚しか出せず、一枚目を出したままだと2枚目が出せないデメリットもあるスキルだ。
だからこそいきなり現れた壁に3匹目が対処ができずに勢いよくぶつかり、そのままのけ反る。そして叶を守った壁は出た時と同じスピードでまた地面に戻り、隠れていた叶が姿を現す。
「ウラァ!」
スパンッ
『ガギュ…』
ブシャー
そして叶はまた大声で叫ぶとそのまま前にでて上段に構えていた刀を振り下ろす。3匹目はのけ反っていた為、それを回避する事はできなかった。そのまま3匹目のヴェロルは叶に縦から竹を割るように綺麗に2枚になって絶命した。
「…やば、この刀もあと数回しか持たなそう…」
しかし、叶は倒したヴェロルよりも持っていた刀の方に意識を向けている。
(まあ、無理もないか。『常時全力攻撃』のせいでスグに武器を壊すのがアイツの悩みだもんな…)
叶の2つ目のスキルは『常時全力攻撃』だ。こいつは常に全力で攻撃してしまう戦闘系スキルだ。
このスキルの長所はどんな場合でも常に全力で攻撃できる所だ。
コレだけ聞くと結構いいスキルのように聞こえるが短所がヤバい。
短所は力の加減ができないから叶の持つ武器が高頻度で壊れてしまう事だ。
これのせいで叶は長期戦と連戦がかなり難しい、何故なら叶が無事でも武器が壊れてしまう可能性が高いのだ。武器が無いとモンスターに攻撃できる手段がない、故に叶の戦闘スタイルは一刀両断など一撃で倒して武器の消耗を極力減らすスタイルだ。
(…、今回の戦闘で薙刀は壊れた…やはり叶にも装備を作らないとな…)
叶が配信しているドローンに生存報告をしているのを見て俺はそう思う。今回叶の戦闘を生で見て確信したのだが、本当の意味で叶が全力を出せるようにするためには間違いなく『Monster Hand Live』で装備を作るしかない。『置楯』のスキルも『Monster Hand Live』の防具なら更に硬くなる、いい事しかない。
「…最終的に決めるのは叶だがな…」
「「「何を決めるんだい?」」」
俺がそう言うと。後ろから桜の声が聞こえた。そして俺がその声に振り向くと、そこにはドローンを引き連れた桜が『3人』いた。
「おつかれ、相変わらず凄いスキルだな」
「「「いや、このスキルは燃費が悪いからあまり使いたくはないんだ」」」
桜達はそう言うと一つに重なるように合体して1人になる。
俺は更に桜の後ろを見ると、3匹のヴェロルが穴だらけになって絶命していた。
「いや、十分だろ。羨ましいよ、その『分身』のスキル」
「ふふ、ありがとう」
桜がそう言いながら照れ始める。
桜のスキルは3つ、その内の一つが『分身』だ。
『分身』は分身体を最大2体まで出すスキルなのだが、この分身も攻撃ができるのでマジで応用性が『鷹の目』よりも高いスキル。
この分身体は基本本体と同じ動きをするのだが、本体がこうしろと考えると簡単な命令ならその通りに動くことができる。
しかし、分身体は攻撃されたらスグに消えるため耐久度に難があるスキルらしい。後、かなり疲れるからあまり使いたくはないと言っていた。
正直十分だと思う。
「さて、モンスターの死体回収はどうする?置いていくかい?」
俺が考えこんでいると桜がそう言ってくる。
確かにこのままだと血の匂いで他のモンスターを呼びかねない、早めに回収をするのがベストだろう。
「うし、その件は俺にまかせろ」
俺がそう言うと桜は首を傾げる。そして近くに転がっていた俺が倒した2匹目と3匹目に触れるとすぐに消える、その様子を見て桜は更に困惑した顔になった。
「君は…どれだけ秘密を隠しているんだい?全く…」
桜がそう言いながら頭を片腕で頭を押さえ、彼女のドローンについているスマホはかなりの速度でコメントが流れていた。
しかし、俺は今はそんな事を気にしている暇はない。
奇襲とはいえ戦闘のせいで時間が掛かったのは事実、予定では今日で中層に行くはずなのだ。これ以上時間はかけられない。
俺はそう思いながら走って全員分のモンスターの死体を拠点に回収して回ったのだった。
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