第80話
~~ 7月 30日 銀座 銀座駅内ダンジョン ~~
「…すごいね、これは…」
「おう、俺も予想以上だわ。まさかコレがこんな威力があるとは…」
俺が座り込んでいる桜に寄り添いながらそう言う。
ここは俺が毎回のごとく来ている銀座駅ダンジョン。そして今日は桜に『ある物』を渡して試してもらったが、予想以上の威力に正直俺は困惑している。
「…と言うかいいのか?俺に真司さんの形見を『2つ』も使わせて?」
「別にいいよ。オレにはそれしか思いつかなかったから」
俺が手を伸ばすと、桜はそのままその腕を掴み立ち上がる。
「…とりあえず、動けそうなら移動しようか。人が確認できるだけで8人、こちらに向かってきてる」
「…『鷹の目』で周りを見たんだね。了解、今すぐ移動しようか」
俺が『鷹の目』で周りを見る、すると騒ぎを聞きつけたのか周りから人が集まってくるのが目に入った。
その内の何人かはドローンを使っているので動画配信者が混じっているのは確実、変に絡まれると今後の予定に影響が出るのは確実だ。
俺と桜は急いでその場を立ち去った。
『おい、何だこれ?』
『何だろう、この跡とこの穴は?』
後ろからそんな声を聞きながら。
〜〜 その後 銀座駅周辺 カラオケ店内 〜〜
「…取り敢えず此処なら安心だと思う」
あの後、桜とダンジョンを出て急いで着替えた。そしてゲートで待ち構えているであろう迷惑系の奴らをやり過ごす為にこのカラオケ店に来たのだ。
「へぇ、女の子をいきなり此処に連れ込むとか以外と経験豊富なのかな?」
「変な事を言うな、俺は今まで恋愛なんてした事ないわ」
桜のジョークに俺が反応する。すると…
「そうなんだ……ヨカッタ…」
何故か顔を赤くして俯いた。そして何かを言っていた様だが聞き取れなかったので気にしない方向で行く事にした。
「取り敢えず、何か軽食を頼むか。話さないといけない事もあるし」
「そ…そうだね!」
俺が部屋にあるメニュー表を持ちそう言うと、桜は慌てふためいた様に答えてきた。本当にどうしたのかがわからない、もしかしたらさっき使った薬が女性限定で何か副作用的な現象を引き起こしている可能性がある。
(ま、そこら辺は父さんに聞けばいいか)
俺はそう思いながらメニュー表を見ている桜の横顔を見ていた。
〜〜 しばらくして 〜〜
「…つまり、真司さんも俺と同じ『地図』と『鷹の目』を持っていたのか」
「うん、それと『マルチタスク』の三つスキルでこの地図を書いたんだ」
「それはすごいな、最高の地図埋めスキルの三種全部持っていたのかよ」
桜が山盛りポテトを食べながら持ってきていたノートを手に取り、そう言う。
どうやら桜の死んだ兄さんである真司さんスキルは『地図』『鷹の目』『マルチタスク』の三種類であり、それはまさに地図埋めに関して最高峰のスキルを全部持っていた人物だったそうな。
『地図』は俺が持っているから説明は省くが、次の『鷹の目』は俺が新しく手に入れたスキルであり汎用性抜群のスキルだ。
『鷹の目』は自分の視界から約1km内のすべてを視認できるスキルで集中すれば拡大収縮思いのまま、更に普段の視力も2.0で固定され動体視力も強化され、風速までわかるおまけ付きの汎用性の高いスキルだ。
そして『マルチタスク』、これがヤバいスキルだ。
『マルチタスク』は右脳と左脳で別々の事を100%の実力で行動を行えるスキル。
例えば右腕で戦闘しながら左腕でフラッシュ暗算が完璧に出来る。つまり1人で2人分の行動を取れるスキルだ。
つまり真司さんはまずドローンを複数台用意して右脳だけでそれを操作、左脳で『地図』のスキルで映し出された映像の地形を記憶する。移動の際は『鷹の目』を両方の脳で同時に発動して、植物や鉱石などの調査をしつつモンスターの警戒を怠らないようにする。これを繰り返して得た情報をノートに書いていたのだろう。
まさに奇跡的なスキルの噛み合いだ。『鷹の目』の弱点を突かれなければそうそう死ぬ事はない、つまりその弱点を突かれて真司さんは死んだのだ。それは…
「つまり,真司さんは後ろからきている人物に気がつかなくて挟み撃ちみたいな状態になる様にトレイン行為をされたんだな?」
「…うん」
背後を取られやすい。これが『鷹の目』の弱点だ。
『鷹の目』は確かに遠くを確認できる。しかし確認とは言ってもあくまで前方の光景だ。
人間の視界は前方の光景しか映していない。周りを見るには首を動かすか体ごと振り向くしかない。しかも集中すれば更に遠くを見る事ができる分、背後の視界を更に確認できなくなる。
これは俺がスキルの検証を行った際に気がついたデメリットであり、おそらく死因はまず隙だらけの背後からトレイン行為を行い、振り向いてから今度は正面だった方からまたトレイン行為をしての挟み撃ち作戦だろうと推測できる。
実際、桜はそれを認めた。
(なら、同じスキルを持っている俺も気をつけないとな…)
俺もいつ同じ手を使われて挟み撃ちにされるか分からない。注意しようと心に誓った。
そして、俺は持っていたアタッシュケースとは別に持っていたカバンから借りていた物を取り出す。
「そうか……なら、これは大切にしな。真司さんの最後の誕生日プレゼントなんだろ?俺に使わせる為だからって軽い気持ちで貸すんじゃないよ」
「うん、ありがとう」
俺はそう言いながら『小判サイズの水色に発光している角』を取り出し、桜に渡した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます