第79話

「ああ、ヤバい。これが全て解決しないと最悪禁層まで八ヶ月はかかる。早急な新型車両を作る必要がある」


俺の言葉に桜はうんうんと頷く。


「わかった、こちらも違約金の件が後一ヶ月位で解決しそうなんだ。なら動くなら…」


そう言いながら桜はスマホを取り出し、何かのサイトを閲覧する。


「8月3日だね、1日と2日はどうやらイベントでダンジョン自体は入れないみたいだしね」


そう言いながら桜はサイトを見せてくる。そのサイトは東京スカイツリーの公式サイトで、そこには7月31日~8月2日の3日間はイベントがありダンジョンの入ることを禁止する旨が書かれていた。


「OK、それまでに準備をしておく。俺は買いたい物ができたからこのまま解散でいいか?」


俺がサイトを見て、そう言うと桜は笑顔で頷いた。


「…ングッ…んじゃ、会計は俺が払う。そっちも頑張ってな」


「ちょっと待って」


俺が残りのコーヒーを飲み干し、伝票を手に会計に行こうと立ち上がると桜が声をかけてくる。


「なんだ?」


「最後に聞きたいんだ。今から何を買いに行くの?武器とか?」


俺の顔を見ながらそう言う彼女に俺は笑顔でこう言った。


「プラモデル」


「…え?」


「プラモデル」


俺は彼女のぽかんとした顔を見て満足感に満たされたので笑顔のまま会計に向かった。

時間がない、今すぐお店に向かい例の物を見つけなけば。







~~ 7月11日 古き狩人の拠点内 中庭 ~~



チュドーン!!


「アギャー!?!?」


俺は試していた試作品が爆発し、そのまま吹き飛んだ。


「…やば…い…」


吹き飛ばされた衝撃で頭を打ったのか、目の前が霞む。しかし俺は残る意識で急いで右腕に持っていたアルミ製の箱を開け、中の1本を取り出し手首に当てる。


プシュッ


ボキッバキッボキッボキッバキッ…


「…改めて思うが、これはマジで一般流通はやめた方がいいな」


薬を打ち、1秒もかからずに体中からありえないほどの軽いが痛そうな音が鳴り響き意識が元に戻る。

そして立ち上がると着ていた作業着がボロボロになっている以外は体に異常はない、むしろ疲れが取れているから調子がいいまである。

だからこそ、これはヤバい。マジで売る人物や組織をキチンと決めておかないと本当に市場にある青色のポーションと量産型回復薬αの需要を駆逐しかねない。


「それは父さんたちに任せるか。今は…」


俺はその件を父さんたちに任せる事で一旦この件は強制的に解決させた。しかし、今はそれどころではない。

俺は急いで爆発した場所を見る。そこにはエンジンから爆発して壊れて動かなくなった改造された中型バイクが一台、今だ燃えながらそこにあった。


「消火活動だな」


俺は急いで買ってきた消火器を取りに走る。いくら拠点内だといっても二次被害は勘弁したいと思ったからだ。


~~ しばらくして ~~


「…原因はやはり燃料に耐えられ…いや、もしかして『強化に使ったハイエナコックローチ』か?」


俺は消火した後、熱が冷めている事を確認してから出火原因を調べた。

そしてエンジンのピストンの部分が一番ボロボロで、そこは一番Gで強化した部分だ。

そこが壊れているなら、おそらく使った素材自体が耐えられなかったのだろうと結論をだす。

前にも言ったが俺の手作り燃料である低濃度血混バイオエタノールは車やヘリに使える品物だ、中型バイクにも使えて当然…なんだが…


「やっぱり、さすがにこれに使うんだったらハイエナコックローチはダメか。『移動方法が違うもんな』」


俺はそう言いながら立ち上がり、建物の中に入る。そしてソファーに座り、隣に置いてある『テラフォーマー』の設計図の本を手に取る。


「これは現実にある乗り物を参考にして作られた物だから別にGでも作れると思ったんだがな…」


そしてあるページを開くと、そう呟きながらまた机を見る。

そこには買ってきたプラモデルを組み立てた物とその設計図が置いてある、そして俺はそれを見るとまた設計図に目線を戻した。


「イケると思ったんだがな…」


使った素材であるGは6本足で生活している素早いモンスターだ。そしてそれを使った場合Gの速度が足されるモンスターマシンができるが、現在作ろうとしている物はその速度が逆に足を引っ張ったのだと思う。おそらく生み出したエネルギーが足らな過ぎてピストンを余計に動かして負荷をかけたんだと結論を出した。

でなければ燃料からエネルギーを生み出すピストンが壊れる原因が思いつかない、つまりこのマシンを作る際にまた新しいモンスターの素材必要となる。


「Gはダメだった…ならどれならいいんだよ…」


俺の考えだが、Gで強化していた全ての部品を別のモンスターで強化すれば無事に完成すると思う。つまりまた初めから考えないといけなくなってしまったという事だ。


「…ヴェロルはアウト、ビックボアも論外…」


俺は一生懸命頭を回転させる、今まで狩ったモンスターを使った場合を考えたがそれは解決案にはならないと結論をだして更に別の案を考えていく、そして…


「…あれ、確か叶が面白い事を言っていたな…」


俺は前に学校で叶が面白い話をしていたのを思い出した。そして俺は急いで近くに置いてあった着替えからスマホを取り出して、叶に電話をかける。


《…はい、こちら今誰かの誘いの為に準備中の叶だよー》


「おう、その言い方は叶だな。今いいか?」


《OK、今休憩中だから別にいいよ》


俺が電話をかけると皮肉っぽいセリフを言いながら叶が電話に出た。


「話は他でもない。お前、この前日本橋の三井記念美術館前ダンジョンに『 』みたいなモンスターを見たって言っていなかったか?」


《ああ。いたよ?見た瞬間寒気が半端じゃなかったがな》


俺はそれを聞き、思いっきり手を握る。


「ありがとう、それが聞きたかった」


《いいよ、役に立てたなら…あ、言い忘れてた》


俺がそう言うと叶が何かを思い出したかのように…


《そいつ、サイズが原付くらいあるから》


最悪な情報を言ってくる。


「…まじ?」


《あと、常に5匹位で行動しているからマジで気持ち悪いから狩るなら気をつけてな。それじゃ、俺は最近販売された回復薬を買いに行かないといけないからこれで。また何かあったら連絡をくれよな》


そう言うと叶が電話を切る。

そして俺は叶との通話の内容にその場で固まってしまう。


「…取り敢えず、マジで対策していこう。完全にメタって完封するレベルで」


そして俺はギルドの建物に向かうべく装備や道具を準備し始めた。


「まったく。前回もそうだがどうしてこうもギリギリになるんかね?」


俺はそう呟きながら、手を動かす。今回は拠点もパワーアップしている、だからこそ前回以上に準備も入念にしなければならない。幸いにも武器や防具は準備できている、残りは食料と薬と乗り物だけだ。


「…あと、アレも桜に渡さないとな…」


そう言いながら俺は『四角い箱に入った小さい物』を見つつ準備をおえる。


「ま、それは後で連絡を取ればいいか」


そして俺は拠点から出る為、荷物を持ちながら歩きはじめる。目指すは日本橋にあるギルド系列のビル。


「さて、頑張りますか」


俺はそう言いながら拠点から出て、さらに歩いて目的地に向かったのだった。

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