第71話
~~ 5月 27日 秋葉原 裏道り pm 6時50分~~
「ありがとうございました~♪」
俺は『月の兎』でご飯を食べて、アンジーさんの言葉を聞きながら店を出てきた。
「結局鉄板ナポリタンとレモネードになってしまった」
そして俺はジャンク品を買うためお店に向かいながら、何故喫茶店のナポリタンはあんなに魅力があるのか考え始めた…が、
「…ん?」
俺はふと目の前の自販機の前に視線がいってしまった。
「…」
そこにいたのはで俺より頭一つ分身長が高い、野球帽にパーカーとジーパン、某有名メーカーのスニーカーを履いていて周りを確認しながら自販機を見ている人がいた。
「…しまった、チャージし忘れた」
そして自販機の前でスマホをイジって何かに絶望していた。
(…ああ、アプリにチャージし忘れたな…)
俺はおそらく自販機で飲み物を買おうとしてスマホのアプリにチャージをし忘れたのだと思った。
「…すみません」
「あ、はいこちらこそ…」
俺はその人の前まで行き自販機の前に立つ、そして小銭を入れ…
(取り敢えずウーロン茶でいいか)
ピッとボタンを押してウーロン茶を買う、そしてペットボトルに入ったそれを取り出すとその人の前に突き出した。
「ん」
「え?」
突然の行動にその人も困惑している。しかし…
(うわぁ、めっちゃイケメンやん)
俺はその人の顔を見てビックリしていた。その人の顔はかわいい系のイケメンと言えばいいと思う。
茶色の髪に黒の瞳、マジでかっこいいと思った。
「いや、お金をチャージし忘れたんだろ?やるよ」
「え…でも…」
俺は顔にビックリしながらもその人にお茶のペットボトルを突き出した。しかしその人はいまだに困惑顔だ。
「…」
「…」
そしてそのままお互い無言になった…その時、
「いたぞ!」
「しっしまった!?」
突然黒いスーツを着てこちらに走ってくる男性、そしてその声に目の前の人が反応してびっくりしていた。
「…」
しかし、俺は何度もダンジョンに潜っている、故にこの状況を冷静に見ていた。
(追われている?何故…いや、それよりもこの人の顔…)
俺は何故この人が追われているかと考えたが、この人の顔がまるで絶望した顔になった方が印象に残ってしまった。
故に…
「フンっ!」
ブンッ
「あだっ!?」
俺は持っていたペットボトルを走ってきた相手の顔面に投げ、相手も不意に投げられた物を避けられずそのまま顔面で受け止めてしまい、後ろに倒れた。
「逃げるぞ!」
「え!?」
そしてそのままその人の腕を掴み、引っ張るように走った。
「ちょっと!どこに行くんだ!?」
突然走り出した俺にその人は困惑顔になっいていた。
「逃げてるんだろ?」
「!?」
俺は喋っている場合ではないので簡潔に質問する。するとその人はまた驚愕した顔になった。つまり追われているのは確定、ならすることは一つだ。
「なら、そのまま走って駅でタクシーを拾って荒川まで行くぞ。あとスマホは電源を切っておけ。GPSで追跡されるぞ!?」
「…わかった!」
そしてその人は俺が腕を放すと自分で俺に並ぶように走り、スマホを取り出す。
(…話が分かる人でよかった)
そして俺はその人と二人で駅まで走った。
~~ 荒川区 自宅 pm 7時55分~~
ガチャンッ
「…うし、コレで問題なし」
「ハァ…ハァ…」
俺たちは結局タクシーが捕まらなかったのでそのまま電車で移動、自宅まで全力疾走して、ようやく自宅に入り込む事に成功した。
「ハァ…ッ、あっありがとう、助かったよ」
そしてその人は玄関で靴を脱ぎ、リビングまで移動した。そして俺も靴を脱ぎ同じくリビングまで行くとその人は俺に向かい合ってお礼を言ってくれた。
「いや、別にいいよ。俺が勝手にしたことだし」
「いや、お礼を言わせてくれ。お蔭でオレは助かった」
俺は別にそんなつもりは無いと言ったが、その人は笑顔で俺にお礼を言ってきた。こんな時もイケメンはマジで絵になるからズルイって思うわ。
「取り敢えず何で追われていたのか、聞いていいか?」
俺がそう言うとその人は顔を下に向けた。
「…そうだね、言わなきゃだめだよね」
その人はそう言うとぼそぼそと話し始めた。
「実は…オレ、無理やり結婚させられそうなんだ」
「いや、ドラマかよ」
俺はそう言う、マジで無理やり結婚させられるとかドラマでしか聞いた事が無い。
「はは、そうだね。ドラマだったらどれほどよかったか…」
その人は笑いながら話を続けた。
「いやね、オレは結構有名な製薬会社の社長直系の家族の1人なんだ。そして簡単にいうと他の製薬会社にハメられてね、現在多額の違約金を払うか会社を吸収合併するかの2択を迫られているんだ」
「…」
「それでね、相手は吸収合併を望んでいるんだ。そして今回その会社がうちの会社に圧力をかけてきてね、無理やり縁談を組まれちゃたんだ。それが嫌で逃げていたのさ」
「…」
「こんな事をしても変わらない事は分かってる。でもオレは…」
そういうとその人は震えはじめた。
そして俺は…
(やべぇ…話が巨大すぎて理解できなさそうなんだが!?)
流石に話のスケールがデカすぎて首を突っ込んだ事に後悔し始めていた。
「…ああ、そういえばまだ自己紹介がまだだったな」
そういうとその人は顔を上げ、帽子を取り来ていたパーカーを脱いだ。
そして俺はその光景に更に衝撃を受けた。
「は…はあ!?」
「オレの名前は月神 桜。『月神製薬』社長の娘で中学3年だ。よろしくな」
俺の目に前には茶色いウルフカットにかわいい系のイケメンフェイス。しかしそれに反するようにパーカーを脱いだら、大きい胸が目立つ無地のTシャツ姿だった。
「お…女の人!?」
「うん、オレは男性のような服とか胸がなるべく目立たなくなる服装を着るから男性に間違われやすいけど、れっきとした女性だな」
ハハッと軽く笑う彼女に俺は流石に面喰ってしまう。多分この衝撃はしばらく更新されないと思う。
「因みに縁談相手は相手方の社長の一人息子で40代の無職の男性だ」
「いや、それ犯罪!!」
訂正、簡単に上書きされてしまった。
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