第67話

「いや、本当になにコレ?」


掛け軸は全部で四つ、そして全てに俺が書いてある。

コレだけでも驚きなのだが、書いてある絵の服装も気になった。


「…もしかして、右から浅層、中層、深層、禁層の順番で描かれているのか?」


俺は掛け軸を見てそう思った。

掛け軸は右から順番に、


『海軍みたいな軍服装備で祭り衣装の馬頭と牛頭の群れに飛び込む浮世絵』


『同じ姿で割れてできた海の道を魚を避けながら進む浮世絵』


『別の装備で今度は夜の神社の鳥居を背に桜を見上げる浮世絵』


『和装軍服で骨を被った狐の化け物にスコップで相対する浮世絵』


だ。

そして禁層と思われる掛け軸の隣には扉がある。


「…よく見たら、4枚の内2枚の絵はアーノルド軍曹装備だな。他の絵もそれぞれの階層の装備だし、間違いはなさそうだな」


俺は掛け軸をしっかり見ると、アーノルド軍曹装備の絵がが2枚、探索者装備の絵が1枚、現在の装備が1枚で俺が描かれている。

と言う事は先ほどの考えは一様間違っていないと考えた。


「ま、今に考えても分からない。なら、次に進むべきだな」


俺はそう言うと奥にある扉まで歩き、手をかける。


「さてさて、中には一体何があ…」


ギイイッと音を立てて扉を開け、俺は今日一番の衝撃を受けた。


「…嘘だろ?」


そこは神社の中庭があった、しかしそこの中庭が異常な光景だった。

何故なら…























「何で…お前が…?」


そこには禁層にいたモンスター、つまりあの狐型の龍が頭と胴体が分離している死体があったのだ。


「おいおい、コレは流石に…」


俺は急いでその死体に近づく、そして真剣に確認した。


「ヤベェ、めちゃくちゃ保存状態がいいぞ!コレで新しい装備が作れる、興奮してきた!」


死体は間違いなくあのモンスターだった。しかも死体の腐食もない。

もはや、コレで装備を作ってねと言わんばかりだ。コレで興奮しない奴はいないだろう。


「さて、そうと決まれば回収しましすか!」


俺はそう言うとモンスターの死体に触り、拠点に入れた。

そして、後に残ったのは…


「お?あれは…嘘だろ、宝箱じゃないか!?」


死体で隠すように置いてあった宝箱が一つあった。


「マジか、ダンジョンで宝箱を見つけるのは初めてだぞ!」


俺は興奮しながらそう言う。実際、ダンジョンに潜り続けて今日まで宝箱は見つけていなかった。他の人がたまに見つけたと買取時に騒ぎになるのを数回見ただけで、実際にこの目で確認するのも始めてなのだ。興奮するなと言われても無理がある。


「よっしゃ、なら早速開けてみますか!」


そして俺は興奮気味に宝箱に近づき、その蓋に手をあて、勢いよく開けた。


ポアッ


「は?」


そして開けるとすぐに蛍のような色が七色の光の球体が浮かんで出てきた。そして、


スッ


「ウェ!?」


それが目線の高さまで上がると、いきなり俺の蓋を開けている腕に近づき、そのまま腕に吸い込まれていった。


「…」


あまりの光景に固まる。しかし感じる体温も体調も悪い所は一つもない。


「いったい何だったんだ?」


俺はそう呟きながら宝箱の中身を確認する。


「…狐の口面に…コレは…」


中には怒って牙をむく狐の口を表現した白く赤い線で装飾され、赤い糸に金色の留め金具が綺麗な口面に布に巻かれた大きい何かがあった。


「…取り敢えず口面は装備するか」


俺は取り敢えずこの口面を装備する、するとかなりしっくりくる感覚と共にまるでつけていない感覚が同時にきた。


「コレは…いいな」


息苦しさもなく、付けている重みもない。

正直、この口面は気に入った。何故なら機能的にもデザイン的にも俺の趣味趣向に完全にマッチしているからだ。

 

「ほんと、いいものを手に入れたな」


そして俺は口面を付けたまま、もう一つの物を両手で取り出す。


「…コレは…絵か?」 


持った感覚と大きさ的に美術館にあるような額縁に入った絵画に近い。

俺は不安になりつつも巻いてある布を外した。


「…向日葵?」


その絵に書かれていたのは向日葵の絵だった。

特徴としては花瓶の中に向日葵が5本、深く落ち着いたロイヤルブルーの背景が目を引く綺麗な油絵だと思う。

そして額縁も下の縁が若干焦げてはいるが絵には何も問題ないように見える。


「…いや、待てよ。こんな感じの絵を何処かで見たような…見なかったような…?」


何故か既視感がある物をテレビや教科書で見た記憶があり、あーでもないこーでもないと考えていた。


「…ん?」


しばらくそのままの体制で絵を見ながら考えていたが、急に入ってきた扉の向こう側から何やら大声が聞こえ始めた。


「あ、もしかして他の人も入ってこられるようになったのかな?」


俺はそう思うとまた絵に布を巻き、両手で持ち上げる。


「…そういえば、結局あの呼ぶ声は何だったんだ?」


そしてそう思うも、更に向こうからの声がどんどん大きくなっていくのが聞こえていた。


「まあ、また今度考えればいいか」


俺はそう言いながら、その声の方に荷物を持ちながら歩いて向かった。

しかし、俺は知らなかった。

あの光の玉の意味を、そして自分の体に起きた異変を。





~~side 無 ~~


古びた狩人の拠点の建物の中、ソファーの後ろにある石像が七色に光りだした。


ドサッ


そして光が収まると、今度はソファーの近くの机の上に1冊の本が音を立てて置かれていた。

そしてその本のタイトルは 


『テラフォーマー 《美しくも残酷なこの惑星で》』


果たして、この本が佐藤渉にいかなる影響を与えるのか、それは誰にもわからない。



~~~~~~



第一章 完







NEXT  夢を失いかけた者×集いし者達=黒曜石の悪魔


















佐藤渉/男



ジョブ



『職人』



『料理人』



スキル



『解体名人』



『採取&採掘名人』



『地図』



『鷹の目』



『(湖岸の古びた狩人の拠点)』










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