第61話
~?月?日 ×××~
ピ…ピ…ピ…
「ん…?」
意識が徐々にハッキリとしてくる、そして俺は耳に規則的に聞こえる音に違和感を覚えた。そして胸辺りの重みも気になってきて、ゆっくりと目を開け始めた。
「…Oh…これは某有名なセリフを言うべきだったかな?」
そして最初に見えたのは真っ白な天井、次に俺の腕に繋がれた点滴と心拍数を計っている機械。
そして…
「…で、なんでこの人いるの?」
「スゥー…スゥー…」
何故か椅子に座りながら俺の胸で寝ている私服の優香さんが居た。
俺の隣の机には優香さんの伊達メガネと花瓶がある、多分俺のお見舞いに来たのだろうと思った。
「…あ、そっか。俺、副作用で気を失っていたんだ」
俺は取り敢えず冷静に今の状況を整理しだした。
そして俺があの時、人体総変異の副作用とダンジョンによる疲れで気を失った事を思い出した。
「さて、気を失ったって事は今は一体何時間くらい寝ていたんだ?」
俺がそう言いながら付近に何か日にちを知る物が無いか探す事にしようとした…が、
「スゥー…ん?」
俺の動きに胸で寝ていた優香さんが目を覚ました。
そして起きかけなのに俺が目を覚ましているのを確認するとその場でのオッドアイの目を見開き、ガン見しだした。
「…」
「…お…おはよう?」
「…」
(いや、気まず!?)
流石にガン見し過ぎて気まずくなったので取り敢えず挨拶をしたが、優香さんは何もしゃべらすただ俺をガン見するだけだった。
そして俺は視界の端のベットの脇に何か紐みたいな物があるのを見つけた。
(あれ?これってドラマでよく見るナースコールじゃね?)
俺は多分この紐みたいな物はよくドラマとかで見た看護婦を呼ぶナースコールであると思った。
(…うし、看護婦を呼ぼう。そうすれば今日が何時なのか聞けるし、この気まずい空間もぶち壊せるし)
俺はそう思い、そのナースコールに手を伸ばし始めた。…が、
「ふん」
ブチッ
「何で!?」
優香さんが俺の動きに気が付き、何故かナースコールを俺より早く手に取って引きちぎった。
「…」
ガバッ
「ちょ…」
そしてそのまま千切ったナースコールをうしろ投げ捨てると今度は俺の両腕を押さえながら俺の上に覆いかぶさり、更に俺の顔をガン見しだした。
「ウェイ!?何この状況!?」
まさかの行動に頭の思考が処理落ちする。ドラマでこんなシーンは偶にだが見たことはある、しかし男女逆転でしかも年下にこんな事をやられるとは露にも思わなかったのだ。
「質問に答えてください」
「いや、俺の方がこの状況をせつめ…
「答えてください」
…あ、はい」
優香さんはそう言いながら更に顔を近づけてきて質問してきた。というかこの子力強くね?年下に腕を拘束されて動けないとか、結構傷つくんだが?
「何で、あんな危険な事をしたんですか?」
「…」
「答えて下さい」
いや、ふざけてこの行動をしていないのは理解できるよ?だって目があの時の洞窟の時と同じだもん。
取り敢えずこの状況はふざけたら何されるか分からない。なら真面目に答えるしかないと思った。
「いや、俺はだた大吾さんの夢を叶えたかったからだよ」
「それで自分が死ぬりす…
「死ぬリスクはあった。だが、あのダンジョンの内容は俺以外は攻略不可だと思ったんだよ」
…」
今度は俺が彼女の言葉を遮りながら言う。そしてこのまま俺は畳み掛けることにした。
「あのダンジョンは簡単に言うと、大量輸送と衣食住を確保しないと確実に詰む。しかし、ダンジョンの仕様がそれを許さない。
だが俺だけは例外だ。
それが全て揃っているだけではなく武器や防具、消耗品まで自作できるスキルが俺にはあった。
だから深層に到達した俺は覚悟を決めて禁層に全力で挑む決意をしたんだ。
この機会を逃したら、多分次は俺でも死ぬと思ったからね。
後、見たい物もあったし…」
「…見たい物…ですか?」
俺の言葉に首を傾げる優香さん。
「俺、大吾さんの夢を叶えた光景を見たいって思ってたんだよね」
「!?」
グッ
そして俺の発言に俺の腕をつかんでいる手に更に力が入る。
「…ッ、俺にもめちゃくちゃ難しいが叶えたいって夢がある。
だから大吾さんの夢を愚かな夢に思えなかった。
そして深層のあの仕様を見た時に俺は一瞬帰ろうと思ったんだよ。
でも、俺はあの日の夢を叶えたかった。叶えた光景を見たかった。
だから俺はがんばった。これが、理由だよ」
「…」
俺の言葉に更に力を入れて、俯く優香さん。…て言うかマジで痛い、この子どれだけ力が有るんだよ?
「…貴方は…グスッ…愚か者ですね…」
「…」
(やべ、泣き出した!?)
そして顔をまたこちらに向けた時には何故か泣いていた。
「他人の…夢の為に…あんなに…死にかけて…」
「いや、垂れてる。顔に涙が垂れてるって」
「どれだけ…私が…心配したと…!」
「話聞いてないよ、この子」
流石にこれ以上は流石に腕が痛みで辛くなってきたので拘束を解こうとした…が、
ドスッ
「逃ガストデモ?」
「いや怖!?いきなり泣き止んで真顔になるな!?」
体を動かそうとした瞬間、今度は膝で股関節を押さえてきた。しかも急に泣き止んで真顔になった。目に光が無い、マジで怖い。
「貴方ノ事ハ良ク分カリマシタ」
「すまん言葉がカタカナで言っている気がするんだが、気のせいだよね?気のせいだよね!?」
「貴方ハ目ヲ離ナシタラ駄目ナンデスヨネ?分カッテマス。デスカラ…」
いや、話が通じないしマジで怖い。今度は声のトーンが落ちてきたし、何より顔すれすれまで顔を近づけてきたし!?
「貴方ヲ今カ…
「何やってんだ優香!?」
…グハッ!?」
優香さんが何かを言いそうになったその時、目の前から優香さんが何かに吹き飛ばされた。
「本当に昔から気に入った奴がこうなると暴走する奴だなお前は!?」
「離シテオ父サン!今オ話シ中ダカラ!!」
「いや、離さん!今離すと歌舞伎界の大恩人が大変な事になりかねん!!」
首を何とか動かして声のした方を見ると雄二さんが何故か優香さんに羽交い絞めをかけて止めながら怒っていた。
どうやらさきほど優香さんが吹き飛んだのは大吾さんにやられたみたいだった。
「渉!目覚めたのか!?」
俺が唖然としていると今度は父さんが俺の所にきた。予想だがたぶん大吾さんと父さんは一緒に俺の居るこの部屋に同時にきたんだと思う
「雄二さん!ナースコールを!早く!!」
「はい!」
父さんはそう言われ父さんは俺の枕元を探す…が、
「な、ない!」
「何!?…ハァ!まさか優香!?」
「引キ千切リマシタ」
「優香ー!!」
優香さんが顔を怖い位にやけさせ、それに大吾さんが大声でつっこむ。
父さんは俺の近くでオロオロしだし、部屋の外から足跡が複数聞こえてきた。
ハッキリ言おう、
「何だこのカオス?」
俺はどうしたら分からなくなってしまった。
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