第58話
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この行動は世界中のみならず、戦っていたモンスターをも驚愕させてしまった。
ある者は自分の息子が死んだ事に衝撃を覚えた。
ある者は恐怖に飲まれ自殺を図ったと思った。
ある者は純粋に悲しんだ。
そして多くの人々は彼が自殺したと思った。
しかし、一部の人は疑問に思った。
何故自殺したのか?
あのジッポライターは何なのか?
どうして火が出る所から火じゃなく毒々しい色の針が出たのか?
そもそも彼が自殺する前に言った『人体総変異』とは何なのか?
『…Ga』
しかし、戦っていたモンスターは警戒しつつも力を貯めるのをやめない。
このモンスターは直感で気が付いているのだ、彼がまだ生きている事を。
そしてモンスターの警戒度が最高潮に高まったその時、
ゴボッ
いきなり彼の首の傷からから『赤黒いゼリー状の液体』が溢れ出る。そしてその液体は彼の全体を包み込んだ。
シュワシュワシュワ…
そしてゼリーの中でまるで炭酸水の様に泡が細かく弾け、彼の体が見えなくなった。
『Graa!』
ダッ
その光景を見たモンスターは直感で理解した、『彼は危険な存在』だと。
その為、モンスターは貯めていた力を解放、まるでトラックの様にそのゼリー状の液体に向かって走ったのだ。
そしてそれに至近距離まで迫った次の瞬間!
チュドーーン!!
バリバリバリ…
『GAaAaaAa!?』
いきなりゼリー状の液体が大爆発、そしてその爆発を中心に『赤い稲妻』が周囲に降り注ぐ。
そして、その爆発に巻き込まれてモンスターは逆に吹き飛ばされた。そしてある程度吹き飛ばされてから立ち上がり、モンスターは身構え構える。
しかし、纏っていた全ての骨は爆発の衝撃でヒビが目立つ位にボロボロになってしまった。
その状況にそれを見ていた人達は蜂の巣を突いたような騒ぎになった。
そして、モンスターは何とか立ち上がって彼のいた所を見た。
『Ga!?』
しかし、爆心地となったその場所を見てもクレーターができているだけで何もなかった。
なら、彼は何処にいるのか?モンスターは急いで彼を探し始めようとして…
カチンッ
軽い、しかししっかり響く金属音が鳴る。モンスターは急いでその音のした方を向いた。
そして、モンスターもその映像を見ていた人々も言葉を失った。
「…」
その場には後ろ姿の彼がいた。
左手に落ちていたスコップを握り、そして右腕を横に伸ばして蓋が閉じているジッポライターを持っている。おそらく先ほどの音は彼が蓋を閉めた音だろうと推測できた。
しかし、驚く所はそこでは無い。
まず、彼の髪が長髪になり全体に髪が赤くなり毛先が白い。そして頭に『鹿の角のような物』が生えていた。
そして首や手首からは赤い鱗…いや、『赤い甲殻』が見え隠れしている。
何より彼の下半身から生えている『細いが赤い甲殻で先っぽだけ白い尻尾』、それが目立った。
「『おい』」
彼の声が響く、しかしその声は何故か二重に聞こえてしまう。
「『ミサンガが切れる意味を知っているか?』」
しかし、彼はそんな事は関係ないとモンスターに振り向き、顔を向けた。
「『願いが叶うって意味らしいぞ』」
彼はモンスターを『白と黒が逆転した爬虫類のような縦割れの瞳孔の瞳』で捉える。
「『だから…』」
彼はそのまま言葉を言いながらスコップを構えた。
「『歌舞伎座を、返してもらうぞ』」
彼はそう言うと、まるで稲妻が如き速度で突っ込んで…
「『オラッ!』」
『GAaaa!?』
ズガーンッ
モンスターの纏っていたヒビだらけの馬の骨の胴体を一撃で粉々にした。
「『人体総変異、タイプ《緋雷神龍》。俺のとっておきだ、喜びな』」
そして、それをした彼の顔は笑顔だった。
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