第55話
~~12月 31日 23時40分 side 大神 大吾~~
「…つまりは何だ?あの子が持っているErrorスキルは自分の心の光景を実体化させて拠点にする事ができるスキルで、そのせいで優香のErrorスキルでは何も見えなかったって事か?」
「うん、そして拠点では生活する事もできるし武器や防具どころか閃光玉みたいな消耗品を作る事もできるって話してくれました」
「優香…そう言う事はもっと早くに教えてくれよ…」
俺は今、優香と雄二さんを車に乗せて旧歌舞伎座に向かっていた。
その道中は渋滞で時間が掛かりそうだったので、同じ後部座席に座った優香から先ほどの話をキチンと説明してもらうと、何と優香は知らない間に夜のダンジョンで彼とお話しと言う名の尋問をしたそうだ。
そして自分の境遇、そして呪いのようなスキル、自分の覚悟を話して答え次第では殺すつもりだったそうだ。
しかし、返ってきた答えに優香は驚愕した、そして彼も自分と同じErrorスキル持ちである事を話してスキルを発動、そしてスキル内で腹を割って話し合った…か。
(道理で優香が気に入るわけだ…)
優香は基本人嫌いだ。それは昔からスキルのせいで見えてしまう光景に絶望して、心を閉ざしているのが原因だった。
しかし俺や家族、数少ない友達には距離感がバグっているというか普段人嫌いな分、かなり甘えたりする傾向がある。
そして俺は優香から彼にミサンガを渡してくれと頼まれた時は、正直信じられなくて彼を脅してでも優香から1歩引かせて様子を見る予定でいた。
(こりゃ、もし彼がダンジョンを攻略しようもんなら…間違いなく優香は…)
俺はそう思いながら自分の手元にあるスマホに目線を戻す。
『Gaau!』
ブンッ
『チィ!?』
そこには彼が先ほどから近距離で細かく動きながらモンスターと戦っているライブ映像が流れていた。
「渉…」
そして俺の前の席で同じ映像を見ていた雄二さんの声が漏れる。
今、彼の闘技放送は1時間と40分が経過した。バイクでの移動時間を除けば約50分は戦闘を続けている。
そして彼との戦闘で、もはやモンスターは最低でもかすり傷を与え続けられた為無視できない位に足や腹が傷だらけなのに対して、彼は息は激しいがほぼ無傷。大したダメージを受けずに今も戦っている。
これはもはや世界で誰もなしえていない偉業であり世界中の人々が彼の存在を認知するに十分な時間だと思う。故に…
「旦那様、すみません。どうやら銀座全体で渋滞しているらしく、動けるのはいつになるかわかりません!」
「わかってるよ、大体予想はできていた」
俺は運転手の如月のセリフにそう答えた。
こんな世界規模の祭りみたいな状態だ、だからこそ身近で感じたい、あわよくば参加したいと思うのは人の性だ。
故に先ほどから通行人の殆どはスマホでライブを見ながら銀座方面…いや、旧歌舞伎座を目指して歩いている、中には配信用ドローンで撮影しながら向かっている奴も複数人混ざっている状況だ。
「くそ、やはり歩くしか…
「お父さん!」
どうした優香!」
俺は車を如月に車を預け、俺たちは歩いて旧歌舞伎座に行くか考えていた、しかし隣の席の優香からいきなり大声を上げて俺の目の前に自分のスマホを差し出した。
「…チィ、もう嗅ぎつけやがったか!」
差し出されたスマホの画面を見た俺はそう言いながらスマホのライブ映像を止めて、急いでギルド本部からもしもの時にと預かっているホットラインの番号に電話をかけた。そしてスグに担当者が電話に出たのを確認した瞬間、
《はい、どうさ…
「おい、今すぐネットの個人情報の流出を止めろ!依頼を受けたあの子の名前と在籍している中学校が特定されてるぞ!!」
…!?今すぐに対処します!!》
俺は叫ぶように声を張り上げた。
そう、今この瞬間にネットの掲示板で彼の個人情報が特定され始めてしまったのだ。
この状況は頭の隅で可能性として考えていたが、まさかここまで早く特定が始まるとは思わなかった。
一応、ギルドに依頼を出す時の規約として依頼を受けた人の個人情報の保護の項目が何十個もあった。そしてもし個人情報が漏れた場合は、ギルド全体の問題として対処しなければならないという記述もあった。故にこの状況はギルドも見過ごせない、今後の信用問題に発展するからだ。
だからこそ俺は電話したのだ、現にまだ差し出されている優香のスマホの画面から彼の個人情報が次々と削除されていく。
(くそ、こんな状況だからと油断した!)
俺はそう思いながら電話を続ける、彼を守る為に今対処しないと大変な事になるからだ。
「とりあえず、ネットの監視はギルドに任せても問題ないな!?」
《はい、お任せください大神様!》
俺はその言葉を聞く電話を切る。そして優香に「もう安心だ」と言うと優香もほっとした顔になった。
(さて、個人情報はこれで良し。後はどう移動するかだな…)
俺がそう考えていると不意に、
コンコン
「ん?」
ガラス窓を叩かれた。そして俺が少し開けて誰か確認すると、そこに居たのは…
「すみません、ここに息子を心配する父親の筋肉の声がしましたが大丈夫ですか?」ビジッ
「夜分遅くにすみませ~ん」
「アイ!」
半裸ジーパンでポーズをとるマッチョと赤ん坊と一緒に宙に浮かぶ外国人女性が居た。
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