第54話

『Q スコップは武器になりますか?』


『A 本職の人曰く、近接戦において最強と言われています』




俺は改めてスコップを構えてモンスターに向き合う、そしてモンスターは、


『Gruraaa!』


ブボボボボボーーッ


何故が口から白い炎のブレスを横の離れた廃墟に放った。そしてすぐに廃墟から俺に向かって飛んでくる、白く燃えた様々な動物の頭蓋骨。


「…」


しかし俺は向かってくる頭蓋骨を冷静に走りながら全て避ける。そしてスコップをそのまま槍の様に前に突き出す。


『Ga!?』


グサッっと右前足の肘より上の毛の部分に刺さり、血が出る。俺はそのまま体を回転させて、


「フンッ」


ズシャッ


ブシャ!


そのまま回転切りをしてその傷を更に広げる。

しかしモンスターも黙って攻撃されている訳でもなくそのまま俺を前足で払おうとするが、


「遅い!」


俺は走って右前足まで走り、そのまま…


『Gu!?』


ドシュッ


斧のような一撃が関節の内側に刺さり、刺さった刃を抜くとそのまま前に倒れかける。


「おっと」


俺は少しバックステップで倒れかける体から下がり、そして倒れかけて下がったモンスターの首に…


「フン!」


ズシャッ


『Gaa!?』


ブシュッ


前に走って斬撃を入れて首から血を流させた。そして再度、俺はモンスターから距離を取った。

そう、スコップが最強の理由は使いやすさと汎用性の高さが主な理由だ。

スコップの先を研げば鋭い刃物に早変わり、そしてそのまま相手に切りかかれば相手に斬撃が。

リーチのあるスコップの柄を使い、槍のように突けば刺突が。

斧の様に使えば薪割りの如く、物に食い込み。

スコップの平の部分で殴れば、メイスの如く骨が折れる。

そう、スコップもしくはシャベルは身近で最も手に入る道具であり、軍用モデルもある道具兼武器なのだ。

実際、第一次世界大戦時に一番人を殺したのはシャベルであると言われている。理由は主に塹壕戦時の武器として優秀だった事があげられる。

そしてこのスコップは『people's redemption』の中で出てくる、プレイヤーから『ある意味玄人向け』と言われる俺の主力武器、『炭鉱夫の鎮魂歌』だ。

そして今回の装備は全てこのゲームで俺が使っていた愛着のある装備で来たのである。

この和装軍服の名前は『日本支部殲滅部隊正式武装』と言われる装備だ。

元々『people's redemption』の世界にフルプレートや鎧武者などの重装備は無い。

戦う姿は皆、私服か軍服か着ぐるみしかない。しかしそこは変態企業、なんと防御力の上げ方がぶっ飛んでいた。このゲームの服にはミュータント細胞を使って作られている設定の為、防御力の上げ方がミュータントの血で服の糸に使われている細胞を強化するという仕様なのだ。

故に、


『Ga!』


ブンッ


「あぶな!?」


今、モンスターが前足の爪で攻撃してきたが、俺は避けた。しかし、服の袖は爪に触れていた、しかし引き裂かれてはいない。

そう、俺はそれすらも何とか再現しようとした。そしてそれは叶わなかったが、糸にモンスターの血と深層のモンスターの骨粉と数種の薬品を使った特殊な液体に浸してから魔石の粉で再度強化した。そうすると魔石の粉だけ使った時よりも数倍の強度としなやかさを手に入れたのだ。

しかし、俺が使った骨粉が深層のモンスターの骨粉でそれ以外の骨粉だったらこうはいかない事が判明。

だからこの禁層用の装備の分しか作れなかったのだ。

そしてそんな装備を着ている俺はモンスターの前足の攻撃を避けながら、


「フンッ」


ビュンッ


腰のベルトからスコップを持っていない手で『ダーツ』を抜いて取り出してモンスターの体に刺さるように投げた。


『Gua!?』


グサッ


ダーツは狙ったところとは違った、腕に刺さってしまったが問題ない。刺すことが大事なのだ。


(さて、後はこのまま隙を見てかすり傷でもいい、今は傷を与え続けるだけだ)


俺はそう思いながらまたスコップを構える。

元々このモンスターと俺では体格差があり過ぎる。そしてこの数回の接触で分かったがこいつは力が俺より強いし体格の割に柔軟で素早い。

そして最も警戒するべきはあの特殊なブレスからの頭蓋骨砲弾、命中度が高いのはバイクで走っていた時に体験済み。

故にあの遠距離攻撃を封じなければ俺はその攻撃に走らされて、いすれスタミナ切れで殺される。

ならどうするか?答えは簡単だ。


「懐に飛び込んでブレスを吐かせる暇を与えなければいい…!」


そう、ひたすら近接戦一択。これしかない。

例えかすり傷しか与えられないかもしれないが、そこは手数と道具でカバーする。時間がかかるが確実で堅実な方法だ。


『Gaua!!』


そう思っていたらあのモンスターはまたブレスを吐こうと思ったのか、俺が居るのに斜め横にある離れている廃墟に顔を向けていた。


「吐かせるかよ!」


俺はそう言いながらまたスコップを槍のようにして突撃する。


『GAAAA!!』


「オラッ!」


そして月夜の広場に、二つの影が重なった。








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