第53話

〜12月 31日 22時 禁層 side 佐藤 渉〜


俺は今、バイクを走らして丘を道なりに沿って降りていた。


ドカーンッ


「おいおい、あの都市から迫撃砲でも使ってるのか?それなら何でこんなにも命中精度が高すぎるんだよ!?」


俺はバイクで下に見える都市から山なりに降ってくる「白い物」を避けながら叫んだ。


(マジでバイクを用意してなかったら死んでるぞ!)


今、俺が乗っているバイクは元々は違法改造されて川に廃棄されていた125ccクラスのバイクを拾って更に改造した特製バイクだ。

元々、俺が作った液体燃料では魔石で強化した原付でも火柱が上がる始末で、到底乗り物には使用できなかった。

しかし、とてつもなく嫌だったが「ある虫型モンスター」がその問題を何故か解決した。

その虫とは、


(本当、何であのGがバイクの最重要素材になるんだか…)


かつて、俺が戦った柴犬サイズのGだ。

正式名称『ハイエナコックローチ』、森にある死骸やら枯葉やら枝などの様々な物を食べて生きる虫型モンスターだ。

そして余り知られていないが、俺たちの知る普通のGは体長の50倍の距離を1秒で移動できる、更にもし人と同サイズがいた場合、危険を感じた時にでる速度は何と時速300km以上。そんなすごい能力を持っているGが柴犬サイズまで大きくなると、その分の能力も上がる。

故に普通の人はこのモンスターに合わないようにする、あったら溶かされて食われるからだ。

しかし、俺はその能力に目をつけた。

以前、『people's redemption』の乗り物はミュータントの細胞で出来ていると話したが、俺はそれを模倣しつつバイクの部品全てをGの触覚以外全てとモンスターの血、魔石の粉、ヴェロルの皮を使って強化した。

そうしたら液体燃料に耐えれるだけではなく、Gの速度も足された化け物バイクができたのだ。しかもバイクのカウル全てをGの甲殻で、シートをヴェロルの皮で再現したら空気抵抗と安定性、耐久度もクリアーした。後は塗装とかは自分の趣味で塗った、Gの黒光りする甲殻のままだと俺が乗りたくなかったから。

しかし、俺はバイクのフルチューンは初めてだった、故にまだ問題が2つある。

一つはGの素材数、何とこの125ccクラスのバイクに使ったGの数は驚異の75匹。故に一台作るだけでも一苦労なのだ。

二つめは燃費、大体このクラスのバイクだと1Lあたり大体42〜66km位だと思うのだが、このバイクの燃費は1Lあたり大体34kmと短い。故にまだ荒げずりの試作品みたいなバイクなのだ。

因みにこのバイクはナンバープレートが無いなど色々とアウトだがココはダンジョン、色々な運転に関する法律の適用外なので俺でも運転できる。

後、運転技術は何処で覚えたのかって言われそうだから言うが、前の世界の俺は会社に中型バイクで通勤していたから一応、運転技術と経験はある。


「くそ、さっきから道がガタガタだな」


俺は愚痴りながら速度をなるべく落とさないで曲がったりしてはいるものの、道がガタガタで運転がしずらい。しかしたくさんの人達が踏んでできた道なのか意外と道がしっかりしているので都市までの道なりがわかりやすいのも事実。


「…あれ、石橋だよな」


丘を降りきり、しばらく走らせると長い石橋が視界に映る。

しかし、俺の視界の端に白い物が写り込んだ。


「チィッ!?」


ガリガリガリッとタイヤを鳴らしながら勢いよくハンドルを操作して避ける。そして俺は落ちてくる物を避けながら確認した。

それは…


「…おいおい、流石に『牛の頭蓋骨』は怖すぎるだろ!?」


俺は元の位置にバイクを戻す為に操作しながら叫ぶ。

おそらく今までの全ての飛来物は何かの頭蓋骨だと思う。それが白い炎みたいな物に包まれて飛んできていたのだ。


「絶対、コレをやっている奴は趣味が悪いか、ただの無法者だな」


俺はそのまま石橋を渡る。

そして先程から骨を迫撃砲みたいに打ち込んでいる場所、都市の中心部に向かって更に加速した。


〜〜〜〜〜〜〜〜


「いや、確かにこの都市は一本道だが…」


俺は今、減速ができない状況に追い込まれている。何故なら…


ドカーンッ


ドカーンッ


ドカーンッ


「さっきから追い込むように後ろからたくさん砲撃が迫ってくるんだが!?近所迷惑もかんが…すでに廃墟だった!」


都市に入ってから大通りの一本道を指示しているように後ろから追い込む形で頭蓋骨の迫撃が止まないのだ。

そして時々道を外れようと動けば先んじてその道を迫撃で攻撃して道を塞いでくる。


(間違いない、確実にあそこに誘導されている)


俺はそう思いながら大道りの中心部、建物の残骸もない不自然な位の大きな場所に目線を移す。

そして残り100メートル位で急に迫撃が止まる。


『Gaaa!!』


そして残り20メートル位の位置で急に目の前に巨大な何かが表れ、襲い掛かってきた。


「チィッ!?」


俺は急いでバイクからアタッシュケースを持って飛び降りる。

服や帽子は今まで手に入れた最高のモンスターの素材に加えもちろん魔石で強化済みなので深層の鎧よりも硬い。故にアタッシュケースを抱えるように転がって何とか減速して止まった。


ガリガリガリ…


その直後、俺とは別方向にバイクが横転するように転がっていく。


『Guaaaa…』


そして俺は勢いよく立ち上がり、声のした方向にいるであろう襲い掛かってきたモンスターの姿を目で捕らえる。


「おい、危ないじゃないか!後、お前は何処の部族長気取りだ?この『狐野郎』!!」


『GAAAAAAaaa!!!』


俺の言葉が分かるのかモンスターは吠えて威嚇してきた。

月明かりに照らされてそれは居た。

見た目は完全に白い狐、しかし全長は目視だと約18メートル前後、肉体に頭に何かの龍の頭蓋骨の上あごから上を被っており、そこから覗く目は『爬虫類の様に縦に開く瞳孔の赤く目』、4足の足は肘まである『甲殻に鋭い爪』が生えていた。そして尻尾は1本だが何かの背骨でコーティングされていた。

つまりこいつは…


「なるほど、スマン。『狐』じゃなくて『龍』だったんだな」


『GuAAAa!!』


俺の声に怒りが頂点に達したのかそのまま俺に突撃してきた。しかし俺は冷静にベルトのポーチから『筒』を取り出し、上に付いていたピンを抜いてを構えて…


「ほら、詫びの品だ!」


俺の下に投げた。


ボンッ


ブシュー


『Ga!?』


俺を包み込むように灰色の煙が俺を包む、その煙にモンスターは急ブレーキをかけて止まった。その刹那!


「オラ!」


ザシュ


『GAa!?!?』


煙に紛れた俺がモンスターを切りつけ、奴はかすり傷程度の傷を首に受けた。

そしてモンスターはバックステップで俺から一気に距離を取る。

そして煙が晴れていく、モンスターが初めに見たのは開いているアタッシュケースが地面に転がっている光景。


「さあ」


そして次に見たのは、


「狩りの時間だ」


モンスターに『持ち手に包帯が巻かれた金属製で少し厚めの剣先スコップ』を構える俺だった。







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