第47話

「くそっ、やっぱり俺を餌としか見てないな」


俺は転がる双方を何とか避けながらそう吐き捨てる。

この海は上の階層とは違い、本当にモンスターの種類が多い。そして本当に皆大きいし現在1種を除いてすべて肉食だ。

故にモンスター達は俺、もしくは俺を狙ってきたモンスターを食いに来ているのだ。つまりここは海に生息するモンスターの狩り場、もしくはお食事処って事だろう。


「ヤバいな、少し集まり過ぎてる…」


しかし、今日は早い段階で魚もどき達が集まり始めてきた。そうなると来るのが…


「やばい、集まりす…


『…ーン』


…嘘!?もう『クジラもどき』が来たの!?」


『クジラもどき』は俺が名前が分からないから勝手に呼んでいる、本気でデカいクジラみたいなモンスターだ。その全長はまさかの10倍、しかも俺ごと地面を抉ってモンスターを丸のみにしようとする捕食方法でそれが群れで来るのだ。因みに多分主食は鰯みたいなモンスターだと思う、理由が鰯みたいな奴が弾丸みたいに降ってくる時にしか来ないからだ。


「チッ、急がないと食われる!?」


俺は仕方なくスピードを上げて悪路を頑張って避けながら走るのだった。



~~お昼頃~~



「ハァッ…、さすがにきついな…」


俺はそう言いながら今来た道が海に戻る光景を座って息を整えながら見ている。


「くそ、魚介類を迎撃できたら…2日目にひどい目にあったんだった」


実は2日目に海から出てくる物をククリで迎撃しながら走っていたのだが、その迎撃したモンスターの血の匂いでサメみたいな姿のモンスターを大量に呼んでしまったのだ。

本気であの時は大変だった、何せあいつらそこら辺のモンスターを食べまくるから他の同種もその食べた時の血の匂いにひかれて正に負の連鎖だった。本気であの時は死ぬかと思った、B級サメ映画さながらの光景だったと言っておこう。


「…ま、ここで息を付けるだけで恩情は…いや、無いな」


今座っているのは各島が道を中央に伸ばして全ての道が重なる地点にいる。ここは一応海底だが帰還用ポータルが設置されているのであの魚介類どもは入っては来られない、だがこの地点は到着してから10分くらい経つと海に戻るのでうかうかとはしていられない。


「さて、そうと決まれば今日はどの島に行きますかね?」


俺はそう言いながら立ち上がり振り返る、そこには4つの道があった。


「いや、別に浅層みたいにポータルが転移するのはいいよ。だけど4択を法則性無しで転移するのも浅層みたいにする事無いんじゃないかな?」


この4択の中にポータルがある島に続く道がある。

しかしこの階もポータルが転移してしまうのだ、同じところだったり反対側だったり。唯一決まっている事は、ポータルは中央に来た道の島にはポータルを転移しないって事だけだ。


「…今日はこっちだな」


俺はそう言いながら4つの内の1つの道を選んで走る。そしてさっきまでいた場所は海に戻った。


カサカサカサカサカサカサ…


「あ…」


しかし俺はこの道を選んだ事を後悔した。何故なら大量のカツオサイズのオオグソクムシみたいな姿のモンスターや同サイズのフナムシみたいな姿のモンスターが大量に地面を張っていたのだから。




~~ 17時頃~~




ザザーン



「……」


太陽が水平線に沈みそうになる頃、俺は何とか地獄を乗り切って海を渡り島の浜辺に到着し、ポータルの範囲に入って安全を確保した。

来た道はもう海に戻り、次の朝までこの島で待つしか移動手段がなくなった。しかし俺は今はそれ所ではない、理由は満身創痍だからだ。

装備全体が所々破れ、全身が傷だらけで腕から血が垂れている。見るまでもなく重症だ。


「あのハリセンボンは絶対に許さん」


この状態の原因はこの島まで残り20メートルくらいの所で初めて出現したハリセンボンみたいなモンスター、大きさがまさかのピンポン玉レベルなのだが膨らむとくす玉レベルまで膨らんで自爆、水しぶきと同時に自身のトゲを周りにバラまいたのだ。それを俺は全身で受けてしまった、しかもモンスターの皮と魔石の粉で強化したこの装備を貫通したのだ。とっさに腕で頭部を庇ったが完全には防げなく、先ほどから腕からの出血が止まらない。

本当に笑えない、下手したら死ぬ所だった。


「…しかも、目的地は隣の島かよ」


不幸は続くらしく、俺は体を無理やり動かして隣の島を見る。

隣の島はかなり遠いが隣の島には遺物の跡みたいな陰が見える、あれは間違いなく目的地だと理解した。

どうやら俺は今日も島の選択を間違えたらしい。


(…取り敢えず明日は休もう。流石に体が持たない)


疲労困憊、この言葉に尽きる。流石に回復薬でこの傷はいえても疲れまでは癒えない。流石に約30kmの距離を走るのは俺でもギリギリだ。

俺がそう思っていると突然両腕全体にひんやりとしたジェルみたいな感覚がはっきりと感じる。

俺は目線を下す、そこには…


プルプルッ


プルプルッ


2匹のスライムが粘液を伸ばして俺の腕を包み込んでいた。

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