第45話

「オラッ!」


『ブモッ!?』


俺はそう叫びながら近くにいた牛頭の片足の健を切る。そうすると牛頭が足に力が入らずその場に膝を着く。


『『!?、ヒヒーンッ!!』』


そうすればそれを見た馬頭達がそれに群がる。そして群がってしまえば…


『『『…!!、ブモオオオオオオオオ!!!!!!!』』』


神輿を担いだ牛頭がそこに突っ込み、敵味方諸共吹っ飛ばした。すると神輿の通った直線の道が生まれる。


「うし、予想的中!」


俺は別に無策で突っ込んでいる訳ではない。

この2種類は常に興奮状態で取り敢えず目の前の敵を倒す事しか見ていない。故に目の前に格好の餌を用意するだけでこうなるのは予想が着いたのだ。


「やっぱり、冷静でいることが一番だな、ありがとうなヴェロル!」


俺はそう言いながら神輿によって生まれた一本道を走りながら言う、かつて初めてのヴェロルとの戦いで学んだ事が今生きたのだ。しかし、


『ヒヒーンッ!!』


ビュン


「やば!?…おい、馬がドロップキックなんてしてくんな!」



『『ブモモ!!』』


俺を攻撃しようとした馬頭が横からドロップキックを当てようと仕掛けてくるが俺はそれを避けた。そしてそれを外した馬頭に今度は牛頭が群がる。


「やべぇ、想像以上に道が埋まるのが早い!」


そう、先ほどの馬頭の他に道を横切る牛頭や倒れたモンスターに四方八方から群がったり、他の神輿が複数のモンスターを吹き飛ばしながら道を横切ったりと幅が徐々に狭まり道が複雑化してくる。


「くそっあと一め…


『『『ブモオオオオオオオオ!!!!!!!』』』


…おい、それは洒落にならないって!」


俺は目的の神輿を目にとらえてながらひた走る。しかし、残り大体1メートルくらいで問題が発生した。何と目的の馬頭の神輿に牛頭の神輿が2つ同時に突っ込んできたのだ。


「くそ、今は使いたくなかったがそうも言ってられないな…」


俺はそう言いながら口に右手のククリナイフを咥える。そして右手で腰のベルトポーチに付けていた閃光玉を外してリングに指を通して持つ。


(くそ、中層に行ってすぐにポータルがあるかも定かではない状態で、このアイテム消費はかなり痛い!)


正直勿体ない気がするが、このままこの機会を逃したら次はいつ神輿から見つけられるか分からない。

そう思いながら俺は2つの牛頭の神輿が目的の神輿に目線が集中しているのを利用して大体の位置にピンを抜きながら軽く放り投げ、俺は急いで投げた腕で目を隠しながら立ち止まる。


バンッ



『『『!?!?』』』


光が俺の周りを一瞬照らすと同時に激しく叫ぶ声や何かが壊れる音が聞こえる。そして俺が腕を外して確認すると、


『『……』』


「うわ、危うく目的の神輿を壊す所だった」


周りのモンスター達は光により泡を吹きながら失神、しかも突撃していた2つの神輿が目が見えないがそのままの勢いで突撃したせいか、目的の神輿を挟むように突っ込んでいた。多分どちらかの神輿がもう少しズレていたら目的の神輿は壊れていただろう、しかし目的の神輿は無事だ。


「おし、早く中にはい…


『『『ブモオオオオオオオオ!!!!!!!』』』


『『『ヒヒィィィイイイイイイイインン!!』』』


…うそ!?もう来たの!?」


俺が言葉を言い終わる前に双方の社から大量の雄たけびと共に地響きが響きわたる。おそらく今の状況は双方にとって美味しい状況なのだろう。何故なら双方の敵が泡を吹いて大量に失神しているからである。


「やばい、急がないと!?」


俺は急いで目的の神輿に近づいて神輿に登る。そして双方がぶつかる瞬間と俺がポータルに入った瞬間はほぼ同時だった。

そしてダンジョンに入ってきた時と同じ謎の浮遊感が俺を襲った。



~12月 17日 中層~


ザザーンッ


波の音が聞こえる。顔を撫でる風から強い潮の匂いを感じながら俺はゆっくりと目を開けた。

しかし俺はいつの間にか下を向いていたらしく、さっきまで居た神輿の破片とおぼしき木くずと砂浜が目に入ってきた。そして俺はゆっくりと頭を上げる。そして見た光景は…


「……この状況は予想外だわ」


俺に入ってきた光景は丸い形に生えた芝生、その中心に帰還用ポータルがあり芝生の周りを砂浜が囲む。木や岩などは無く、風を遮る物はない。

そして今、見える限りだと現在立っている土地の大きさは直径約150メートル位だ。

そして俺はその場でゆっくりと振り返る。


「…うっそーん」


振り返って見た光景は、夕焼けにうっすらと見える星空、地平線に沈む夕日に複数の同じ形の島々。


「…海を泳げと?」


流石の状況に俺は放心する。そして今、この島にいるのは俺と海から砂浜へと出てきた『透き通るような透明で中にキラキラとした物体をたくさん浮かしたスライムのような生き物』が複数体いるだけだった。


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