第44話

~回想 仮歌舞伎座 客室~


「すまねぇな、来てもらって」


「大丈夫です」


俺は今、仮歌舞伎座の客室に通されて大吾さんと話し合っている。今日の目的は旧歌舞伎座ダンジョンの情報を貰いに来たのである。


「まあ、昔話とか言うもんも無いから最初から本題にいくぜ、今座っている椅子の前の机に資料があるからそれを見な」


そう言うと机を指さして資料を確認するように促す。


「では、確認し…え?」


俺は資料を確認したが余りの情報に体が固まった。


「驚いたが?まあそうだな…








まだ、浅層の情報しか無いもんな」


俺が固まっていると大吾さんが固まった原因を言う。


(いや、確かに特殊ダンジョンは情報が集まりにくいって聞いていたがここまでとは…!?)


流石の情報の少なさに頭がくらくらする。


「んじゃ、さっそく言うぜ。浅層は土地の面積はかなり小さい。調べたら面積は確か大阪府の忠岡町って所が一番近いって事が分かっている。後注意するところは…」


そう言って俺と大神さんとの会話は続いた。




~12月 17日 旧歌舞伎座ダンジョン 浅層~



ピ~ヒョロ~ピ~ヒョロ~


常時暗いダンジョンに笛の音が響く。


ドカッバキッ


何かが壊れる音や殴りあう音があたりから響き、


ドンドンドンッドン


太鼓の音がその音にさらなる熱を与える。


『ブモオオオオオオオオォォォ!!』


体長3メートの人に牛を混ぜた生き物が叫び、


『ヒヒィィィイイイイイイイインン!!』


こちらも3メートルの人に馬を混ぜた生き物が雄たけびを上げる。


つまり、今は何が起こっているかと言うと…







「何で牛頭と馬頭が喧嘩祭りをしているんだよ!」


そう、この浅層はまさかの2種類のモンスターしか出ない。そしてこの2種類はお互い喧嘩祭りで殺しあっているのがこのエリアなのだ。

特徴として牛頭は白い祭り衣装に白いふんどしで武器は持っていない、馬頭も赤い祭り衣装に赤いふんどしをつけてこちらも武器を持っていない。

そしてお互いを殴りあったりして殺したり、お互い数多くの15メートル級の神輿をぶつけ合って競い、砕けた神輿の破片がお互いの仲間を殺す。

もはや戦うだけの生き地獄、そしてお互いの旗が掲げられた社からは笛や太鼓で生きてるものを鼓舞し、そして散った仲間の分のモンスターや壊れた分の神輿が社から戦場に補充されていく。


「しかも帰還用ポータルは両陣営の本陣がある社にしかないとかヤバすぎだろ!?」


『ブモッ』


俺は殴りかかってきた牛頭をククリナイフで喉笛を切り、叫ぶように言う。

そう、1人目の調査した人はこの惨状で馬頭の陣営に殴り込み、そこの帰還用ポータルから帰還した。

2人目の人は今度は牛頭の陣営に殴りこんでそこの帰還用ポータルで帰還した、しかし2人目の人は実は次の階層に進むポータルを見つけてはいたのだ。

だが見つけたのにそこには行かずに帰還用ポータルで帰還したのだ、何故そうしたのか?それには理由がある。その理由は…


『ヒヒーーーーン!』


ブンッ


「あぶな!?」


『ブモ!?』


俺は何とか馬頭のラリアットを避けて俺の後ろにいた牛頭にその攻撃をぶつけた。そして始まる二匹の殴り合い。


「ハァ…ハァ…」


俺は息を整える。そして俺の周りを集中して確認して目的の物を探す。


「ハァ…クソっ!『どの神輿に次のポータル』があるんだ…


『ブモオオオオオオオオ!』


ッ!?息をつくヒマもないな!!」


俺は突撃してきた牛頭をギリギリで避ける。

そう、この喧嘩祭りの神輿の中に次の階層のポータルがあるのだ。しかも両陣営の神輿の数は30艘、つまり全部で60艘の中から当たりを引くしかない。

しかも当たりの神輿が破壊されたら次のどれかの神輿にポータルが移る、この光景を見た2人目の調査した人は次に行くよりも帰って報告することを選んだのだ。流石は特殊ダンジョン、何もかもがめちゃくちゃだ。


「大吾さんが言っていた何が起きても対応できる『反応力』と何処の何が変なのか見つける『判断力』ってこういう事かよ!?」


『『『ブモオオオオオオオオ!』』』


「今度は神輿が突撃してきた!?」


俺は何とかククリナイフを構えながら転がり避ける。そして頑張って避けた牛頭の神輿はそのまま馬頭の神輿に突撃していき、お互いの神輿が壊れる。


「ハァ…ハァ…」


どうやら混戦しすぎて俺に構っていられないのか少しの休憩が取れた、そして…


「ハァ…!?」


俺は見た。混戦している先の馬頭の陣営、今にも壊れそうな神輿、その壊れた所から覗く幾何学的模様が見えたのだ。


(距離的に5メートル弱、しかも今にでも神輿は壊れそうだな…)


これならこのまま見過ごして、次に移った神輿を探す方が楽だと思った。しかし俺は神輿を見逃さないように目でとらえながら、足に力を入れククリナイフを構える。


「最後は『度胸』…やってやろうじゃん!!」


そう言うと俺は力一杯踏み込んで混戦の中に切り込んでいった。

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