第42話

〜銀座駅前 タクシー乗り場〜


「あの、今日は本当にありがとうございました」


「おう、気をつけてな」


俺達はあの後しばらく話し合ってから拠点から出て銀座駅に戻った。

そして今、前に会った服装に赤縁の伊達メガネを付けた彼女をタクシー乗り場まで送り、無事にタクシーで千葉の某ダンジョン系列の建物に向かっていたのである。


「…と言うか、彼女は千葉のギルド系列の建物で銀座のダンジョンに入る申請をしたって言ってたな。他県でも申請ってできたんだな」


俺はそう呟くと、装備を預ける為と素材のお金を受け取るためにギルド系のビルに向かって歩きだした。


「ま、彼女としっかりと腹を割って話し合ったから問題なし…だな」


歩きながら俺はそう呟く、そして彼女に言われた事を思い出す。


『あの、実は私達みたいなスキル持ちの人達は歴史上に2人いたんです。

もう2人とも死んでいますが、1人目は中国で、2人はアフリカで見つかったそうです。

発見例が少ないので知ってる人がごく一部なんです、そしてその人達は私達のような自分にしか見えないスキルの事をこう呼ぶんです…』


「『Errorスキル』…か」


なんか、もはや規格外なスキルなのでそう呼ぶらしい。

因みにアフリカの方の能力は不明で、中国の方は『相手に触れたら男女関係ないどころか種族も関係なく好意を持たれるスキル』と言われているが情報が確定でない為、中国国内でもよくわかっていないらしい。


「まあ、Errorスキルかなんだか知らないが、俺のやる事は変わらないがな。寧ろ少しでも謎が解決してスッキリしたし…でもな…」


俺はそう言いながらスマホのメモ帳を起動させる。


「問題が解決したらまた降ってきたんだよな…」


そのメモ帳にはこんな事が書かれていた。

















《緋雷神龍の右腕の化石》


《爆裂粉龍の左腕の化石》


《七色泡龍の右足の化石》


《七色泡龍の左足の化石》


※この化石は乾眠状態ですが、頭がない為復活しても動きません。しかしエネルギーを与えれば龍の力を使える可能性大



「いや、あの化石生きてるんかい!」


乾眠は聞いた事がある、確かクマムシがする生命維持の最終手段だった気がする。

しかし、俺が気になったのは厨二病溢れる名前でも生きていた事でもない。


「『エネルギーを与えれば龍の力を使える可能性大』だと?本気で言ってる?」


この世界の武器や防具一式を着てもスキルが増えるわけではない。ただ防具はより硬く、そしてより動きやすくなる。武器もより軽く、より鋭くなるのだ。それは俺が作った防具でも同じ、そこだけは変わらない…はずだった。


「まさか、この骨を使えば特殊能力を持った武器が作れるのか?」


俺は丁度信号が青になったので交差点で止まり、呟く。

流石にコレはやばすぎる。現在どのダンジョンの宝箱で出た武器も、深層の素材で作った武器にも特殊能力がある武器は無い。防具も同じだ、あっても蛇腹剣や三節棍、チャクラムみたいなロマンの塊みたいな武器だ。しかもそれも特殊能力は確認されていない。


「…いや、待てよ。もしかしたら…」


信号機が赤に変わり、歩行者用信号が青になったので周りが我先に道路を渡るが、俺はその場で立ち止まって考える。


「エネルギーは液体燃料でいいとして…うん、燃料の消費によるが多分いける。…あ、赤色になっちゃった」


俺は今までの情報を整理する、後は試してみない事には分からないと理解したので前を向くと丁度歩行者用信号が赤色になって、信号機が青になり車が走り出していた。


「ま、今はこの事は考えないようにしよう」


そう言って俺はまた歩行者用信号が青になるのを待っていた。




〜翌日 拠点内 中庭〜




「…マジかよ」


俺はそう呟きながら先ほどまで謎の現象を出していた化石に近づいていく。


「確かにこりゃ、やばいな。だが…」


俺は周りを見渡した。そこには大量に地面がえぐられている、しかも治りが遅い。

しかし、


「化石の骨に亀裂が…皮膚や筋肉がないとスグにダメになるのか?」


そう、能力を解放した化石の力に化石自体が耐えれていないのだ。現に骨に亀裂が入っていてもう一回使ったら壊れそうだ。


「…チャンスは一度きり、加工に失敗したらもはや目も当てられない。防具は8割がた完成、道具各種は殆ど揃えた。後、手をつけていないのは武器だけなんだ」


俺はそう言うと空を見上げる。


「…ようやく、アイツを使う時がきたか」


俺は化石を持ちながら素材が置いてあるシャッターの前まで行き、シャッターを開ける。

そして目的の物の前に立ち止まる。


「よう。一年と少しぶり、だいぶ待たしてすまんな。ようやくお前を使える」


俺がそう言うと一瞬手の中の化石が動いた気がした。

そして俺の目の前にあるのはモンスターの死体、ただ他の死体とは完全に違う、何故ならその死体には『左側に綺麗な横一線の傷』があったのである。


「さて、約束を守りますか」


俺はそう言うと解体ナイフを取りに一旦部屋を出た。



〜〜〜〜〜


12月17日、俺はその日に旧歌舞伎座ダンジョンに潜った。

この出来事は歴史に多大な変化をもたらす騒動の始まりとして歴史に記録される事になる。

そしてその始まりの出来事は後年にこう呼ばれていった。

その名は《歌舞伎座事変》、歴史が、世界が新たな一歩を進み出した二週間の出来事である。

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