第41話

~拠点内 湖のそば~


「…つまり、この空間は武器や道具の製作やモンスターの解体、道具や素材の管理にトレーニングに実験に休憩や就寝が出来る場所もある…と?」


「ああ、因みに最近ウォシュレット付き便座のトイレがふえた。

だができない事もあるぞ。まず料理だかキッチンと冷蔵庫が無いからもっぱら持ち込みか簡単に出来る物しか作れない。

あと風呂もないからドラム缶を持ち込んで外で入る五右衛門風呂だ、幸い水は目の前にあるし天気は晴れ以外ないからそこは安心してもいい」


「便利なのか不便なのか、色々と規格外ですね…」


俺達は今、拠点の湖のそばで座って話している。

彼女は最初は警戒して中に入ってくれなかったが俺が入るときちんと後を付いてきてくれたので拠点を説明しながら各部屋を回り、今は彼女の希望でこの場所で今までの拠点の情報を整理していた。

後、最近やっとトイレが拠点内にできた。今まではトイレの時は一旦拠点から出るか事前に済ますかしかなかったので実にありがたい。


「…」


そんな彼女は今、湖を見ながら思いにふけっている。しかし俺は彼女の隣で別の事を考えていた。


(ぶっつけ本番だったが…やはり他の人も拠点に入れるんだな。なら拠点を出す場所とか入っている時の防犯とかしないといけないな、もし俺が拠点に入っている時に他人が悪意をもって入ってこられたらヤバいからな…)


そう、俺の全てがあるこの拠点でもし盗難とかあった日には目も当てられない、人に渡してはヤバい物が多すぎる、特に回復薬系の薬とか自家製の液体燃料とか。


「…うん、間違いない」


俺がそう思っていた時、彼女はそう言うとその場で立ち上がりこちらを向いて、


「渉さん、あなたを信じます」


いきなり彼女からの優しい目と共にそう言ってきた。


「はい?」


正直いきなりすぎてもはや真顔になってしまった。いきなり彼女は何が決め手になったのか分からなかったからである。


「だって…」


彼女は今度は湖の方に向き直り、


「この空間、あなたの心の光景そのものなんですから」


いきなりスピリチュアルな事を言い出したのだ。


「心の…光景?」


流石にその辺りは専門外だ、この空間は正直「気味が悪いが便利なので問題なし!」としか思っていなかったのでそんな事考えてもなかったからである。


「多分、あなたのスキルは自分の心の光景を具現化して出すスキルなんだと思います、思い当たる節がありませんか?例えばこんな場所が欲しいって思ったらその空間が出てきたとか?」


「…あ!?」


俺はそのセリフに俺は思い当たる事があまりにも多かった。確かに最初に入った時に設計図を見つけて、現状作れない事を諦めらめられなかった時にあの3つの部屋が生まれたのだ。

それに設計図やレシピも言われてみれば、この世界で俺しか知らないゲームの武器や道具等の事をどこで知った?前の世界で俺がゲームの完全攻略本や設定資料集などを見て俺が知っているからスキルが生み出したんじゃないのか?

火柱で庭が壊れても再生していた事も、何故あの時俺が3つの部屋を見た時に道具を作れるのを確信した事も、湖の水や設計図を拠点から持ち出せない事も、そう言われたら謎の説得力がある。


「やっぱり…私の目が空間に入った瞬間にこの空間の情報を理解しました、つまりこの空間はあなたの心の光景そのものなんですね…」


そう言うと彼女は俺の隣にまた座る、その顔は付き物が取れた様に穏やかだ。


「こんな光景…家族以外見たことがありません…綺麗ですね…」


彼女はそう言いながら突然、


「!!」


ガバッ


「うお!?」


隣の俺の胸に抱き着いてきた。


「おい、なにやっ…」


びっくりした俺は胸から離そうとしたが、直ぐに胸辺りが湿ってくるのに気が付く。


「くうっ くっくっ ううっ うっうっ…」


(おいおい、泣いてるよこの子!?)


彼女は泣いていた、俺はどうしたらいいか分からないのでその場でしばらくフリーズしたのは言うまでもない。


~~~~~


「すみません、感情が抑えきれませんでした」


数分後、彼女は泣き疲れたのか何故か俺が膝枕する形で仰向けになりそう言った。…なんか距離が近くない?洞窟で殺しかかってきた時から劇的に変わってないこの子?


「すみません、私以外にこんな規格外のスキルが…仲間がいた事が嬉しくて…」


「あー、因みに聞くけど俺のは呪いってレベルじゃないけどいいの?」


俺が彼女にそう言うと、


「大丈夫です、正直こんなスキルは反則です。私のスキルの穴をつく、心の光景を具現化できるスキルとかこんなの私に特攻すぎますよ。心の光景自体がスキルになってるとか私が見えるわけ無いじゃないですか、チートですよチート!」


彼女はそう言うと頬を膨らました。意外と…いや、かなりかわいい。


「んじゃ、俺は信用できる…て事でいい?」


俺が今回の事の発端に触れる、これが解決しなければ多分俺この子に殺されると思う。


「はい、大丈夫です。…すみません、貴方を疑ってあんなことをしてしまって…」



そういう彼女はぎこちないが笑顔だ、本当に疑問が晴れたのだろう。あと罪悪感を感じているのか無理やり笑顔になっている。


「でも、このお話であなたの事がもっと知りたくなりました…だから…渉さんが良ければ…この格好でもう少しお話しません…か?」


だが、彼女の顔がこの言葉を言う途中から何故が赤くなっていく。めちゃくちゃかわいい、やった事はないが恋愛ゲームとかに出てきてもおかしくないと思う。


「ああ、別にいいが…」


俺がそう言うと彼女は今度は曇りもない笑顔になる。


「では、まずは…」


こうして、俺と優香さんは湖のそばでしばらく話し合った。



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