第37話
この世界の1億の価値をこの世界の防具に例えてみよう。
浅層のモンスターの代表、ビックボアの皮鎧一式の値段は約5万~20万だ。これはダンジョンの初心者が最初に手が出る値段で取引されている。
ヴェロルの皮鎧や皮が使われた鎧の一式は約200万~225万だ、1人前の証みたいな防具なので中々手が出にくい金額になっている。
次に中層、これはまちまちだが全体で約500万~1400万の間で取引されている。この辺りから防具の加工が難しくなってくるので値段か跳ね上がる。
最後は深層、これは防具の需要よりも素材の数が少ないため最低2000万かかる。そして現在の最高金額は8640万で取引されてたのだ。
つまりこの世界の1億は一番高い防具より高い。
武器も含めれば1億はお駄賃レベルになるのだがそれはまた別で話そうと思う。
「いっ一億っですか?」
流石の金額に目が痛くなってきた。こんな金額、前の世界でも支払ったことがない。
「内訳は武器が6000万、他が1000万だ。因みに1年前に買いに来た奴は金を払わずに暴力で奪いにきたが俺とアンジーで『お仕置き』して今も全身粉砕骨折で医療刑務所だ。因みに治っても刑期は30年だ」パンッ
そう言うと田中さんがモストマスキュラーのポーズでエプロンごとタンクトップをはじけ飛ばし、後ろでは複数の鉄球を空中で高速回転させながら笑顔のアンジーさんが目に入る。
(やべぇ…二人とも目がマジだ)
俺は二人の冷たい目線を受けながら懐から茶封筒を取り出す。
「これで」
そう言いながら俺は田中さんに封筒を渡す、そして田中さんが封筒の中身を確認し…
「おい、ふざけているのか?」バキバキバキッ
圧を感じるマスキュラーポーズをとりながら更に怖い顔をした、そして後ろで一緒に金額を確認したアンジーさんは更に鉄球を増やした。
「いえ、それでお願いします」
俺はそんな二人に怖気づかずに答える。
あの茶封筒は中にはギルド系列の小切手が入っていたのだ。
その金額は…
「俺は1億と言ったんだ。
誰が2億8358万なんて要求した!?」
田中さんが大声を張り上げた。
2億8358万4千円、俺がダンジョンにて1年で稼いだ全額だ。
元々武器や防具、消耗品等は自分で作れるしヴェロルやビックボアも鍛錬の為に頑張って狩っていたのでお金は貯まっていたがここまでは1年で稼げない。実は1番の金策に貢献してくれた人が居る。その人は誰でもない、『暴食龍姫』だ。
彼女は会うたびに俺に肉を焼くように要求してくるのだが、ある日はいつもの配信が終わった彼女はわざわざ俺のいるダンジョンに『お土産』を持って会いに来たのだ。
それは深層の希少モンスターで普通サイズの兎型モンスターである稲妻兎、街の1日の電力を1匹で生み出せる発電器官と電気に対して完全なコントロールが出来る毛皮を持つモンスターをまさかの20匹も持ってきたのだ。
どうやって持ち込んだかと言ったら「私のおやつって言ったら持ち出せたし持ち込みも納得してくれた」と言っていた。
確かにビニールなどのゴミになる物もない為、職員も許可を出したのだろう。『暴食』恐るべし。
しかし俺も見たことないモンスターだったので1匹丸々と肉以外をすべて貰う代わりにその日、追加で25匹のビックボアの肉を含めて全部の肉を焼いた。
そしてその日、俺の欲しい物を除いて売った素材の買取金額は5570万になった。激レアスキルってチートだと本当に思ったよ。
その後、彼女は味を占めたのか中層や深層の本人が気に入った携帯できるサイズのモンスターを持ってきて肉を焼くように要求してくるようになった。
おかげで俺はまさかの公式チートの彼女から激レアな物を貰い自分の使う分を確保しつつ肉以外を売ってお金を稼いだのだ。その額まさかの全体の8割、つまり彼女のおかげで溜まったお金だとも言える。
後、小切手だがお金を預けていたのがダンジョンギルド系列の銀行だったから今回の金額の利用目的を話してダンジョン許可証のカードが入った折りたたみ手帳と、ギルド系列のビルの自動受付で発行してもらった今回の依頼の証明書を渡したらその場で書いて渡してくれた。
こういう場合だと普通の銀行はこうはいかないから楽でいい。
「いえ、俺はその5つの物にそれだけの価値がある物だと確信しています、これで取引をお願いします」
俺はそう言いながら頭を下げる。
「理由を…聞いてもいいか…?」
頭を下げているから顔は確認できないが声は震えているのがわかる。
「今回の依頼は…正直死ぬ可能性が高いんです。だから俺は後悔したくないんです」
俺は頭を下げながら声を絞り出す、喉が渇く、だけど今はそんな事気にしてられないのだ。
「依頼者は俺にこの依頼は自分の夢って言ってました。俺も自分の夢を追いかけています、その依頼者の気持ちは凄く分かった…だから」
俺は声を張り上げて言う。
「俺はあの人の夢を叶えたい、だから俺は今回の依頼を受けると決めたんです!そのためならば俺の全額をだしても惜しくはありません!!だから是非、俺に売ってください!!!」
言い切った。全てを…
「…頭を上げろ」
そう田中さんが言う、俺が頭を上げるとそこには田中さんの前に蓋が開いたアタッシュケースが5個、宙に浮いていた。
「健ちゃん、これでいいんだよね?」
アンジーさんは田中さんにそう言う、でも田中さんはその場で震えるだけだ。
「…て…んて…」
そして徐々に声を出していき…
「なんて素晴らしんだ少年!Excellent!!」ガバッ
勢いよくサイドチェストのポーズを取り、
ビリッ
両手に持っていた小切手を引きちぎった。
「うぇ!?」
まさかの行動に俺が面を食らうと次に田中さんは小切手を手で丸めて…
「マイワイフ!」
ポイッ
「ほいきた♪」
ガリガリガリガリ…
そのままアンジーさんに向かって投げる、アンディさんもソレを分かっていたのか高速回転をした鉄球を密集させて紙が粉になるまで粉砕したのだ。
「えっ!?おっお金は!?」
俺はその一連に本気で混乱する、まさか2億8千万の小切手を粉々にするとは思わなかったのだ。
「金なら要らん!その気概と覚悟の気持ちは筋肉からも伝わった!」グイッ
フロントラットスプレッドを取りながら大声でとんでもない事を言い出す田中さん。
そしてアンジーさんは俺の前にアタッシュケースを移動させた。
「さあ持っていけ!これがお前が欲しかった物、『サバイバルナイフ型の蛇腹剣』に『謎の龍の右手・左手・右足・左足の化石』だ!!」ザッ
サイドチェストをしながらそう言う田中さんと後ろで笑顔で手を振るアンディさん。
そして俺はアタッシュケースの中身を確認する。
(話を聞いたときから興味を引かれていたけど…これが龍の化石!?)
5つのトランクにのうちの1つには光を完全に反射しない黒色のサバイバルナイフ、残りの4つには俺の手や足が入ってしまいそうな大きさの骨が埋まった化石が入っていた。
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