第34話
「ダンジョンの…消滅!?」
俺は目を見開いて驚いた、そんな話はネットや教科書どころか噂話でも聞いたことがない。
俺がそんな表情を浮かべていたら大吾さんはニヤリと口角を上げる
「初耳だろ?この論文は簡単にまとめると特殊ダンジョンは普通のダンジョンよりも不明な点が多いからもしかしたら消せる可能性があるってことらしいんだわ。
しかしこの論文は学会で大いに叩かれてな、論文自体も白紙にされて研究員も解雇されたんだとよ」
そう言いながら大吾さんは今だ隣で座っている女性の肩に手をおいた。ってこの人まだ鼻メガネ付けてるよ…
「この子はな、俺の3人の子供の末子で名前は優香って言うんだ。もう12歳で中学1年になる、んでこの子の友達の父親が件の研究員さんでな、わざわざこの子に頼んで家に呼んでもらって色々話を聞いたんだよ」
どうやら隣の女性は年下で名前は優香さんと言うらしい。というか俺、結構ヤバい橋渡ろうとしてないか?大丈夫?
「そして話を聞いた俺は決めたんだ、これに賭けようってな。だからよ…」
大吾さんはそう言いながら彼女の肩から話すといきなりその場で頭を下げる
「たのむ、調査に協力してくれ。
俺は今の土地を元の人達に返したい。そしてその人達に今までの恩をあの歌舞伎座で返したいんだ。
報酬は言い値でいい、浅層だけ潜って直ぐに帰ってきてもいい。少しでも情報を集めたい、そしていつかあの歌舞伎座を取り返したいんだ!
だから…」
大吾さんがどんどん泣きそうな声になっていく
「頼む…受けてくれ…例えこんな65歳の男の愚かな夢だとしても…頼む…」
夢…そうか、この人も叶えたい夢があるんだ。だからこそこんな子供である自分にでも本心でお願いをしてきているんだ。
俺にも叶えたい夢がある、それがどんなに大変な夢でも…だ。
ならば俺が言えるセリフは一つしかない
「わかりました、受けます」
これしかない。
俺の言葉に大吾さんが勢いよく下げていた頭を上げる。そして何故か大吾さんの隣にいた優香さんが鼻メガネを外した
「…えっ!?」
「ッ」
彼女は俺を見て驚き、俺は彼女の顔を見て言葉を失った。
優しそうな瞳に右目の斜め下に泣きホクロ、それだけでも綺麗だと思ったがそれよりもすごい所がある
「オッドアイ…」
右目が青色の瞳で左目が茶色のオッドアイ、父親の大吾さんの瞳は両目が黒だから余計にすごいと思った
「どうした優香?」
どうやらお互い固まっていたらしくそれを見た大吾さんが優香さんに話しかける
「…ッ⁉ごめん、お父さん。直ぐにアレを持ってくるね」
彼女はそう言いながら立ち上がり部屋の後ろにある戸棚からタブレット端末を取り出して俺の前に差し出した
「どうぞ」
「あ、すみません」
俺は少し硬い返事を返しながらタブレット端末を受け取る。そして俺はそのタブレット端末の電源を入れる、するとそこには何やら書類みたいな文面が並んでいた
「これは?」
俺は大吾さんに尋ねた
「ああ、それはアレだ。俺の依頼を受けるための必要書類だな。ダンジョンで死んだ時の諸々の奴とかダンジョンに入り始める日の記載とか諸々だな。
必要なら後でスマホに確認用の奴を送っておく、今は流し目で確認だけしてくれ。最後にその資料の下の項目にすべてにチェックと入る日にちを選んだら最後に名前をタッチペンで書いて完了だ」
「なるほど、理解しました」
俺はその言葉を聞くと書類を確認していく。途中に如月さんが部屋の全員にお茶と最中をくれたのでそれをいただきながら更に確認して数十分後にきちんと全部の項目を確認してから最後にペンで名前を書いて大吾さんにタブレット端末を渡した
「…うし、これで契約は終了だな。なら後日、仮の方の歌舞伎座に来てくれ。
あのダンジョンはドローンもカメラも使えない、だから生きて帰ってきた人たちの調査の資料を見てもらいたい。それで少しでも対策を立てて奥に進んでほしいからな」
「わかりました」
俺はその言葉に二つ返事で返す。俺は覚悟を決めた、なら頑張るだけだ
「あと、契約したから言うが今まで契約した人数は54名で帰ってきた人は2人だけだからな」
訂正、覚悟が壊れそうです
後、優香さんが何故か書類の段階からこちらを何故かガン見をしてきたのはなぜだろうか…
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『お父さん、お疲れ』
『おう、優香もお疲れさま。…どうした、何かあったか?』
『お父さん、あのね…』
『ああ、何だ?』
『あの人、【何も見えなかった】』
『…何だと?』
俺は知らなかった、彼女のこの言葉の意味を
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