第27話
「叶だと?」
どうやら着信らしく名前に叶の名前が出ていた。
確かに叶にも連絡は入れたが時間を確認すると23時を過ぎている。
多分さっきまでスマホを扱えない状況だったんだろうな、あいつは連絡が来たらいつも「直ぐに返さないと忘れるから!」とか言って直ぐに返事を返すタイプだし。
「取り敢えずでるか……もしもーし、セールスならその場で自爆してくださーい」
《…ッおう!ならいっちょ派手にって、アホか!何でダンジョンで頑張った奴を自爆させようとしてるんだよ!!》
おう、何と気持ちいい乗りツッコミだ。
《まったく!俺がこの時間まで頑張って日本橋の三井記念美術館前ダンジョンに潜っていたのに、お前はこんなにも早く切り上げやがって…何かあったか?》
叶が最初は怒り口調だったが次第に声色が変わっていく。相変わらず痛いとこ突いてくるなコイツ。
「…いや、別に
《嘘だな》
…おい、判断はえーよ」
《いや、早くない。
お前が学校の中で1番ダンジョンに行きたがっていた奴だった。なのに俺や俺の他の友達よりもダンジョンから早く帰るのは明らかに異常だよ。
それに電話に出た時にお前がふざけたのは今回が初めてだ。お前はいつも定型文みたいなセリフしか言わないんんだよ、なのに今回はボケが入った。
だからすこし訪ねてみたら明らかに返事の声が低くなりやがって。お前、声に出やすいって言われない?》
「余計なお世話だよコノヤロー」
こいつは本当に人の事を良く見てやがる。
こいつはマジで友達思いだし嫌味も感じたことがない、そのくせ他人の違和感に敏感だし話し上手だからマジで友達が多いんだよ、そういうスキル持ちなのか?
《はいはい、俺に早くゲロっちまいなよyou!》
「いや、急に英語になるなよ……本当に大丈夫だ。少し現実を突きつけられて心が折れかけただけだ。それに俺は所詮は慢心野郎で死にかけたのも効いてる感じなだけだ」
《1から10まで全部話せ、今すぐに》
俺がが少し愚痴ると叶が本気の時の声で話すように促してきた。
なので武器の稼働機構などのバレたら面倒な事以外はなるべくマイルドに愚痴る事にした。
~しばらくして~
《おし、分かった。お前は俺の知る中で一番のバカだわ》
「ひでぇな、おい」
《相手から襲ってきたとはいえ一体どこの世界に初日でヴェロルにソロで挑む奴がいるんだよ、あのモンスターは普通は最低三人で死角を潰さなきゃマジで連携取られて死ぬモンスターなんだぞ。
たまたま自作の閃光玉と斧で倒せたとはいえまじで生きてるのが奇跡なレベルなんだぞお前》
「おう、身をもって知った」
《自慢すんな死にぞこない》
叶がマジトーンで呆れているのが伝わる。基本的にパーティ―で狩ることを推奨されるモンスターをダンジョン初心者が初日に5匹も狩った。しかしほとんど偶然の産物でだ、そりゃ呆れるに決まっている。
《俺が現地で4人パーティーを組んでビックボア狩ってる間にお前は死にかけるとか、学校で唯一のダチを心配させるなって……ったくどうするんの?》
「どうするって?」
《ダンジョンだよダ・ン・ジョ・ン!まだ挑む覚悟はあるの?》
まさかこいつの口からダンジョンに挑むきあるか聞かれるとは…
「……おう、心配すんな。もう俺は慢心しない」
《…根拠は?》
叶のこの声は結構疑っている声での奴だ。なら、俺が決めた事をしっかりと言葉にしてしまおう。覚悟をキチンとした言葉にしたかったし、主に自分の心に刻む的な意味で。
「それはこれからダンジョンで色々な動画や本などで知識をつけてから徐々に経験を積む、これで今までの慢心と自惚れを思いっきり削る。それはダンジョンでの戦闘や自然の厳しさとかの弱肉強食の世界でしかできないことだからな。
生き抜いてやるよ、だって俺の夢は…」
《……》
「…始まったばかりなんだからな、終わるなんてもったいないわ」
俺はそう言いながら部屋の窓をあける。そして夜空を見上げてその言葉を言った。
生き残る、絶対に。
だってこの夢は俺がこの世界で初めて叶えたいと思った夢だ。やっと一歩踏み始めたばかりなんだ、やめるなんて勿体ない。
だからこそ今は経験がいる、実践訓練あるのみだ。
~二日後 昼 狩人の拠点、庭~
ズッドーーーーンッ!
「ギァアアアアアアアアアアアアアアアァァ⁉⁉」
俺はこの日、拠点の中庭で火柱に飲み込まれた。
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