第21話


『プリントごっこ』とは簡単に言うとプリンターの簡易版みたいなものだ。

そしてプリントごっこには専用の電球を使うのだがこれがメチヤクチャ強く光るのに1回しか使えない、使い捨てなのである。

このプリントごっこの電球は作るのにマグネシウムやらにがりやらを使うのだが今は説明を省く、そして俺が今投げた閃光玉は丸い強化ガラス製の球体の真ん中に基盤がありその基盤の上下に間隔を開けて3個ずつとその基盤の端と電球の間隔の間にボタン電池を4つずつ、計8個付けていて、ボールにはプラスチック製のピンが付いておりそれを抜いて4秒後に基盤が起動、発光するように作った道具である。 

俺はネットの知識で偶然その専用の電球の仕組みを知ったので何とか光を強力にできないかと考えた。

するとどうだ、材料の中にモンスターの血と魔石の粉を加えただけで遥かに強力な光を放つようになったのである、しかも重さは野球ボールと変わらないときたもんだ。

そしてこれが俺の初めての自作の狩り用の道具1号となったのである。そしてその威力はと言うと、


『ク…ォ…』


『………』


ご覧の通り。見事全てのヴェロル達が泡を吹いて倒れてい…あ、


「やべ、光が強すぎたかな?」


光が強い方がいいと思ったが少々強すぎたかも知れない、モンスターでこれなら人間なら失明レベルだ。戦闘中に誤って自分がくらって失明とか笑えない。


「まあいいか、今回は初めて使用したからこれから調整すればいい。それよりも…」


俺は万が一に備えてナイフを構えつつ近づく。そして、


「これは返してもらうからな」


奪われたチョッパーを取り返した。


「よし、倒れているなら首が狙える」


生き物の首には動脈と静脈がありどれも生きるのに重要な血管である。そのためモンスターを攻撃する際はなるべく首などを優先して急所を狙うようにと戦闘訓練で教わるのである。


「ごめんな…狩りには卑怯もへったくれもない…」


俺は倒れてるヴェロルの首に狙いを定めて両手のチョッパーを振りかぶり、そして…


「結局、狩りは生き残った方のやり方が正しいんだよ」


ザシュッ


『ク!ォ!?…ォ…』



ブシューッ


そのまま振り下ろす。

ヴェロルの断末魔はかすれかすれだったがおそらく今の一撃は致命的だったのだろう、首の二つの傷から噴水のごとく血が吹き出て止まらない。

しかし、俺は吐き気も罪悪感もない。何故なら戦闘訓練の必須訓練で屠殺と食肉加工の仕事を1か月休みなくこなして殺す感覚になれる訓練をさせられたのだ、あの訓練で何回も吐いたが無駄じゃなかったみたいだ。


「さて、他の奴もやるか」


俺は死んだ魚の目をしながら血まみれの双斧を持ち、他の倒れているヴェロルの所にむかった。


~ただいま止めをさしています、しばらくお持ちください~


『……』


ピチャ…ピチャ…


「これで…全部か?」


俺は目に入る全てヴェロルの首にチョッパーで止めをさしまくった。

もはや回収すべき血で全身が汚れているし斧も血でべちゃべちゃ、もはや殺人鬼みたいだわコレ…あ、モンスター視点でなら間違いないか。


「さて、狩った数を数えてみるか…首だけの傷だから血以外は期待してもいいな」


さて、数えてみよう。一、二、三、四…四?


「あれ、確か5ひk…!?」


俺は数が合わないことに困惑したが背後に強烈な寒気がしたので横にステップする、そしてすぐに俺のいた場所に、


ガブッ


何かが噛みつてきた。

俺は急いで振り向くとそこにいたのは、


『ギャ!』


左目がつぶれているが右目で俺をとらえている顎に泡が残るヴェロルがいた。


「おいおい、悪運が強いやつだなお前!」


この個体はわかる、俺が裏拳をしてひるました個体だ。おそらくコイツは俺の閃光玉を左目だけで受けたんだ。故に他の奴よりもダメージが少なかったんだろう、そして俺が他のやつに止めを刺しているのに夢中になっている隙に復活して木の裏にでも隠れていたんだんだと思う。


「左目は潰れたが…仲間の仇討ちって訳かよ…」


まさか一匹だけで来るとは思わなかったので正直びっくりしている、そしてこの個体のあの目は俺を獲物として捕らえていない、『殺す』、これしか感じない。

…いい、この個体はいい!狩りたい気持ちがあふれてくる!!


「いいぜ、決めた。お前の素材で次の武器を作る!

だから…」


俺がそういって武器を構える、そしてヴェロルも姿勢を低くして俺に目線を合わせて離さない。


「最後まで狩ろうや、お互い」


俺がそういって動き、ヴェロルも俺と同時に動いた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る