第19話

「すげぇ…まるで狩りゲーで初めてのマップに来た時と同じ感じだわ」


俺はそう言いながら取り敢えず歩き出す。


「マジかよ…狩りゲーの世界観のまんまだわコレ」


俺は周りを見ながら歩き続ける。

丘から少し歩けば小川がありの水を飲む小鳥や見たことない小動物、知らない木々にキノコに草花、まさに狩りゲ―のマップをそのまま持ってきた感じで未開の土地って雰囲気が凄まじい。


「さて、最初は草をしら…


『ブモオォオオオォオオオオ!』


…お、これって…」


俺は自生している草を調べようとしていたが獣の雄たけびが聞こえてきた。

俺は急いでその声が聞こえた場所に走るとそこには映画でしか見たことない体長が7メートル級の猪みたいなモンスターが4人に囲まれている場面が見えた。


「あれは確か『ビックボア』だっけ。突進で攻撃してくるモンスターだったはず」


ビックボアは猪を大きくして狂暴化させたようなモンスター、食用可能で内臓以外は買取対象の金を稼ぐなら真っ先に名前があげられるモンスターだ。


『そっちに行ったぞ!』


『任せろ!』


ビックボアが4人の内の1人に向かって突撃を仕掛ける。しかしその人はラウンドシールドを構える。そして、


『オラ!』


『ブッ!?』


突進を真正面から受け止める。その人は戦闘系のスキルを持っているのか突進を軽く受け止めており逆にビックボアを跳ね返した。


『今だ!』


『『おう!』』


跳ね返されて出来た隙を残りの3人が見逃さずにそれぞれの獲物を構えて突撃、首に片手剣の一線とお腹に槍の一突きと頭にメイスの一撃を受けてビックボアは倒れた。


「お見事、あの人達はモンスターを狩るのに慣れてるな」


4人の内の槍を持っている人がモンスターの体を槍で突っついて生存確認をしている。

そして死亡を確認するとさっき突撃を受け止めた盾を持っている人が周りを警戒しながら残りの3人で死体を担ぎ、何処かに向かって歩いて行った。


「さっき覚えた『地図』だとあの方向に2キロ進めば帰還用ポータルがあるからそこで解体をする感じだな」


前にも言ったが帰還用ポータルがある所には攻撃してこないモンスター以外は入ってこれないからそこまで死体を担いで解体をしているのである、無論ポータルに解体専門の人もいるため素材の一部を条件に解体をしてもらえたりするらしい。


「あの人達が解体が出来るかの有無は分からないが…方向だけは覚えておこう」


俺はそう言いながら丁度足元にあった草から調べるために触る。すると霞のように消え、スマホの通知が鳴る。


(よし、スキルの回収機能は使えるな…)


俺はそう思いながら次に足を2回ほど軽く足踏みする。しかし…


「あれ、拠点が展開されない?」


そう、俺の拠点を出す条件を満たしたのに拠点が展開しなかったのだ。つまり…


「ダンジョンでは拠点が使えない?」


また新しい課題が増えてしまった。


~数十分後~


~♪


 「お、このキノコ「静電気キノコ」っていうのか!」


俺は今森に入り草やキノコの採取に没頭していった。

取り敢えず拠点の件はまた調べればいいと無理やり納得して採取を強行、するとダンジョンでしかお目にかかれない素材が出るわ出るわの大収穫、しかも魔石が時々落ちているためそれも回収していったらいつの間にか森に入っていたのだ。


「『地図』だと…一番近いポータルが約1.4キロ…あの人たちが向かったポータルが一番近いな」


本当に『地図』スキルが優秀だ、おかげで森の中でも迷いなく自分の位置が分かるんだから。


「さて、んじゃそろそろ森から出ましょうかね」


俺はそう言いながら後ろを向くが、


『ギ……ォ…』


「!?」


背後から聞こえたその音に俺は急いでチョッパーを構える。


「……」


俺は心臓の音が煩いが何とか音の先に集中する、しばらく集中していると複数の足音が聞こえてきた。


「3…いや5か!?」


どんどんと足音が近づいてくる、俺は音の方向に体を向けて更に構える。周りは木々に囲まれているため視界は悪い、おかげて何がいるのかが分からない。


「どこだ…?」


俺が冷や汗をかく、頬を伝い顎から地面に落ちた次の瞬間…


『ギャオッ!』


突然真横の木の間から緑色の何かが俺に向かって飛びかかってきた。


「チィ!?」


俺が間一髪、前に転がって回避する。回避したのだが…


『ギャ!』


『『『オオオォォォッ!』』』


「囲まれた!?」


俺が急いで立ち上がるが、いつの間にか周りの木々からモンスターが姿を現す。

飛びかかってきた奴を含めて5匹、ゆっくりと俺を囲むように俺を追い込んでいく。

姿は正にヴェロキラプトルそのものだ。ただし体色が緑と黒色で迷彩色みたいになっていて爪は何故か赤い、頭からは短い角のような物が1つ生えている。

そして目は充血しているが俺をしっかりと捉えている。間違いない、こいつらは俺を獲物として見ているのが分かった。

そして俺は知っている、このモンスターは地図と一緒に要注意モンスターとして書かれていた基本2~8体の群れをなす狂暴性の高いモンスター。その名は…


「おいおい、最初の戦いが『ヴェロル』かよ…燃えてくるじゃないか!」


俺がそう言うとチョッパーを構え直す、頭の中がアドレナリンで一杯になっているのか恐怖よりも闘争心の方が強い。

だからこそ今なら戦える、そう本能で理解できる。


「こいよ、狩りの時間だ!」


『『『ギャオオォォォッ!』』』


俺が叫ぶとヴェロル達は俺にめがけて襲い掛かってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る